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心身しんどいコロナ禍で夫の理解なく…7割の母親、産前産後に「孤独感」

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
産後うつを考える際、妻が夫に言いたいことは多い(写真:アフロ)

コロナ禍の子育てにおいて孤独感や心細さを感じているママは約7割ー。江崎グリコ株式会社が今秋、全国の妊娠中または0~2歳の子のいるパパ・ママ(20代~40代、600人)に聞いた「コロナ禍における出産と子育てに関するアンケート」の結果だ。7割以上のパパ・ママが、「新型コロナウイルスによって子育てに影響があった」と回答。そのうち約6割が 「家族で一緒に過ごせる時間が増えた」と回答した一方、コロナ禍の子育てで孤独感や心細さを感じているママは、約7割にのぼったという。筆者の記事に寄せられた、産後うつの体験談と共に、課題を考える。→前回の体験談特集産後うつは甘え?「孤独・心配…ぎりぎりの精神状態」寄り添う人の必要性

〇息抜きできないコロナ禍の産後

このたび、妊娠中の夫の無理解や仕事の悩みからうつ状態になり、産後も「飛び降りてしまいたい」と何度も思ったという女性Aさんの体験談を紹介した(11月28日、飛び降りてしまいたい…3年近く「産後うつ」に苦しんだ元正社員女性の告白)。記事はYahoo!ニュースに転載され、寄せられたコメントの中で、コロナ禍での体験談が目立った。

「(産後が)コロナ禍の時だったらやばかったんじゃ、と思います。自分も第一子の時は、メンタルやばかったです。まず寝られないのは本当に本当にしんどい。寝られないと、やる気もなくなり食欲もなくなる。そして旦那は朝から夜までいないので、一日中、大人と話さないことは当たり前。

まだコロナがなく、友達と会えたり支援センターがあいてたから気晴らしになったけど、コロナの時はそれも出来ないから、相当辛い人が多かったのでは。自身も緊急事態宣言の時は、医療者とかじゃないので、保育園に強制的に登園不可となり、ずっと第二子臨月で家庭保育していました。

でもその間、市から子育て大丈夫ですか?とか連絡は一切なく、こちらからも保健師は忙しそうだから、相談もはばかられる。経済苦のほかに、産後うつでの自殺って増えてないのか?」

「私、まさにコロナで産後うつでした。産後4ヶ月ごろにどっと疲れが出て、コロナ、花粉症、離乳食…毎日毎日、今日もこの子と1日過ごすのかと絶望しながら起きる毎日。おっぱいが詰まっても母乳外来もやってないし、助産院も閉まっている。支援センターもやってない。

思考力が落ちて食事の献立とか全く考えられなくなり、メモがなくては買い物もできない。そんな中、旦那も在宅勤務になり、日中に旦那のことも考えなくてはならなくなった。あの頃の口癖は『お母さん頑張るから』だった。

息抜きをしたくても、コロナだから旦那に子供を預けて外出することもできず、3~4ヶ月は一切の息抜きもできなかった。今もマシになっただけで、うつから完全に抜け出せたとは言えないけれど、死なないように、だましだましやって行くしかないと思っています」

「まさにコロナ渦の中の出産でした。実母も義母も頼れず、しかも乳腺炎になって39度まで熱が上がり、ふらふらな中、お世話をしていました。産後直後は必死で、死ぬことなんて考える間もありませんでした。生後3ヵ月、4ヵ月と少し慣れてきた頃の方が、考えたりします」

前出のアンケート結果でも、子育てにおけるママの悩みは1位が「1人でリラックスする時間が取れない」、2位が「感情のコントロールができない」だった。産後は、数時間おきに授乳やおむつ替えをしているし、歩くようになれば、活発な乳児につきっきり。かわいいけれど、24時間、子供の命を預かっているわけで、数時間でも息抜きができないのは、ぜいたくや甘えではなく、大変なことだ。

「第二子臨月でも、上の子の保育園への登園自粛でした。コロナで実家と義理実家も手伝いに来ず、どうしようかと思ってたところ、たまたま陣痛がきたのが土曜朝だったので、旦那に上の子を見てもらって一人で病院に行けました。陣痛が平日の日中にきていたら…と思うとヒヤヒヤもんでした」

「私も、コロナ渦で余計にパニック発作がひどくなり、心療内科に通ってます。買い物に行く前に手が震え、呼吸が苦しくなる、そんな日々を何とか一日一日過ごしています。薬がある事で安心できている時期です。

約10年くらいは発作が出ていなかったんですが、子供達の心配とコロナの不安で再発してます。早く治したい、専業主婦じゃ肩身が狭くて自責の念に囚われて、たまに死が頭をよぎる事もあります。旦那が理解してくれる人だったのが幸い、何もしなくていい、ご飯だけあればいいよ、無理だったらお弁当買ったりでもいいから慌てて治す事は考えるなと言ってくれてます。今はやれる事を無理のない程度にやっています」

〇夫の無理解…社会の影響も

このように、夫に助けられた家庭がある一方で、読者のコメントの中には、夫の無理解に苦しむという声も目立った。江崎グリコのアンケートでも、 子育てをする上で重要なのは、パパママ共に「夫婦で協力して子育てに当たること」が挙げられた。 しかし、男女で20%以上、回答数に差があり、家族で一緒に過ごす時間が増えても、夫婦の協力に意識差があることが伺えるという。ママの悩みの3位は、「夫の子育ての知識・理解が少ない」だった。

「産後うつの原因は、親にも夫にもなりきれてなくて、妻は自分のサポート要員だと思ってるダンナじゃないかな。あと、義実家。ここを教育しなおさなきゃダメ。妻と子供の命を守るのは仕事で稼いてくるだけじゃだめで、父としての最初の仕事は、産後妻と新生児の生活サポートだということを良く教えた方が良い

国が義務付けたら、産後うつはかなり減るんじゃないかな。妻は産休なんかで1年位休まざるを得ないんだし、10時間位、強制的に父親学級受けさせたら良い」

「夫も実家の両親も可愛がってくれている。そう、可愛がってくれているだけ。お世話するのはわたし。泣いたら、おっぱいかなー?ってわたしに戻される。30分で良いから面倒を見てほしい…

「自分もそうでした。子が欲しいと言ったのは旦那なのに、いざ産んだらびっくりするほど無関心で何もしない。俺は乳出ないから面倒見られない、となぞの言い訳をしていました。15分間隔で目覚めるから、夜全く眠れず不眠、ホルモンバランスの乱れ、疲労などなど複合要因で自己免疫疾患を発症し、全頭脱毛になりました。

産後うつの時は授乳が終わったら死のう。とずっと思っていた。私のようになってほしくないので睡眠時間は何としてでも確保するよう、頼れる人は誰でも頼ってほしい

夫の子育てにかかわる意識について、社会や環境の影響も大きいとの意見もある。

夫が無理解なのは、自分の親も多分そうだったのだからわからないんだと思う。今の60代以上はまだまだ男は仕事、家のことは女、という時代でしたから。今は産院などで、パパも参加できる講座やイベントがあったり、メディアでも取り上げられるようになってるので、妻(母親業)の立場を思いやり、わかってくれる夫や育児大好きパパは増えてるとは思う。

けれど、思いやりのない男と結婚すると、地獄の産後育児になりますね。自分で産まない男性と母親は根本的に違うので、永遠の課題だと思います

「私はつわりがひどい時に、夫の理解が足りなくて何度も赤ちゃんをあきらめようと思った。夫は私と同じ職場の上司で、私は夫より上の立場の上司から毎日何度も『仕事辞めて』と言われた。けど夫は他人事のように、一人で解決して、と。夫に仕事辞めたいと言っても辞めないでくれと言われるし…妊娠中の、上司と旦那への恨みは消えない

「人間は元々、コミュニティの中で子育てをする動物です。戦後、3世代家族から核家族に分断され、夫は仕事し妻は家庭を守ると言って夫婦も分断された。個人主義という名の自己責任で、他人と助け合う力が弱くなり、他人に厳しくなる。コロナがなくても、そもそもこんな日本で子育てするって、本当に無理がある。今の子育て環境の異常さをもっと認識して欲しい

〇非常時の非常時、親子をいたわって

コロナ禍にステイホームになり、夫婦の関係が良くなったという調査結果もある一方、虐待・DVの増加やコロナ離婚が報じられ、家庭という閉ざされた場の困難が改めて浮き彫りになった。家族の間にも、適度な距離が必要だと思う。夫婦のほころびやストレスは、子供に向かってしまう。

夫婦で家事や育児を分担するとなると、一筋縄でいかない家庭もある。結果、一人で家事も育児も仕事も背負った母親が、疲弊する。ステイホーム期間から何か月もたった今になって、どっと疲れが出て、心身の不調を訴える人も少なくない。

現在も感染が拡大し、緊張感いっぱいで先が見えない。コロナ禍という非常時に、命がけの出産に寝ずの授乳にと、非常時である産前産後を過ごす親子に、持続可能なケアが必要だ。専門職が丁寧に話を聞く、ボランティアが寄り添う、といった活動に取り組む地域もあり、オンラインやSNSの可能性も広がった。お母さんたちには、自分に合う安らぎの場を見つけ、一日に一回は自分を大事にする瞬間を持とうと呼びかけたい。

また、夫や上司の立場にある人も、それぞれコロナ禍のストレスはあるだろうが、子育てを主に担う人へのいたわりが求められる。そばに夫がいたとしても、子育てへの認識が違えば、妻の孤独感が増し、夫への信頼も薄くなってしまう。この先も24時間365日、親が子供の命に責任を持ち、ケアをする日常は続く。思いやりを持って、家族の日常を歩んでみてほしい。

公開されているコメントについては、社会貢献の主旨で、抜粋して紹介させていただきました。ありがとうございます。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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