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安政江戸台風から164年 台風12号が関東地方接近 

饒村曜気象予報士
東日本に接近中の台風12号の雲と秋雨前線の雲(9月22日21時)

安政3年の安政江戸台風

 今から164年前の安政3 年8 月25 日(1856 年9月23 日)には、安政江戸台風で関東地方が暴風雨となり、江戸湾(東京湾)では大きな高潮が発生して「其惨害、実に乙卯(きのとう)の震災に倍する」と称せられる被害が発生しています。

江戸大風雨 城中を始として市中大小の家屋殆ど損破せさる莫く芝 高縄 品川 深川 洲崎等の海岸は風浪の被害有り 本所出水床上に及ぶ 永代橋 新大橋及ひ大川橋 何れも損所を生じ築地西本願寺 芝青松寺 本所霊山寺の佛殿を始として 神社佛閣の或は潰倒し 或は破損する者少なからず 共惨害 実に乙卯(安政二年)の震災に倍すと称せらる

出典:東京市史稿

 ここで、乙卯(きのとう)の震災とは、前年、安政2年10月2 日(1855年11月11 日)に相模湾を震源地として発生した安政江戸地震(南関東直下地震)のことで、死者4000 ~1万人という大きな被害が発生しました。

 ただ、「近世史略」では「死者10万人余」と記載されていますが、「安政風聞集」では「家ごとの損失は地震のときの十倍にもなるが、幸いにして人の死亡は去年の十分の一もなかった」と記載されています。

 このように死者数には大きな差があり、正しいかどうか確かめるすべはありませんが、かなりの死者がでたことは確かです。

関東へ台風12号が接近

 くしくも安政江戸台風が襲来した9月23日、台風12号が関東地方へ接近する予報です(図1)。

図1 台風12号の進路予報(9月23日3時の予報)
図1 台風12号の進路予報(9月23日3時の予報)

 台風の進路予報は、最新のものをお使いください。

 台風が発生・発達する目安は、海面水温が27度ですが、台風12号が進む海域の海面水温は次第に低くなり9月25日には三陸沖で温帯低気圧に変わる見込みです。

 関東地方へは、現在持っている暴風域(風速が毎秒25メートル以上の範囲)がなくなってからの接近ですので、東京で暴風域に入る確率は10パーセント以下の小さな値です(図2)。

 小さな値ですが、その中でも一番大きいのは、9月24日の昼過ぎ(12時から15時)です。

 つまり、東京に台風12号が最接近するのは、9月24日の昼過ぎということになります。

図2 東京都23区東部が暴風域に入る確率
図2 東京都23区東部が暴風域に入る確率

 予報円の半径は、進路予報誤差に対応し、予報円の半径が大きいときは、台風の進路予報が難しい時です。

 台風12号が発生した当初は、予報円の半径が大きかったのですが、台風が北上するにつれ、予報円の半径が小さくなり、信頼度が上がった台風予報になってきました。

 台風12号は、安政江戸台風のような強い勢力ではありませんし、予報円の中心が東京湾の東側を通過しています。

 このため、台風が予報円の中心を通った場合、東京湾では大きな高潮が発生しにくいということができます。

台風12号による雨

 台風12号により懸念されるのは大雨です。

 秋雨前線と台風12号が持ち込む暖かくて湿った空気により、関東から東北の太平洋側では、ところにより300ミリ以上の大雨が降る見込みです(図3)。

図3 予想降水量(9月23日から25日の72時間予想降水量)
図3 予想降水量(9月23日から25日の72時間予想降水量)

 ただし、これは現在の台風予報に基づいての値です。

 台風12号がもう少し西側を北上したり、台風12号の速度がもう少し遅くなったり、台風12号の中心気圧上昇のペースがもう少し遅かったりしたら、これらのいずれの場合であっても、予想降水量が増えてきます。

 最新の気象情報の入手に努め、警戒してください。

タイトル画像、図1、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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