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大事なのは北京オリンピックよりも帰省? 多くの中国人が春節に帰省できるかヤキモキするワケ

中島恵ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

感染者が出たので帰省を断念

「帰省する航空券をキャンセルしました(涙)。先日、帰省先の都市で感染者が2例、出たからです。私が住む町には感染者はいないのですが、これで、故郷でお正月を迎えるという私のささやかな“夢”は打ち砕かれました……」

友人のSNSには、こんなコメントとともに、ネット上でキャンセルした航空券の画面のスクリーンショットが載せられた。この友人が住む都市から故郷がある都市までは飛行機で1時間ほどの距離。

広大な中国では遠いとはいえないが、新型コロナの感染拡大が懸念される今、感染者が1人でも出ている状況では帰省することはできないという。

「帰省しようと思えばできなくもないかもしれないですが、健康観察が義務づけられたり、7日間で3回のPCR検査をしたり、職場に戻れるかという不安があったりと、いろいろ面倒なことがあります。帰省先は今、中リスク地区に指定されていますし、両親にも迷惑を掛けるので、やはり、帰省することは無理だと判断しました」

このように語る友人は、こちらがびっくりするほど落胆していた。

政府が定める低・中高リスク地区とは

中国では、自分が住む都市や移動先で、14日連続で感染者が出ていない場合、低リスク地区となり、移動は比較的問題ない。今年は約12億人が春節に移動するといわれており、すでに帰省した人も少なくない。

だが、自分が住む都市や移動先で14日以内に感染者が出た場合は、その人数によって中リスク地区、あるいは高リスク地区に指定されるため、移動する際のハードルは大幅に上がる。

1月26日の時点で、全国の中・高リスク地区は55カ所(高リスク地区が12カ所、中リスク地区が43カ所)。北京市や天津市、河南省などを中心に広がっており、具体的な省・都市名だけでなく、各都市の団地名もすべて公表されている。

特定の地域(ある団地)だけが中・高リスク地区指定されているということもあり、もし自分の行き先がそこに指定されていれば、帰省は困難になる。

このような状況のため、多くの中国人は毎日ニュースを見て「やった!今朝、スマホを見たら低リスク地区になっていた」といってグリーンに色が変わった健康コードの写真をSNSに投稿したり、「実家のある都市が中リスクになってしまった」と悲しみにくれたりと、一喜一憂している。

この毎日公表されるリスク地区の一覧に、自分の住む町や移動先があるかどうかで、この春節の過ごし方が大きく変わってくるため、ヤキモキしているのだ。

北京五輪には関心なし?

しかし、現時点で、中国人のSNSを見ていても、来週に迫った北京冬季オリンピックに関する話題を取り上げている人は少ない。もちろん、ゼロではないが、春節や帰省に関する話題に比べれば、ほとんど関心がないのでは?と思ってしまうほどだ。

それよりも、自分が住む地区のリスクはグリーン(問題なし)のままか、そうでないのか、が大きな関心事だ。

北京に住む知り合いは「北京では新聞やテレビなどのメディアでも取り上げていますし、市内でも五輪に関する飾りつけなどは見かけるのですが、何しろ、北京市から出られない状況ですから、五輪といっても、どこか他人事のような気持ちですね。もちろん、自分は五輪を生で見られる招待客でもありませんし……」と語る。

北京から2000キロも離れている広東省の深圳に住む友人などは「これまでスキーやスケートの試合を一度も見たことがないので、あまり興味はないです。どんなスポーツなのか、ルールもよくわからない。それより、春節に予定通り家族や友人に久しぶりに会えるのか、それだけが気がかりなんです」と断言していた。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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