梅雨前線は水蒸気前線
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/moritamasamitsu/00073032/top_image.png?fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
7月4日から始まった今回の豪雨は、週末にかけても断続的に続く見込みで、西日本の広い範囲で警戒が必要な状況です。
今回の豪雨は、いくつかの条件が重なって起きていました。その中で特に重要だと思われるポイントをいくつか羅列してみます。
(1)海水温
一つは九州や山陰地方近海の水温が平年より2度ほど高かったことです。
水温が高いと、そこを通ってくる風は、より水蒸気の補給を受けますから、同じ気圧配置でも雨量は多くなります。では、なぜ水温が高かったかというと、これが皮肉なことに、梅雨の前半が空梅雨だったからです。
たとえば福岡の6月の日照時間は平年比約150%でした。この日差しが表面海水温を上げたのです。したがって、大きなスケールで見ると、前半の空梅雨が今回の豪雨の一因になったともいえます。
(2)地形
そして、もう一つは地形の影響です。
集中豪雨の起きた福岡県朝倉市は、西側に脊振山があり、この脊振山を回り込むような風が、朝倉市周辺で合流し、上昇気流を強めたのです。
(3)梅雨前線
さらに、一番大きな原因は梅雨前線の存在です。
![7月6日午前3時の実況天気図と気象衛星画像](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/moritamasamitsu/00073032/image02.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
ふつうの前線は、前線の北側で大雨が降ると言われますが、こと梅雨前線に限って言うと、集中豪雨は前線の南側で起こりやすいのです。
前線の南側は湿った空気が舌のような形で入ってきますので、これを湿舌(しつぜつ)と呼ぶこともあります。
また近年は、北側の乾いた空気との差に注目し、「水蒸気前線」という言い方も一般的になってきました。
これについて少し長いのですが、いまから11年前に書いた私の文章がありますので、お読みいただければ幸いです。
金曜日の予報では、今日(日)の関東は「くもり」だった。ふたを開けてみれば
雨が降っている。低気圧の接近などによる雨は東西方向の変化なので
予報が外れても数時間の「ずれ」でしかない。
ところが梅雨前線というのは南北方向の変化なので、
前線が少し北上(南下)するだけで、まったく違う天気になってしまう。
これから約40日、梅雨前線の動向が天気予報の肝になる。
ところで梅雨前線は、入門的な気象の本には「停滞前線」のニックネーム
である、と書いてある。確かにそうなのだが、私はふつうの停滞前線とは
性質が少し違うと思う。
簡単におさらいしておくと、性質の違う気団がぶつかるところを
前線という。寒気団が優勢なのが寒冷前線、暖気団が強いのが
温暖前線、寒気と暖気が拮抗しているのが停滞前線である。
したがって、北半球では前線の北側は温度が低く南側は温度が高い。
さらに、一般的に寒気側に上昇気流が起りやすいので、
前線の北側のほうが、曇りや雨になりやすい。
だから停滞前線も、北側で温度が低く天気も悪い。
ところが梅雨前線は、前線の北側と南側で大きな温度変化がない
(とくに梅雨末期)ことが多く、しかも前線の北側より、
南側で大雨や集中豪雨が起りやすい。
これは梅雨前線は温度というより、湿度の境目
つまり湿ったところと乾いたところの境目にあるからだ。
(専門的には相当温位の集中帯)
よく、梅雨前線の北側200キロが雨、その北300キロが
曇りの範囲などと解説したりする。もちろん間違いではないが、
実は危険なのは梅雨前線の南側なのだ。
したがって、熱帯低気圧の強いのを台風というように、
梅雨前線も、たんなる停滞前線のニックネームというより
その言葉自体に意味を持たせた方がいいのではないかと、
最近思っている。
ところで、特別警報発表時に「自分の身は自分で守るよう心掛けてください・・」とコメントされます が、このことは非常に重要です。
最後に役立つのは結局、自分の目や耳など、五感でいち早く危険を感じる事だからです。