年収1000万円で世界は変わる パワーカップルというパワーワードについて
パワーカップルというパワーワード誕生か
11月15日、産経新聞に掲載された「高い購買力・情報発信力…企業が熱視線 共働き高収入夫婦「パワーカップル」という記事が話題となっているようです。いくつかのサイトにも転載されており、SNSでシェアされて友人から知らされたという人も多いと思います。
共働きで高収入の夫婦をパワーカップルと呼ぶことは不動産販売の業界など、以前にもあったようですが、もしかすると今この瞬間に言葉として認知されようとしているのかもしれません。
三菱総研の記事ネタではいくつかの定義を行っていることが特徴のようです。それによれば、
- 妻400万円以上、夫600万円以上の年収(世帯合計で1000万円以上の共働き)。「時短」「外注」「備え」消費に意欲的
- ワークライフバランスや余暇を重視する
- 新商品への感度が高い
- SNSで積極的な情報発信を行う(インフルエンサー的)
などの特徴があるといいます(産経新聞記事のまとめに筆者が若干加筆)。いかにもパワーワードな印象です。
「パワーカップル」というのは世帯割合としては1%に満たない(三菱総研による)ということもあり、「勝ち組」の印象を受ける言葉です。しかし、このキーワードを炎上ワードにしておくにはもったいない、「お金と生活満足度にかかるヒント」がいくつかあるように思います。
パワーカップルの大前提は共働き正社員夫婦になること
まず、「共働きは大事」ということです。1人で1000万円稼ぐのは困難でも、正社員カップルで共働きをすれば、「合計で1000万円」のチャンスはかなり近いものがあるからです。
パワーカップルという言葉をバカにしているくらいなら、正社員採用の募集でパートから正社員にジョブチェンジしてみたり、転職活動をして今より年収をアップさせる時間を取ってみた方がいいでしょう。
「どうせ私は無理でしょう」と思っている人ほど自分と現在の世の中のチャンスを過小評価しています。人材不足は深刻で、正社員としての転職のチャンスは6~7年前の最悪期と比べて4倍以上に増えています。
自分たちには無理だと思っているかもしれませんが、もしかすると年収が200万円上がるかもしれません。特に今、夫婦共働きで600~800万円という人はぜひ、キャリアアップのチャンスをねらってみてください。
新しいサービスを上手に活用することがカギ
パワーカップルは、外食であったり、家事代行サービスであったり、「お金でサービスを買う」ことに前向きであることが特徴のひとつだそうです。
記事例では「カット野菜の利用率」が既婚女性の平均より5割多いことや家事代行の利用率が高いと推定されることが紹介されています。時短と節約のバランスの中こうしたサービスを積極的に活用するイメージですが、これはパワーカップルだけではなく共働きならどんどんまねていけばいいと思います。値段のコスパを意識するのは当然ですが、「時短」につながるのならそれは自分の自由時間を買っているコスパがあるからです。
また、マネーセミナーへの参加やFP等の専門家へのライフプラン相談の割合などは平均の2倍以上であったそうで、専門的知識を必要によっては有料で買うことも意識していることがうかがえます。ひとつのところ、しかもあなたの契約で儲かる相手だけをたったひとつの相談先にすることはオススメできません。これもパワーカップルを参考にまねてみたいところです(ただし、あやしいセミナーには引っかからないように!)。
いっぽう、余暇の充実も指摘されていて、ホームパーティーや海外旅行の割合も高いそうです。こちらは人それぞれの生きがいの問題ですが、「パッとお金を使って、満足をたくさんつかむ」というのは家計の余裕がないときほど控えてしまいますが、「ときどき」お金をかけてみるのはパワーカップルだけにさせておく必要はないのです(自宅でパーティならコストは控えて楽しむこともできるはず。あと部屋を片付けるよいきっかけにもなります)。
パワーカップルの危うさもある
もちろんパワーカップルの「危うさ」もあります。いろんなビジネスモデルがターゲットとしてくる恐れです。
産経新聞記事でも、都内のタワーマンションの購入層としてパワーカップルが半数ほどあるとされ、見逃せない存在になっていると書かれていました。高額消費材や金融商品のマーケティングに狙われることは注意です。特に高年収だからと無理をして買った住宅のローンには危うさがあります。
金融機関が高所得者向けの金融商品を設定するような可能性も考えられます。本当のところ年収1000万円くらいは金融機関にとっては富裕層ではないのですが、パワーカップルのささやかなプライドに訴えかけるようなトークで割高な金融商品の契約を持ちかけるようなことは容易に想像できます(すでに述べたように第三者の知見等を活用して回避できればいいのですが)。
パワーカップルのリスクは、その自負心につけこまれることでしょう。「自分たちはハイクラス」なんてうぬぼれていると(実際にはもっと上の世界があるのですが)、きっとカモにされるはずです。
年収1000万円で世界は(たぶん)変わる
パワーカップルは社会保険料も税金も相当引かれますし、行政サービスについては満額もらえない可能性も出ます(たとえば児童手当が下がったり保育料が高くなったりする)。しかし、長期的にみれば、パワーカップルは退職金もふたり分、厚生年金もふたり分もらいますので、老後も「パワーカップル」で暮らせる可能性が高いと思います。
生活水準を上げすぎることには注意が必要ですが、パワーカップルという生き方はおおむね満足度や幸福度を高める人生になるような気がします(記事には夫ひとりで世帯年収1000万円超のケースより、共働き1000万円の世帯のほうが消費支出が1.4倍ということで、使いすぎにはちょっと注意が必要です)。
「パワーカップル」というのはこれからの共働き夫婦の理想的な形のひとつだろうと思います。パワーワードだからと飛びついてdisってばかりいないで、「うちはパワーカップルになれないか」とマジメに一度話し合ってほしいと思います。
もしあなたの家庭もパワーカップルになれば、きっと世界は変わることでしょう。