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コント化する共謀罪国会質疑を音読で再現―11日に全国で「コッカイオンドク!」

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
石川県金沢市で行われた「コッカイオンドク!」の様子。提供:小原美由紀

共謀罪(テロ等準備罪)法案をめぐる国会審議を音読する活動「コッカイオンドク!」が、全国に広がっている。編集されたニュース番組や新聞等の報道ではなく、国会でのやり取りをそのまま再現することで、国会での政府答弁の迷走ぶりを実体験するという試みだ。今週末の11日やその前後には北海道や首都圏、石川県、愛知県や山口県、福岡県など全国25か所で「コッカイオンドク!」が催される。

犯罪とみなされる行為について、実際にそれを実行しなくても、複数人でそうした行為について話をすることや、脱原発や米軍基地反対運動など犯罪行為ですらなく、憲法で保障された表現の自由すらも、摘発・処罰の対象とする共謀罪。刑法の原理原則から大きく逸脱するため、慎重かつ徹底的に審議を行うべきものであるが、政府答弁は迷走、もはやコントのようですらある。

「もう一つ、パラパラ発言に続いて、そもそも発言というのがございます(中略)そもそも発言を前提とすれば、オウム真理教は『そもそもは宗教法人』でありますから(共謀罪による摘発の)対象外ですね。でも『一変したら対象になる』とおっしゃっています。どちらが正しいんですか?」

(山尾志桜里議員)

「あのですね、そもそも『そもそも』と言葉の意味について、山尾委員はですね、『始めから』、という理解しかないと こう思っておられるかも知れませんが、『そもそも』という意味にはですね、これは調べてみますと、辞書で調べてみますとですね、辞書で念のために調べてみたんですよね。これは『基本的に』という意味もあると是非知っておいていただきたい」(安倍晋三総理大臣)

出典:―4月19日 衆院法務委員会

野党議員の質問にまともに答えず、日本語を歪めてまで自らの発言の矛盾を認めないなど、共謀罪についての政府答弁は不誠実かつ滅茶苦茶だ。しかし、安倍政権に忖度しているのか、共謀罪の審議のある日に限ってNHKの国会中継が行われないことが度々ある上、衆院法務委員会の議事録の公開も大幅に遅れている。

こうした状況に危機感を抱いた石川県金沢市在住の主婦・小原美由紀さんが、国会質疑の書き起こしをするようになり、自身のフェイスブックにアップ、それがさらに共謀罪についての情報共有サイト「共謀罪(テロ等準備罪)って・・なんだ?」にもアップされた。この議事録を見た小原さんの知人が「音読をやろうよ」と提案。小原さん含め5人で先月15日、初めての「コッカイオンドク!」が行われた。その様子は、新聞等でも報じられ、大きな反響を呼ぶ。各地で「コッカイオンドク!」が企画されるようになった。

神奈川県藤沢市で行われた「コッカイオンドク!」

「コッカイオンドク!」のウェブサイトには、各地の参加者から「自分で口に出して言ってみると、自分で自分の言っていることがわかっていない、というのを感じた」(安倍総理役)、「壊れたテープレコーダーになった気分」(金田勝年法務大臣役)、「のらりくらり答えている人に、切り込むのってすごく難しい。よっぽどこちらがわかっていないと。自分だったらとてもじゃないけど、こんな風に突っ込めないと思う。山尾さんの苦労がわかった」(金田大臣とやり取りした山尾議員役)等の感想が届いているという。

今月11日の全国一斉「コッカイオンドク!」では、8日夜の時点で25か所での開催が予定されているが、「最終的にもっと増えるかもしれない」(小原さん)とのこと。公開可能な開催地、主催者の連絡先等は、「コッカイオンドク!」のウェブサイトで確認できる。小原さんらは、「国会で何が起こっているのかを可視化してみませんか?そして、ほんとうにこのままで良いのか、家族と、友人と、周りの人と、知らない人と、みんなで語り合ってみませんか?」と呼びかけている。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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