平等の国ノルウェーでも、いまだに生きづらい 誰を好きになるかは自由。オスロの街が色鮮やかに染まる
ノルウェーの首都オスロで、6月22日~7月1日、性の多様性を祝福するオスロ・プライドが開催された。
30日のパレードには、政府から大臣らも参加し、4万人以上が行進に参加。パレードを見ようと集まった人は、20万人に及ぶと現地メディアは報道している。
筆者は今年は別の取材でパレードの撮影をすることができなかったが、それまでに催されていたイベントを訪れた。
プライドイベントは、時期をずらしてノルウェー各地で開催。オスロが最大規模となる。
オスロ中央駅からすぐのヨウングス広場では、「プライド・ハウス」という名前の大きなテントが設置されていた。
専門家が集まり、トークショーや議論が行われる。その内容は幅広く、LGBTI、性、差別や偏見など、様々なテーマが取り扱われる。
今年のテーマは「家族」。LGBTIとして生きる人と家族との関わり方も、深く掘り下げられた。
プライド・ハウスでは、大学の講義を思い出させるようなレベルで、話し合いが行われる。
北欧での男女平等政策に興味がある人は、イベントに参加するだけで、かなりの量の情報を吸収することができるだろう。
まだまだ話しにくいとされるテーマ
「なぜ、あなたのセクシュアリティは、プライベートな問題だけでは済まないのか」。
自分や周囲の思い込みや偏見・企業広告・メディア報道・ポルノ産業・宗教・学校教育などが、どのように私たちの考えに影響を与えるのか。
講師を務めたセックス・ポジティビストであるシェスティ・ヘルゲさん。
「私たちは平等の国といわれるノルウェーに住んでいる。発言することで、刑務所に入れられるリスクもない。その私たちが、もしこのテーマについて話すことができないのなら、いったい誰にできるというのでしょう?」。
性について普段意見を言わない周囲の人と、話をしてみる。それがきっかけで、小さな変化が起きるかもしれない。一人では何も変えられないかもしれないが、みんなでならできる、と呼びかけていた。
「憎しみ、差別、偏見から解き放たれる自由。私たちには、まだ乗り越えなければいけない課題がある」と、オープニングセレモニーを開けたのは、アーナ・ソールバルグ首相(保守党)。
首相は、「プライド・パーク」と呼ばれる会場を自ら周り、ボタンティアで働くスタッフに声をかけていた。
「ヘーイ!アーナ!ハッピー・プライド!」と声をかける市民も。ノルウェーでは、市民は、首相のことは呼び捨てで声をかける。
ノルウェー国営放送局NRKの番組司会者であるギスレ・アグレダール氏。自身も同性愛者であり、同性愛をテーマにした番組『Jaevla homo』を今年企画した。
「自分に初めて男性のパートナーができたとき、ほかの人の前で、堂々と彼を紹介できなかった」。
「なぜ、平等の国といわれるノルウェーに住んでいながら、恥の意識を感じてしまうのか。このモヤモヤとする気持ちは、なんなのか」。
同性愛者としての生きにくさをテーマにした番組は、意見が異なる人からの批判もあり、議論となった。
性的マイノリティに関する専門サイトがオープン
LGBTIの現状を調査し、数値化したものがまとまった公式HP「lhbtiqtall.no」が、イベント期間中にオープンした。
調査によると、
- 性のあり方を変えた人に対して、ネガティブな印象をもっていると答えたのは、ノルウェーでは5人に1人
- 6人に1人の男性が、同性愛者の男性とは距離を置きたがっている
- 「同性愛者の男性のことを考えるだけで、ぞっとする」と考える男性は17%(2008年には28%)など
数年前と比較して改善されてはいるが、ノルウェーでも、いまだに偏見が残っていることが浮き彫りとなった。
「2018年にもなって、これは受け入れられない数字。未だに、このように考えている人が、こんなにもいることを、私は信じることができなかった」。
「私たちは、もっと知識を増やし、話し合わなければいけない。偏見を放置すれば、差別やヘイト犯罪につながる」。
リンダ・ホフスタ・ヘッレラン子ども・平等大臣は、偏見をなくさなければと、興奮して訴えた。
昨年のパレードの様子「ノルウェーのプライド・パレード、参加者は過去最高を記録」
Photo&Text: Asaki Abumi