【革新するブッフェ】帝国ホテルが始めた「バイキングコンシェルジュ」とは?
バイキング発祥は帝国ホテル
バイキングの発祥がどこかご存じでしょうか。
帝国ホテルの「インペリアルバイキング」(現在は「インペリアルバイキング サール」)がバイキング発祥です。ホテルでは「ブッフェ」という表現の方が多く使われますが、発祥である帝国ホテルはこだわりをもって店名に「バイキング」をつけています。
2008年にバイキング生誕50周年を記念して、オープン日の8月1日が「バイキングの日」として記念日協会に制定されました。それまでは帝国ホテルがバイキング発祥であることはそれほど知られていませんでしたが、これを境にして他のメディアでも取り上げられるようになり知られるようになったのです。
バイキングコンシェルジュ発祥も帝国ホテル
では、バイキングコンシェルジュの発祥はどこかご存知でしょうか。
これも帝国ホテルが発祥で、2014年2月1日からサービスが始められたばかりなのです。
帝国ホテルは100年を超える長い歴史があって格式も高いです。ホテル御三家で知名度は抜群、顧客満足度も高く、ホテルの中でも盤石というイメージがあります。しかし、そういった状況に驕らず、バイキング発祥であるからこそ、リニューアル10周年を迎えるにあたって進化していかなければならないという思いがありました。「これまで以上に、きめ細やかで丁寧なサービス」を提供したいということで、バイキングコンシェルジュの構想が持ち上がったのです。
バイキングコンシェルジュ虎の巻
バイキングコンシェルジュの構想は1年も前から練っていました。1年もかかった理由は、着実にしっかりとプロセスを歩んでいたからです。
まず「バイキングコンシェルジュとは何か」ということを定義しました。バイキングコンシェルジュの定義を記載した「バイキングコンシェルジュ虎の巻」を作成するだけでも、20人以上のスタッフが2ヶ月間を費やしています。その結果「バイキングコンシェルジュとしての心得」「バイキングの歴史」「バイキングでの楽しみ方、マナー」から「近隣交通手段」「応急救護」に至るまで、50ページにも及ぶ虎の巻を完成させたのです。
これを勉強して、記述問題もある全97問もの試験に合格した3名がバイキングコンシェルジュとなりました。合格した3名の中にはソムリエ、レストランサービス技能士、テーブルマナー認定講師など専門性の高い資格を保有している方もいます。バイキングコンシェルジュに優秀な人材が選ばれたあたりに、帝国ホテルの意気込みが伝わってくるでしょう。
バッジと制服
バイキングコンシェルジュの胸には「バイキングコンシェルジュバッジ」がつけられています。バッジにはオープン当初の1958年に使われていた海賊船をモチーフにしたロゴがプリントされています。
制服も他のサービススタッフと異なるのでよく目立ちます。黒ズボンをはいて白ジャケットを羽織り、赤ネクタイを結んで赤チーフを胸ポケットに差しています。当初は蝶ネクタイも考えていましたが、もっとスマートにより現代的にということで、普通のネクタイになりました。
バイキングコンシェルジュのネクタイやチーフ、店内の絨毯が赤であるのは、ロゴの色に合わせられているのです。
バイキングコンシェルジュの役割
インペリアルバイキング サールのディナータイムに、バイキングコンシェルジュの3名のうちの誰かが配置されています。ディナーオープン直後は他のサービススタッフと同様に、客の案内をしたり、ドリンクのオーダーをとったりします。
落ち着いてくると、前菜のブッフェ台に立って、相談にのったり提案をしたりします。客の流れに合わせて、時間が進んでいくと前菜から主菜のブッフェ台に移動。ブッフェ台にずっと立っているのではなく、合間を縫って200席ものテーブルも回るのです。
「何から食べた方がよいのか」「今どの料理がおすすめなのか」「どの料理がどの料理とよく合うのか」といった疑問に答えたり、パスタが新しく出来上がりそうであればパスタを取ろうとしている客に対して「この後すぐに出来立てが出てきますので、お席までお持ちします」といったサービスを行ったりします。他にも、取って来た料理の組み合わせに相応しいワインを勧めたり、窓から見えるビルやスポットについて説明したり、館内や近郊のことについて紹介したりと、役割は非常に多いです。
移動距離も会話量も4倍
バイキングコンシェルジュの一人である鹿取洋光氏は、リニューアルした時からインペリアルバイキング サールで働いているベテランです。バイキングコンシェルジュを担当していない時にはキャプテンを務めており、4分割した店内のうち、1つのブロックの責任者となっています。
「普段はブロック制なので自分のブロックを中心にみていればよいですが、バイキングコンシェルジュは全体をみなければならないので大変」だと話します。「移動距離は4倍、お客さまとの会話量も4倍」と、バイキングコンシェルジュの仕事がいかに濃密であるかが分かります。
「バイキングコンシェルジュという肩書きがあると、お客さまに話しかけ易いですし、お客さまも話しかけ易いと思います」と、これまでとの違いを挙げます。先日、祖母と孫で訪れていた客に対して、どの料理がよいかなどを話していくうちに、中学校卒業祝いで訪れていることが分かり、お祝いを述べて写真を撮影したということでした。料理やドリンクを勧めるだけではなく、それをきっかけにしてコミュニケーションを深めていくことで、より心のこもったサービスを行うことができたのは素晴らしいことです。
このようなサービスは帝国ホテルが目指す、「これまで以上に、きめ細やかで丁寧なサービス」であるといえるでしょう。
より広くより深く展開していきたい
バイキングコンシェルジュを立ち上げた中心人物である料飲三課長の宮原謙一氏は「まずは軌道にのせたい」、そのためには「バイキングコンシェルジュの認知度を上げていって、お客さまに親しんでいただきたい」と言います。数年後には「バイキングコンシェルジュをより広く展開すると同時に、もっと深いサービスを提供できるようにする」と大きな構想を練っています。「サービスを向上させることはもちろん、エンターテインメント性も高めていく」と、まだ具体的には明かせませんが、バイキングコンシェルジュを進化させていくアイデアは尽きません。
サービス面の革新を
ブッフェ(バイキング)を行っているホテルは多いです。味や種類、実演、セルフクッキングといった領域ではかなり凌ぎを削っていて、非常にレベルが高くなってきました。今後は、バイキングコンシェルジュの嚆矢となった帝国ホテルのように、他のホテルでもサービス面の革新を起こしていかなければならないでしょう。
■情報
詳細は公式サイトでご確認ください。