Yahoo!ニュース

主な新興国/米国経済ニュース(3月18日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

ロシア国営ガスプロム、対ロシア制裁回避で欧州需要家と値引き協議開始

ロシア国営天然ガス大手ガスプロムは、ウクライナ・クリミア半島のロシア編入に対する欧米の対ロシア制裁の発動による悪影響を回避するため、ロシア産天然ガスを輸入している欧州の需要家に対し、天然ガスの販売価格の引上げの協議を進めているもようだ。ロシアのプライム通信(電子版)が17日に地元紙ヴェードモスチの報道を引用して伝えた。

ガスプロムの取引先のイタリア石油大手エニのパオロ・スカローニCEO(最高経営責任者)は地元紙ソレ24オレに対し、5月までにガスプロムと結んでいる現在の天然ガス輸入契約が改定されるとの見通しを示している。

米国とEU(欧州連合)の対ロシア制裁では、ガスプロムのアレクセイ・ミレルCEOやロシア最大の国営石油大手ロスネフチのイーゴリ・セーチンCEOに対する渡航禁止や資産の凍結が行われる見通し。また、ロスネフチは、米投資銀行大手モルガンスタンレーの原油の現物取引事業部門の買収を目指しているが、米国とEUはこの取引を承認しない可能性もある。

-

インドネシアのプルタミナ、今年、石油・地熱促進で3800億円投資へ

インドネシア国営石油大手プルタミナのアリ・ムンダキル副社長(広報担当)は16日、石油と地熱発電の開発を促進するため、今年の全体の設備投資額78億ドル(約8000億円)の49%に相当する37億5000万ドル(約3800億円)を充当する方針を明らかにした。地元経済紙ビジネス・インドネシア(電子版)が17日に伝えた。

これは前年比24%増となる。同社では、600件超の石油開発プロジェクトと国内外の地熱発電の開発に必要な資金に充当し、石油・天然ガスの供給や生産を拡大するための資産買収費用は除外しているとしている。

同社の計画では、今年の石油と天然ガスの生産目標は石油換算で、前年比19%増の日量55万4700バレルで、このうち、石油生産量の目標は日量28万0200バレルに設定している。内訳は既存の油田鉱区から日量22万0700バレル、新規に取得する油田鉱区から5万9500バレルとしている。天然ガスの生産目標は15億6700万立方フィート。

-

ブラジル中銀週報:2014年IPCA見通し、下方修正―GDPは上方修正

ブラジル中央銀行が17日に発表した先週の経済週報「フォーカス・ブルティン」によると、同中銀の委託を受けた民間アナリストが予想したIPCA(拡大消費者物価指数)で見たインフレ見通しは、2014年は前週予想の前年比6.01%上昇から6.11%上昇へ下方修正(悪化方向)された。下方修正は2週連続。1カ月前の予想は5.93%上昇だった。2015年の見通しは前週予想の5.7%上昇のまま据え置かれた。据え置きは7週連続。1カ月前の予想は5.7%上昇だった。また、次回4月1-2日開催の金融政策決定会合時の政策金利見通しについては11%に据え置かれた。据え置きは6週連続。

2014年実質GDP(国内総生産)伸び率見通しは、前週予想の前年比1.68%増から1.7%増へ上方修正された。1カ月前の予想は1.79%増だった。2015年のGDP伸び率見通しについては前週予想の同2%増のまま据え置かれた。据え置きは3週連続。1カ月前の予想は2.1%増だった。

また、2014年末時点の政策金利見通しについては、前週予想の11%のまま据え置かれた。1カ月前の予想は11.25%だった。2015年末時点の見通しも前週予想の12%のまま据え置かれた。据え置きは5週連続。1カ月前の予想は12%だった。

為替レートの見通しは、2014年末時点のレアルの対ドルレート(中央値)は、前週予想の1ドル=2.48レアルから2.49レアルへ引き上げられた。一方、2015年末時点では前週予想の2.55レアルから2.54レアルへ引き下げられた。

-

米GM、新たにSUV・セダン7車種、計150万台をリコール

米自動車最大手ゼネラル・モーターズ<GM>は17日、新たに3件のリコール(無償回収・修理)を発表した。リコール対象は2008-2014年に製造されたSUV(スポーツ用多目的車)の7車種、計150万台で、同社は2月にエンジンを始動する点火スイッチに不具合が見つかったとして、2005-2007年に生産された小型セダンの「シボレー・コバルト」や「ポンティアックG5」など6車種の乗用車、計136万7146台をリコールしたばかり。特に、この点火スイッチの不具合が原因と見られる衝突事故で死者数が13人に達している。

1つ目は、2008-2013年に製造されたクロスオーバーSUVの「ビュイック・アンクレイブ」と「GMCアカディア」、「シボレー・トラバース」、「サターン・アウトルック」の4車種、計118万台で、サイドエアバッグの電気配線の不具合で、衝突時にエアバッグが開かない恐れがあるとしている。これまでに事故例は報告されていない。2つ目は、2013-2014年製造の大型セダン車の「キャデラック・XTS」の6万3900台で、ブレーキの倍力装置の不具合で、これまでにブレーキの過熱による火災事故が2件報告されている。

3つ目は2009-2014年に製造されたSUVの「シボレー・エクスプレス」と「GMCサバナ」の2車種、計30万3000台で、インストルメントパネル(計器板)の材質に問題があり、衝突時にシートベルトを締めていない乗客がぶつかってけがをする恐れがあるとしている。これもこれまでに負傷した報告はない。

-

米ベリサイン、投資判断引き下げ株価急落

米電子認証サービス大手ベリサイン<VRSN>は米電気通信情報局(NTIA)が先週末、主要なインターネットのドメイン名機能の監督権限を2015年9月までに放棄すると発表したのを受けて、米投資会社のコーワン・アンド・カンパニーがベリサインの投資判断を「アウトパフォーム」から「「マーケットパフォーム(中立)」へ引き下げ、また、予想適正株価も63ドルから49ドルに引き下げた。米経済情報専門サイトのマーケットウォッチが17日に伝えた。

コーワンは、政府のドメイン監視がなくなれば、「.com」や「.net」のドメイン名を独占的に管理しているベリサインは、今後、これら2つのドメイン名の使用を従来と同じ条件で更新することが困難になり収益に悪影響が及ぶリスクを投資判断の引き下げの理由に挙げている。ベリサインの株価は17日、5.78%安の51.68ドルと、急落している。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

増谷栄一の最近の記事