新型コロナ、売れた物と売れなくなった物 日米比較、必需品マスクはなぜランク外?
世界に劇的な変化をもたらした新型コロナウイルス。マスクなど新たな必需品が生まれた一方、外出が控えらえていることで売れなくなってしまった商品も少なくない。
経済誌やネットの記事で既に複数取り上げられている日本の消費動向を踏まえつつ、アマゾン・コムなど米国の電子商取引(EC)市場に起きている変化を、関連する調査をもとに比較した。日米で共通する傾向がある一方、米国ならではの国民性のようなものも垣間見えた。
外出控えの影響色濃く
日本の販売動向については、東洋経済オンラインの『コロナに勝つ「爆売れ商品ランキング」TOP30』や、ダイヤモンドオンラインの『コロナ時代に「売れる商品・売れない商品」トップ30、口紅は大幅減』などの記事で、コロナウイルスの感染拡大に伴う消費の変化をまとめている。いずれの記事も、準拠したのは市場調査会社インテージ(東京)による、週単位の各商品群の推計販売金額を前年と比べたデータだ。
調査の時期がそれぞれ5月下旬、4月下旬と異なるため、品目の順位の変動は見られるものの、大筋の傾向は似通っていた。すなわち、約1カ月の違いはありながら、売れ筋のトップ30のうち、6割に当たる18品目は重複していた。
「マスク」や「うがい薬」、「殺菌消毒剤」といった感染対策の関連商品のほか、ホットケーキミックスなどの「プレミックス」や「小麦粉」、「ホイップクリーム」、「蜂蜜」などの調理関連食材が上位に並んだ。
一方、売り上げが落ち込んだ商材の上位30品目も、過半数が共通し、特に1位は酔い止めの「鎮暈(ちんうん)剤」、2位は「口紅」と同じだった。外出したり人と会ったりする機会が減っていることを色濃く反映した結果となった。
また、ビッグデータなどAIを活用した調査を手掛けるNint(東京)が行ったオンラインショッピングに関する調査でも、同様の傾向が見られた。
同社は「楽天市場」「アマゾン・コム」「Yahoo!ショッピング」の2020年2~4月の販売動向を調べた。3市場いずれにも上がった売れ筋として、マスクやウェットティッシュなどの感染対策グッズがあり、上記インテージの調査と共通していた。他に、在宅勤務などで需要が高まったウェブカメラやニンテンドースイッチなどのゲーム関連商品も上位に入った。
(参照記事『Nint、コロナによる3大モールの売上伸長ジャンルを調査 「衛生用品」「巣ごもり」「テレワーク」関連の伸びが顕著』)
売り上げ伸び率1位はグローブ
次に、米国の流通業界をリサーチするStacklineが行った、2020年3月のオンライン販売の調査結果を見ていく。
調査期間が2020年3月であること、電子商取引のみを対象としていること、何より米国であることから、上述の日本のランキングとは大きく異なる点もあった。
それでも、共通している項目は日本に限らず需要が高まっている商品と理解でき、米国のランキングのみに登場した商材は、米国の特徴かあるいは季節性などの特殊要因か、などと理解することもできる。
赤字は筆者が米国特有、あるいは日本のランキングには登場しなそうと感じた品目だ。
売れている共通点としては、感染対策グッズや食品などが多い。外出を控え、家に居る時間が長くなっていることを如実に示す結果となっている。
マスクがランキング外の理由
しかしながら、日本市場のランキングで常連のマスクが皆無だった。
理由は単純だ。この調査が対象とした3月、米国ではコロナウイルスの感染拡大を受け、国家非常事態宣言が出されていたものの、マスク着用を義務付けたり、奨励したりする風潮はまだなかった。代わりに、米国人の多くが頼りにしていたのが、売り上げ伸び率1位の使い捨て手袋(グローブ)だった。地下鉄などの電車内ではマスクはしていなくとも、手袋を着けている人は3月時点でもよく見掛けた。
それが4月にCDC(米疾病対策センター)がマスクの着用を奨励するよう方針転換し、ニューヨークなど各州で着用を義務付ける動きが広まったため、マスクの需要は急増した。この3月の調査結果は、それまで米国などでマスクがいかに重視されていなかったかを物語っている。