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W杯初戦の相手ドイツ代表、9月ネーションズリーグは「W杯の予行演習」。一方日本代表は?

了戒美子ライター・ジャーナリスト
ドイツスーパーカップでテレビ出演するフリック監督(中央)(写真:ロイター/アフロ)

 日本代表がドイツ・デュッセルドルフで活動を行うインターナショナルマッチウィーク(IMW)、各国も活動を行う。日本がW杯初戦で対戦するドイツは9月23日にドイツ・ライプツィヒでハンガリーと、26日にはロンドン・ウェンブリーでイングランドと対戦する。

 

 ここでは今回のドイツ代表を日本代表と比較しながら見ていきたい。

 まずはこの2試合のカテゴリについて。2018年から欧州では、W杯と欧州選手権の間の奇数年に決勝トーナメントを行うUEFAネーションズリーグという大会を行なっている。上記2試合はそのネーションズリーグのグループリーグだ。このネーションズリーグ、約1年間かけて行うグループリーグと決勝トーナメントという構成で、ストーリー性があり公式戦ゆえの緊張感のある、強化としても興行としてもUEFA加盟国にとってメリットのある大会だ。一方で、今回日本がデュッセルドルフで対戦するのはアメリカとエクアドルで、キリンチャレンジカップという親善試合の枠組みだ。日本にとって国外での国際試合はそれだけでも得難い機会ではあるものの、公式戦の真剣勝負にはどうしたってかなわない。

 次に、指揮官による9月のIMWの位置付けについて。ハンジ・フリックドイツ代表監督はメンバー発表会見で「W杯のための予行演習」と位置付け、本大会さながらの「大会モードに入ることが大事」と緊張感を求めている。特にドイツでは初戦日本戦が行われる10日前の、11月13日までブンデスリーガが開催されることが決まっており(Jリーグ最終節は5日)「直前は集中できる時間が短い」と今回の2試合を有効活用せざるを得ない。一方の森保一監督は、「カタールW杯に向けてのチームの強化のいい準備に」「応援してくださっている方々に、勝利をお届けして喜んでいただく」とできるだけ直接的、具体的な表現を避けているようだ。各方面への配慮があることは想像に難くないが、いつのどの大会にも当てはめることができる位置付けだ。

 フリックのように公式戦であるネーションズリーグをそっちのけでW杯準備を公言することがいいのか悪いのかはわからないが、位置付け、意味合いがはっきりしているほうが見やすく臨みやすいのは確かだ。

 招集人数もだいぶ違う。日本は初招集こそいないが、瀬古歩夢、町野修斗、相馬勇気ら予選未経験者を含め合計30人を招集した。負傷で未招集の大迫勇也、浅野拓磨、板倉滉を含めれば33人がW杯メンバー選考の俎上にあると言って良い。また、本大会では3人だと思うとしながらも4人のGKも呼んでいる。

「今回30名選んだが26名より大枠で招集して活動しW杯に向かっていくほうが、共有の幅もより増えて厚みも出る。30人以外にも(中略)まだまだ可能性のある選手もリサーチしている。最後までしっかり見ていきたい」と森保監督ははなしている。

 一方、ドイツの招集は24人。26人までベンチに入れるネイションズリーグだが候補にしていたアントン・シュタッハやカリム・アデイェミらが負傷していることから人数を減らしたとビルト紙。フリックは「メンバーは最終的なものではなく、まだ誰にでもW杯行きのチャンスはある」としている。このあたりは表現こそ違えど日本と同じだ。

 ドイツの今回のサプライズはプレミアリーグ・サウサンプトンにこの夏移籍したアーメル・ベッラ・コチャップだ。ハンジ・フリック監督は「コチャップは非常に良い成長を遂げている。一度でいいから代表で見たかった」と理由を話す。この選出に関してはキッカー誌もビルト紙も予想できなかったとおどろきを隠せないでいる。コチャップは昨季、浅野拓磨とともにボーフムでプレーした身長190センチのセンターバックで2001年生まれの21歳だ。ちなみに最年少はバイエルンのジャマル・ムシアラで19歳。日本の最年少は久保建英、10代前半から話題だった彼も21歳になっている。

 若手が話題になる一方で、2014年ブラジルW杯優勝メンバーであるマッツ・フンメルスとマリオ・ゲッツェにも言及。フンメルスについてフリックは、CLマンチェスターシティ戦を観戦し「素晴らしいパフォーマンス、とても良い状態」と気にかけていること明かし、ゲッツェについても「本当によくやっている。ここ数年での成長ぶりにはとても満足している」としている。フンメルスは昨年来、ゲッツェにいたっては前回W杯も招集されていない。それでも指揮官は視野に入っているよとの目配せをしている。

 前述のとおりW杯直前の準備期間は日本が1週間ほど長く、かなり大きなアドバンテージではあるのだが、ドイツブンデスリーガで多くの選手(今回招集と浅野、板倉を含め9人)がプレーしている以上、あまり有効とはいえない。

 9月のIMWの活動に関していえば、W杯への準備という意識がクリアなドイツに対し、日本からは最大限の可能性を最後の最後まで探りたいという妥協のないとも言えるし優柔不断とも言える姿勢が見えてきた。

ドイツ代表メンバーについて参考

https://www.dfb.de/maenner-nationalmannschaft/team/

ライター・ジャーナリスト

1975年埼玉県生まれ。岡山、神奈川、ブリュッセル、大阪などで育ち、98年日本女子大学文学部史学科卒業。01年サッカー取材を、03年U-20W杯UAE大会取材をきっかけに執筆をスタートさせた。サッカーW杯4大会、夏季五輪3大会を現地取材。11年3月11日からドイツ・デュッセルドルフ在住。近著に「内田篤人 悲痛と希望の3144日」がある。

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