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「平常心ではなかった」南野拓実が語る代表復帰、ドイツ戦、モナコでのスタメン奪回、長谷部誠

了戒美子ライター・ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 インターナショナルマッチウィーク、10月ラウンドの日本代表は日本でキリンチャレンジ杯2試合を戦う。鎌田大地、堂安律の落選は話題にはなったが、要は戦力としてはすでに把握済みのため、それぞれの個人的なメンテナンス(鎌田は膝、堂安は親知らず)のための期間とするようだ。11月からはW杯予選も始まり、年明けにはアジアカップと本番が続くからその前にできることをやっておきたいのだろう。

 彼ら主力二人の落選と同じく話題になったのは南野拓実の復帰だ。W杯以降の森保ジャパンに初招集に南野は

「いつも代表は特別なことなので、まあ今回もしっかり(やりたい)。新しい体制になってから初ですし、しっかりここでいい結果を残したいと思います」

 淡々と、その思いを口にした。

 南野は昨年のカタールW杯では10番を背負いながら途中出場3試合のみに終わった。日本が敗退したクロアチア戦では120分の戦いの末PK戦にもつれ込み、キッカー一番手に名乗りを挙げたものの外してしまったことは記憶に新しいのではないだろうか。試合後は号泣し取材エリアではメディアへの対応もできないほどだった。不完全燃焼に終わったW杯後、所属のモナコでも出場機会も4試合先発4試合途中出場、14試合出場なしというさらなる苦境に陥った。

 ところが状況が変わったのはその後だった。南野が欧州で最初にプレーしたザルツブルク(オーストリア)で、2015年の半年間指揮していたアディ・ヒュッターが新監督に就任したのだ。

「まあ昨シーズンは難しいシーズンでしたけど、絶対良くなると信じてトレーニングしてたし、監督が変わって良いスタートきれたので良かったかなと思います」

 今季は開幕から6戦連発で先発し3得点3アシストを記録、負傷のためマルセイユ戦ではベンチ入りしなかったものの、代表合流直前のランス戦では73分から途中出場、トップ下でプレーし、しっかりと勝利に貢献した。すでに負傷の影響はないそうだ。

 ヒュッター監督になり、トップ下でのプレー機会は増え、現在チームは首位にいる。

「自分の得意なポジションでプレーできるというのがやっぱりいいですし、僕だけでなく選手みんなが調子が良いというのが、チームが調子良いのが一つの要因かな。彼(ヒュッター監督)のやりたいサッカーというのは理解しているつもりだったので、コミュニケーションも取りやすいですし、だから自分としてはチャンスっていうのは感じてました」

 実際に、トップ下としてゴールに関わるだけでなく、ヒュッター監督の求める守備のスタイルを理解していることは大きなアドバンテージとなり信頼を得ることとなった。また、ヒュッター監督は2018年から3シーズンドイツのフランクフルを指揮し、EL準優勝など功績を残している。そこで出会ったあの日本人選手を高く評価しているという話もするのだという。

「監督は、フランクフルトで長谷部(誠)さんとか(と一緒に仕事をしていて)、すごく日本人のプロフェッショナルな姿勢というのをすごく評価していると話をしています。僕は多分そういうタイプじゃないけど(笑)プロとしてそういう部分は見せていければ」

 間接的にではあるが日本代表の先輩からの刺激を受けつつモナコで日々を過ごしている。

 今季に入りモナコで復調していってはいたものの、ここまで日本代表選出はなかったことを「平常心ではなかった」と正直に振り返る。9月、ドイツ戦の勝利は、南野は独自の立ち位置、目線でチェックしていた。

「他人事ではなくて自分のこととして見ていました。自分もこのグループの一員という自覚はあったから、自分が入った時はどうするかとか考えていました」

 少し呼ばれなかったからといって、28歳という年齢的にも、代表を諦めるにはまだ早い。呼ばれていない間も南野はふつふつと気持ちをたぎらせ、準備してきたわけだ。

 現在の4−3−3システムで右の伊東純也、左の三苫薫の牙城を崩すことはひ一筋縄ではいかない。控えにも久保建英や堂安律らが顔を揃える。まずはそのポジション争いに南野は参戦する。

「やっぱり仲間たちであるけどまたW杯に向けてのサバイバルは始まってるし、そこに自分も入っていかないとっていう気持ちはありましたね」

 待ちわびたその戦いに、南野はようやく一歩を踏み出す。

ライター・ジャーナリスト

1975年埼玉県生まれ。岡山、神奈川、ブリュッセル、大阪などで育ち、98年日本女子大学文学部史学科卒業。01年サッカー取材を、03年U-20W杯UAE大会取材をきっかけに執筆をスタートさせた。サッカーW杯4大会、夏季五輪3大会を現地取材。11年3月11日からドイツ・デュッセルドルフ在住。近著に「内田篤人 悲痛と希望の3144日」がある。

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