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フランスに勝利、ルディ・フェラー監督とサッカードイツ代表、魔法のような?束の間の幸せ

了戒美子ライター・ジャーナリスト
フランス戦後記者会見で笑顔のルディ・フェラー監督(写真:ロイター/アフロ)

 9日に行われた日本戦で1−4の大敗を喫したドイツ代表。翌日にはハンジ・フリック前監督を解任せざるを得なくなった。12日のフランス戦は、ルディ・フェラードイツサッカー連盟スポーツディレクターが臨時で監督を務め、なんとか2−1で勝利を収めた。試合前フェラー氏はフランス戦を中継したARDで「本当は監督なんてやりたくなかった。でもそれが(スポーツディレクターという監督人事を担当する)自分の義務だと感じたので喜んで手伝うことにした」と語った。そんな突貫工事の臨時体制でどうにか掴んだ一勝だが、案外ドイツメディアは勝利を素直に喜んでいる。

 ビルト紙では“国歌が演奏された瞬間から前向きな雰囲気が漂った。スタジアム中が大合唱する。こんなに盛り上がった代表戦は久しぶりだった”とやや大げさに思えるような伝え方。

 また同紙は4分にトーマス・ミュラーが決めた先制ゴールについて“魔法のような攻撃から生まれた”と表現。“チームが自由にプレーしている。選手間に意思疎通があり、ボディランゲージがあり、スピード、1対1での姿勢、新たな始まりのように感じられる。これはルディのかけた魔法なのか?”と、魔法という単語を多用しつつ選手たちの様子が日本戦とドイツ戦で一変したと伝えた。

 たしかに日本戦では、選手とフリック監督がうまくいってないことは随所から伝わっていた。例えばわかりやすかったのはハーフタイム明け。ドイツの選手たちは、後半開始のかなり早く前にピッチに戻り、ロッカールームでは大した話し合いもなかったことが見て取れた。一方、時間ぎりぎりに出てきた日本代表はネジを締め直し、戦い方も整理したことが伝わった。後半が始まるとドイツの選手たちは徐々にモチベーションを落としていき、特に、3点目4点目などは諦めて追わなくなっていった。たしかにそれに比べればフランス戦は活気に満ちた“魔法をかけられたような”一戦だったのだろう。

 一方でキッカー誌はミュラーのコメントを紹介。日本戦大敗、監督解任と続いた流れを踏まえ「ハンジに感謝したい。この難しい1週間に耐えるのは簡単ではなかった。我々にも責任がある」と総括した上で「ただ、ルディとヴォルフ、ワグナーコーチがこの短期間でどのように取り組んだかも称賛しなくてはいけない」とも話している。

 多幸感に満ちあふれた試合だったようだが、来年の欧州選手権にむけ早く次の監督を見つけなくてはいけない。ナーゲルスマンが最有力候補ですでにDFBからはコンタクト済みだと言われるが、果たして。

ライター・ジャーナリスト

1975年埼玉県生まれ。岡山、神奈川、ブリュッセル、大阪などで育ち、98年日本女子大学文学部史学科卒業。01年サッカー取材を、03年U-20W杯UAE大会取材をきっかけに執筆をスタートさせた。サッカーW杯4大会、夏季五輪3大会を現地取材。11年3月11日からドイツ・デュッセルドルフ在住。近著に「内田篤人 悲痛と希望の3144日」がある。

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