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日本代表・松田力也、反撃パスの背景に何があったか。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
トライしたトゥポウ(右)を笑顔で祝福する松田(中央)。(写真:アフロ)

 自国でのワールドカップを翌年9月に控えるラグビー日本代表は、6月16日、兵庫・ノエビアスタジアム神戸でイタリア代表に22―25で敗れた。

 本番で同国より格上のアイルランド代表、スコットランド代表とぶつかる日本代表にとって、この日の敗戦は悔やまれた。もっとも一時は16点差を2点差に詰めるなど、足の止まった相手を追い込む場面もあった。

 反撃を演出した1人は、後半20分から出場した松田力也だった。先発した田村優に代わって司令塔の位置に入り、テンポアップというタスクを全うした。

 登場間もなく迎えた敵陣ゴール前右ラインアウトからの攻めでは、飛び出す相手防御の背後へ通すパスでウィリアム・トゥポウのトライを演出。プレッシャー下でもハイスキルを保った。

 この日の日本代表は、松田の登場後に一時17-19と迫った。結局は22-25と敗戦も、若きコンダクターには好意的な評価が集まった。

 京都・伏見工業高校でキャプテンを務め、目下大学選手権9連覇中の帝京大学では副キャプテンとして8連覇を達成。昨季はパナソニックで新人ながらインサイドセンターのレギュラーに定着していた。

 日本代表と連携するサンウルブズ(国際リーグのスーパーラグビーへ日本から参戦)へは今季不参加も、4月は若手主体のナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)の一員としてニュージーランド遠征に参加。スーパーラグビー予備軍との練習試合を通し、6月のツアーに繋がる収穫を得ていた。

 6月1日、事前合宿のあった宮崎でその胸中を明かしていた。イタリア代表戦での活躍が、与えられた環境をフル活用した結果であると思わせる。

 以下、単独取材時の一問一答の一部。

――宮崎合宿での手応えは。

「NDSで準備をしてきた。サンウルブズとも一貫した(似た)戦術の落とし込みをしてきたので、(日本代表の宮崎合宿へも)スムーズに合流できたと思います」

 

――NDSで得た収穫で、ここまでの練習などで活きているものはありますか。

「僕自身、(NDSで)10番(司令塔のスタンドオフ)をやらせてもらっていた。いまも10番をやっていて、10番としてのいい準備、いい経験はできたと思います」

 NDSでは、堀川隆延ヘッドコーチが日本代表の戦術にややマイナーチェンジを加えた。もっとも松田としては「コール(プレーの合図)などは変わっておらず、(日本代表でも)混乱することなくやれている」。現体制で求められる「10番」のタスクを実戦でおこなえたことで、昨年11月以来となった日本代表でのセッションへもスムーズに溶け込めたという。

 さらにツアー入り後は、リザーブ組同士で投入された状況に応じたプレー選択について事前に打ち合わせ。「あらゆることを想定してリザーブとしての準備をしています」とし、いわば有事での登板となった16日のゲームでもスタッフのリクエストに応えた。

 改めて、宮崎での問答へ戻る。

――イタリア代表などとのテストマッチに向け、何を求めてゆきますか。

「結果を出すことも大事ななかで、自分たちのやろうとしているラグビーをどれだけ精度高くやれるかというところです。ゲームメーカーとしてゲームを運びたいと思います。ジェイミー(・ジョセフヘッドコーチ)もブラウニー(トニー・ブラウンアタックコーチ)も10番で使いたいと言っています。12番(インサイドセンター)もできる10番という感じ。フルバックもカバーできますが、最優先(のポジション)は10番です」

――「10番」の位置には田村選手がいます。周囲と連係する資質や鋭いキックなどが持ち味のワールドカップ経験者です。定位置争いへ意気込みをお願いします。

「落ち着きも経験も絶対に優さんの方が上。そういう部分も見習って、自分は自分の色を出していきたいと思います。(色とは)ボールをどんどん動かすこと、強気で勝負すること。一緒になってしまうと(同じようなスタイルでプレーすると)優さんの方が絶対にうまいので」

 16日は、結果的に松田が松田の「色」を出すことでスコアボードを揺るがした。試合後は「スタートからプレーして同じパフォーマンスができるかはわからない」とする松田だが、23日のジョージア代表戦(愛知・豊田スタジアム)での活躍も期待される。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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