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大本命・藤井聡太二冠(19)満を持して竜王挑戦権獲得 鬼軍曹・永瀬拓矢王座(28)を2連勝で降す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 8月30日。東京・将棋会館において第34期竜王戦挑戦者決定三番勝負第2局▲藤井聡太二冠(2組優勝)-△永瀬拓矢王座(1組優勝)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 10時に始まった対局は20時18分に終局。結果は77手で藤井二冠の勝ちとなりました。

 藤井二冠は三番勝負を2連勝で制し、豊島将之竜王(31歳)への挑戦権を獲得しました。

 七番勝負第1局は10月8日・9日、東京都渋谷区・セルリアンタワー能楽堂でおこなわれます。

 19歳の藤井二冠はこの先、叡王を獲得すると史上最年少三冠。さらに竜王を獲得すると史上最年少四冠となります。

 永瀬王座と藤井二冠の対戦成績は、永瀬1勝、藤井6勝となりました。

 藤井聡太二冠の今年度成績は24勝5敗(勝率0.828)となりました。

 藤井二冠は竜王ランキング戦で5期連続優勝。24戦無敗というとんでもない成績を記録しています。

 本戦は参加5期目にして制覇しました。

藤井二冠、充実の完勝

 藤井二冠優勢で18時、夕食休憩に入りました。

 夕食休憩が終わって18時40分、対局再開。59手目、藤井二冠は永瀬陣一段目、永瀬玉のすぐ近くに飛車を打ち込みました。

 苦境に追い込まれた永瀬二冠。藤井二冠が席を立ったあと、大きなため息をもらしました。棋界屈指のガッツの持ち主をしても、逆転は難しい局面だったのかもしれません。しかし気力をふりしぼるかのように考え続けます。

 考えること50分。永瀬王座は60手目、馬を入って藤井玉に迫り、一手違いの形を目指します。

 藤井二冠は右手で扇子を持ち、くるくると回してリズムを取りながら寄せを考えます。そして自陣の桂を跳ね出し、永瀬陣に成り込みました。

 永瀬王座は手段を尽くし、重包囲網から遠ざかります。藤井二冠は駒を取りながら自然な追撃。さらには取った銀を自陣に打って受けに使い、盤石の態勢で勝ちを確かなものとしました。

 73手目。藤井二冠は龍で桂を取りながら永瀬玉近くに迫ります。さすがの永瀬王座をもってしても、今度こそ受けが難しい。

 ずっと半袖ワイシャツ姿で戦ってきた永瀬王座。一度席を立ち、戻ってきたあと、スーツのジャケットを着ます。

 77手目、藤井二冠は金を打って王手をかけます。これで永瀬玉は詰み。永瀬王座が投了して、終局となりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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