なぜ「兼業・副業」を勧めるのか? 長時間労働を撲滅するのが先なのに
なぜ企業が「副業解禁」するのか?
一般企業において、社員の「兼業」「副業」を積極的に認めていく動きがはじまっています。政府が推し進める「働き方改革」の重要なトピックスにも挙げられ、大手銀行では新生銀行がはじめて兼業・副業を解禁しました。この流れは加速していき、大企業のみならず、「副業解禁」を公に打ちだす中小企業も増えてくることでしょう。
政府側の論理でいえば、「キャリアの複線化」「能力・スキルを有する企業人材の活躍の場の拡大」などが「副業解禁」の目的。企業側の論理でいえば、「人件費の抑制」「定年後の離職促進」でしょうか。政府側は建前で、企業側が本音。
勤務時間が長いサラリーマンがどうやって副業を?
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。実際に企業の現場に入り、肌で感じる喫緊の問題は「長時間労働の是正」です。とにかく日本のサラリーマンは勤務時間が長い。
「働き過ぎ」の人は一部です。体を壊すほど「働き過ぎ」の人は、実はニュースになるほど多くはありません。「体を壊さないが、勤務時間が長い人」が多いのです。
では、このように非生産的な仕事をしている人が、時間のやりくりをして「副業」をすることができるでしょうか。現代の副業は、造花作り、宛名書きといった内職のようなものはほとんどありません。イラストやロゴデザインの制作、プログラミングや、部屋の空きスペースの貸し出しなど、それなりに工夫しないと稼ぐことができないものばかり。
「起業してもいいが生活できるほどは稼げないから副業で」というレベルの副業が大半なのです。単なる作業代行であれば、時間単位で報酬が変わりますから、本業の労働時間が短い人に限定されます。
したがって、毎日定時退社、時短勤務をしている人でないと副業はムリです。それでも、その副業の労働時間が加わりますから、結果的に長時間労働になることは間違いありません。
だいたい「本業+副業」で、1日7時間程度に収まるわけがないのです。「副業+副業」なら収まるかもしれませんが。兼業・副業をするのであれば、長時間労働が前提。それで、本当に「働き方改革」と言えるでしょうか。
お金を稼ぐ大変さ
次に、副業でお金を稼ぐことを考えてみます。
たとえ100円であろうが、1000円であろうが、誰かから対価をいただくことは、とても尊いことです。軽く考えている人は、100円でも、まともに稼げないでしょう。今、それなりに給料をもらっているのは、勤めている会社の存在があるからです。
時間さえあればお金を稼ぐことができるか、と言われたら、当然そうではありません。慣れるまでは、それなりにストレスがかかります。日頃の楽しみを犠牲にして、しばらくは試行錯誤を繰り返す覚悟なども必要です。
お金を稼ぐのは、そんなに簡単なことではありません。ましてや長時間労働が習慣化している人は、副業をする以前に、もっと大事なことに目を向けましょう。
今所属している会社の中で給与を上げていく努力をすべきです。それが一番効率的で健全です。「副業」などに大事な時間を使わず、自分のマーケットバリューをあげるための取り組みに時間を投資すべきです。