一目で分かる新型肺炎の猛威 死者565人、感染2万8000人超でもWHOはパンデミックと認めず
[ロンドン発]新型コロナウイルス肺炎が中国を中心に猛威をふるっています。医療分野で評価の高い米ジョンズ・ホプキンス大学CSSE(Center for Systems Science and Engineering)の集計(6日)で死者565人、感染者は2万8000人を突破しました。
緊急事態を宣言した世界保健機関(WHO)は今のところ新型コロナウイルスの流行は地域的に限られているとして「パンデミック(世界的な大流行)」ではなく「エピデミック(地域的な流行)」と位置付けています。判断が後手に回らなければ良いのですが。
英コンサルティング会社キャピタル・エコノミクスの首席エコノミスト、ニール・シアリング氏が新型コロナウイルス肺炎に関連する一連のグラフを送ってきてくれました。
まず中国全体(青色の折れ線グラフ)と発生源の武漢市のある湖北省(Hubei、黒色の折れ線グラフ)で確認された感染者数のグラフです。
次のグラフは中国国内で確認された感染者数(左軸、青色のグラフ)と死者数(右軸、黒色の折れ線グラフ)です。
2002~03年に中国南部から流行したSARS(重症急性呼吸器症候群、右軸、黒色点線の折れ線)と比べて今回の新型コロナウイルス肺炎の猛威(左軸、青色の折れ線)が一目瞭然です。
次は中国で最も大切な祝日、春節(旧正月)を挟んだ不動産物件の主要30都市での売れ行きです。今年(青色の折れ線)は春節が明けても不動産が全く動いていないことが分かります。
春節を挟んだ中国100都市の道路の平均的な混雑状況も今年は新型コロナウイルス肺炎の影響で混雑していない(青色の折れ線)ことが分かります。
道路、鉄道、空路も下のグラフからは落ち込んでいることが手に取るように分かります。
移動した乗客の数(青色の折れ線)と延べ移動距離(黒色の折れ線)は対前年比でSARS(02~03年)の時に比べるとまだそれほど落ち込んでいないことが分かります。
外国人観光客が落としていくオカネ(黒色の棒グラフ)の国内総生産(GDP)に占める割合(%)。青色の棒グラフが中国人観光客。
製造業のサプライチェーンの中国依存度。全粗付加価値(GVA)に占める割合(%)。濃い部分は中国に半製品を輸出、薄い部分は中国から半製品を輸入。
中国が「くしゃみ」をすればアジアは「風邪」を引きます。今回は中国は「重度の肺炎」にかかったとも言えるので、アジアが受ける経済的な打撃を考えると気が遠くなります。
間もなく新型コロナウイルスの潜伏期間の2週間が経過します。中国当局の武漢市を中心とした5600万人”集団隔離”が功を奏していることを祈らずにはいられません。
【今年の中国経済の成長見通し】
・英国立経済社会研究所(NIESR)、5.5%
・オックスフォード・エコノミクス、5.6%
・ANZ、5.8%
・シティグループ、5.5%
・エコノミスト・インテリジェンス・ユニット、4.9~5.4%
・マッコーリー銀行、5.6%
・みずほフィナンシャルグループ、5.6%
・ムーディーズ、5.8%
・ナティクシス、5.5%
・UBS、5.5%
・バンガード、5.8%
(米CNBC)
(おわり)