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台風16号 直径600キロもの巨大な暴風域を構成しつつ北上か

杉江勇次気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
台風16号の雲の様子(ウェザーマップ)

巨大な暴風域を構成しつつ北上へ

台風16号の予報円(ウェザーマップ)
台風16号の予報円(ウェザーマップ)

最新の台風情報(気象庁発表)

大型で非常に強い台風16号は、きょう29日(水)午前9時現在、中心気圧935hPa、最大風速50メートル、最大瞬間風速70メートルの勢力で、日本の南をやや加速して北上しています。

予想されたような猛烈な台風への再発達は今のところみられませんが、それでも後述するように台風の眼の周辺部はきのう28日(火)よりも活発な積乱雲が取り巻いており、再発達の兆候が認められる感じです。

そして今後の特徴は巨大な暴風域を構成しつつ、北上すること。

台風16号の現在の暴風域は直径370キロ(半径185キロ)ですが、今後徐々に拡大し、伊豆諸島に接近するあさって10月1日(金)午前9時には、直径600キロ(半径300キロ)にも達すると見込まれています。

暴風域が直径600キロもある台風は平均しても年間1個あるかどうかの頻度で、関東から近畿までをすっぽりと覆ってしまうような巨大な暴風域です。

このため、台風16号の中心が接近する伊豆諸島では、瞬間的に50メートルから60メートルの記録的な暴風が吹くおそれがある他、台風の中心が比較的離れて通る関東などでも、沿岸部を中心に30メートル以上の暴風が吹き荒れるおそれがあります。

今回の台風16号は暴風の吹き荒れる範囲が非常に広いことが特徴ですから、台風の中心がそれるからと言って、決して油断しないで下さい。

暴風の他、大雨や高波などにも、もちろん警戒(厳重な警戒)が必要です。

猛烈ならずも、危険な眼の壁

雲形と雲頂高度(ウェザーマップ)
雲形と雲頂高度(ウェザーマップ)

台風16号は、現状、予想されたような猛烈な台風への再発達はみられませんが、タイトル画像にあるように不気味な眼を見開いて、ゆっくりと北上しています。

雲形や雲頂高度の情報をみると、台風の眼の周辺部は雲頂16000メートル以上の背の高い積乱雲で覆われていることがわかり、きのうよりも眼の壁の積乱雲がびっしりと発達しているように見受けられます。

台風16号の動きが遅いことで、日本の南の海水温は徐々に低下している可能性がありますが、それでも30度前後ある暖かな海面上で多量の水蒸気を補給し、再び発達傾向を示しているのかもしれません。

この危険な眼の壁の積乱雲群が巨大な暴風域を構成しつつ、あさって1日(金)にかけて、伊豆諸島付近を指向することになりそうです。

伊豆諸島には眼の壁が直接かかるおそれ

雨や風の予想(ウェザーマップ)
雨や風の予想(ウェザーマップ)

上図は台風16号に伴う雨や風の予想です。(台風の予報円とこちらの計算結果には多少のズレがありますので、ご注意下さい。)

10月1日(金)に日付が変わるとともに、伊豆諸島では激しい雨や暴風が吹き荒れる大荒れの天気となるでしょう。特に上述した台風の眼の壁周辺の活発な雨雲がかかる伊豆諸島南部では、猛烈な雨を伴って、短い時間にかなりの大雨となるおそれがあります。

また関東の沿岸部でも、巨大な暴風域がかすめて通るような感じで、本降りの雨とともに風が強まってくる予想です。

1日足らずで400ミリの計算も

雨や風の予想(ウェザーマップ)
雨や風の予想(ウェザーマップ)

1日(金)午後になると、眼の壁周辺の活発な雨雲は伊豆諸島の東へ徐々に抜けていきそうですが、八丈島では、わずか1日足らずで、400ミリ以上の豪雨を計算しているモデルもあり、状況によっては、線状降水帯発生情報などが発表されてもおかしくないかなり危険な状態となるかもしれません。

気象庁の予想でも、1日(金)午前6時までの24時間に、伊豆諸島の多い所で200ミリから300ミリの大雨予想となっており、総雨量はやはり400ミリを超えるおそれもある状況です。

大荒れの主体は伊豆諸島であることは間違いないのですが、巨大な暴風域を持つことや暖気と冷気の衝突により、関東などでも大雨や暴風などのおそれがあるため、台風が通り過ぎるまでは、決して警戒をおこたらないようにお願いします。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

人の生活と気象情報というのは切っても切れない関係にあると思います。特に近年は突発的な大雨が増えるなど、気象情報の重要性が更に増してきているのではないでしょうか? 私は1995年に気象予報士を取得しましたが、その後培った経験や知識を交えながら、よりためになる気象情報を発信していきたいと思います。災害につながるような荒天情報はもちろん、桜や紅葉など、レジャーに関わる情報もお伝えしたいと思っています。

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