なぜ「本は自分で買うべきだ」という社長の言い分は、間違っているのか?
本(ビジネス書)を読むことは、人材教育においてとても有効な手段です。
にもかかわらず、世の中の多くの社長が「本は自分のお金で買ってはじめて身に付くものであり、会社が買って与えるものではない」と言います。おっしゃることは理解できます。
確かに、本は自分で買ったほうが読む気になりますし、自腹で買ったからこそ何かを学ぼうという姿勢が芽生えるものです。しかし、その考えを貫き、社員に本を買い与えないのはどうか。
■ 本ぐらい会社が買うべき
私は、本ぐらい会社が買ってやるべきだと考えています。
なぜか?
会社が「自腹で買え」とは強制しづらいからです。年に1回や2回ぐらいなら「社内研修で使うからこの本を自分で買ってください」と強制できるかもしれません。
しかし、自分がいいと思ったビジネス書を「1週間に1冊ぐらいは自腹で買いなさい」などと、社員全員に対して強制できるかというと、普通できません。
つまり「自腹」を強いると、社員に読書習慣が身につかないのです。「主体性」に頼ることになるからです。
■「投資対効果」を考えるなんて
ヒドイ社長になると、「投資対効果」という言葉を持ち出します。
「本を買って与えても、投資対効果がない」
と言うのです。
投資対効果って……。
社長にもなって、そんな幼い発想でいいのでしょうか。「基本の心構え」ができていません。
「ギバー」「テイカー」「マッチャー」という言葉をご存知でしょうか?
簡単に書きますと、
見返りを求めずに与えるのがギバー(与える人)。相手に与えず、自分の取り分を増やそうとするのがテイカー(奪う人)。与えるけれども、見返りを求めるのがマッチャー(損得のバランスをとる人)です。
社長がテイカーであれば、もちろん会社はブラック企業になります。社員を育てようとせず、低賃金でこき使うわけですから。
先述した「投資対効果」を口にする社長は、マッチャーです。損得勘定があるから、こういう発言が出てしまう。資質に欠ける、とはまさにこのこと。
社員が自分の子どもだったら、どうでしょうか。
「どうせ学校へ行かせても勉強しないんだから、学校へ行く必要がない」
と考えるでしょうか。
人材教育に熱心でない社長ほど、主体的な自己投資を促します。そして自ら成長しようとしない社員に責任を押し付けます。
調査からも明らかですが、自分のみならず、全体の成果を押し上げようと考えるギバーが、社長として最も成功を手にすることを忘れてはなりません。
■ 2つのアイデア
私のアイデアは2つです。
● 定期的に課題書を指定し、社員に配布して読書感想を提出してもらう
● 仕事に関係のある書籍は会社の経費で購入できる制度とし、この制度を有効活用するよう常に働きかける
こうすることで、読書習慣が身に付く社員は増えるはずです。会社でお金を出してもいいが、本を読んだら、その価値を学び尽くせ。そうでないと会社がお金を出すなんてもったいない、と思うような社長は「器」が小さすぎると考えましょう。