天気予報でエコフライト
乗客に航空輸送税
LCC(格安航空会社)の登場で、より手軽になった空の便ですが、航空機が排出するCO2(二酸化炭素)を削減する目的で、航空税を導入する動きが始まっています。ドイツでは2011年、ドイツの空港から出発する乗客に対して航空輸送税(Air Transport Tax)を導入しました。距離によって税率が違い、日本などの長距離便では45ユーロが航空券の代金とは別に徴収されています。
航空機がCO2排出量全体に占める割合は自動車と比べて少ないけれど、環境先進国の欧州では厳しい視線が向けられていて、さまざまな取り組みが進んでいます。そのひとつに、英気象庁(Met Office)と航空会社へのマネージメントを手掛けるAVTECH社(スウェーデン)が手を組み、航空会社に対してCO2の排出や燃料が最も少なくなる飛行ルートを提案する取り組みが始まっています。
高度な気象予測データでエコフライトを実現する
日本でも空港や航空機に対して、悪天による事故を防ぐ目的で、気象庁から気象情報が提供されています。安全な飛行ルートはもちろんですが、航空会社はCO2や燃料が削減できる飛行ルートを必要としています。それには目的地までの気象状況(天候や風など)を的確に予測することが求められます。
その意味では、英気象庁とAVTECH社の取り組みはエコフライトを実現する有用な方法で、4D航路(4D flight trajectories)という、緯度・経度・高度・時間の4つが最適になるような飛行ルートを選択できるというものです。これには英気象庁が運用する世界トップクラスの気象予測手法が使われています。
気象とビジネスをつなげる取り組みを
日本の天気予報は英国を並んで世界トップクラスですが、気象情報の利用は日々の天気予報や気象災害軽減が中心で、ビジネスでの利用は欧米に比べて進んでいません。その背景には気象の専門家とビジネスで利用したいと思っている人との関係が薄く、間を取り持つ人材が不足しているという問題があります。
気象情報は災害を防ぐ意味でとても重要ですが、高度な気象情報をもっと活用する取り組みが必要でしょう。紹介した英気象庁とAVTECH社の取り組みは日本の気象界の将来を考える上で参考になると思います。
【参考資料】
英気象庁(Met Office):Ground-breaking technology to improve aviation efficiency,7 April 2016
AVTECH:The Aventus NowCast system
ANAホームページ:CO2低減に向けた取り組み
ルフトハンザドイツ航空ホームページ:ドイツの航空税(Luftverkehrsteuer)とは何ですか?