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グーグルvs.アマゾンの動画紛争に終止符、背景に何があったのか

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

アマゾンの端末でYouTubeが復活

 米グーグルはこのほど、「Fire TV」をはじめとする米アマゾン・ドット・コムの動画配信端末で、傘下の動画共有サービス「YouTube」の公式アプリを利用できるようにした。

 グーグルはもともと、アマゾン製端末にYouTubeアプリを提供していたが、2017年12月に突如中止すると発表。Fire TVでYouTubeを視聴するには、ウェブブラウザー経由でアクセスしなければならなくなった。だが、ウェブブラウザーは公式アプリと異なり、全ての機能を利用できない。

 ウォール・ストリート・ジャーナルなどの米メディアの報道よると、経緯は次のようなものだった。

 グーグルは、AIスピーカー「Google Home」や動画配信端末「Chromecast」などのグーグル製機器をアマゾンがeコマースサイトで取り扱っていないと不満を漏らしていた。

 また、アマゾンの「プライムビデオ」はChromecastでは利用できない。さらにアマゾンはグーグルのグループ企業であるスマートホーム機器メーカー「ネスト」の一部の製品の販売を中止した。アマゾンは、グーグルと競合するホームセキュリティー企業の製品の販売を始めた。

 こうしたアマゾンの行為によって、「相互の関係が失われた」とグーグルは主張。もはや、Fire TVやスマートディスプレー「Echo Show」などのアマゾン製機器で、YouTubeをサポートしないとした。

プライムビデオをグーグルの機器に提供

 ところが今年4月、両社は和解を発表。それぞれの動画サービスを、互いの機器に提供することを明らかにした。

 これにより、このほどようやくアマゾンの「Fire TV Stick」「Fire TV Cube」やFire TVソフトウエアを搭載する東芝製スマートテレビなどでYouTubeのアプリが利用できるようになった。

 一方で、グーグルのChromecastでは、アマゾンのプライムビデオが利用できるようになった。

 さらにスマートフォンやタブレット端末用のプライムビデオアプリからコンテンツをChromecastにストリーミング転送できるようにした。OS「Android TV」搭載のスマートテレビには、プライムビデオのアプリを順次提供していくという。

アップル、自社サービスを他社に開放

 こうして、ハードウエアとサービスを手がける企業が、自社サービスを他社のプラットフォームやハードウエアに提供する動きは今後も広がっていきそうだ。

 アップルは、従来同社製端末向けに公開してきた動画配信の「Apple TVアプリ」を、アマゾンや米ロク(Roku)の動画配信端末やソニー、韓国サムスン電子、LGエレクトロニクスのテレビなどにも提供していく。

 また、アップルには、iPhone、iPad、Macで再生中の動画や音声などを、動画配信端末「Apple TV」やAIスピーカー「HomePod」などにストリーミング転送する技術「AirPlay」がある。

 これをソニー、サムスン、LGなどのテレビでも利用できるようにするという(アップルの発表資料)。

  • (このコラムは「JBpress」2019年7月11日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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