鬼軍曹・永瀬拓矢王座(28)秘策三間飛車を藤井聡太二冠(19)にぶつける 竜王戦挑決第1局
8月12日10時。東京・将棋会館において第34期竜王戦挑戦者決定三番勝負第1局▲永瀬拓矢王座(28歳)-△藤井聡太二冠(19歳)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。
永瀬王座は1組、藤井二冠は2組の優勝。挑戦権争い本命格の両者が勝ち上がっての三番勝負となりました。
現在の将棋界の席次では、藤井王位・棋聖は3位。永瀬王座は4位です。
本日、特別対局室の上座に就いたのは藤井二冠でした。余裕を持って早めに対局室に入るのは、両者いつも通りのスタイルです。
両者駒を並べ終えたあと、記録係が藤井二冠側の歩を5枚取って振り駒をします。
記録「藤井先生の振り歩先です」
畳の上には、表の「歩」が1枚、裏の「と」が4枚出ました。本局の先手は永瀬王座です。
藤井二冠はペットボトルの緑茶を紙コップに注ぎます。永瀬王座は透明なプラスチックのコップに注がれた冷たい水を飲みました。あとは両者静かに座って、対局開始の10時を待ちます。
記録「それでは時間になりましたので、永瀬先生の先手番でお願いします」
記録係の声のあと、両者「お願いします」と一礼。持ち時間5時間の対局が始まりました。
永瀬王座は初手、角筋を開きます。
藤井二冠は紙コップを口にしたあと、いつもの通り、飛車先の歩を突きます。相手がなにをやってこようとも正面から受けて立つ、デビュー時から変わらぬ王道のスタイルです。
3手目。銀を上がれば矢倉模様というところ、永瀬王座は端1筋の歩を突きました。これは早くも意表を突いた立ち上がりです。
そして9手目。永瀬王座は2筋の飛車を大きく左にスライドさせ、7筋へと置きます。世の振り飛車党は朝から喝采を送ったのではないでしょうか。戦型は永瀬王座の三間飛車と決まりました。
永瀬王座はデビュー当時は振り飛車を多く指していました。しかしのちにスタイルチェンジして、居飛車党に変わっています。
ただし振り飛車をまったく指さなくなったというわけではありません。昨年10月の王将戦リーグ、藤井二冠との対局で後手番を持った永瀬王座は四間飛車を採用。164手の熱戦を制して勝っています。
永瀬-藤井戦の過去の対戦成績は永瀬王座から見て1勝4敗。その唯一の1勝は振り飛車によってもたらされたものです。
本日のABEMA解説は黒沢怜生六段。永瀬王座がどのような戦型にも詳しいことについて、次のように語っています。
黒沢「基本的に知らないことはないですからね。教えてくれないですけどね。首ひねりながら『どうですかねえ』って言いながら。『5年ぐらい前から知ってますけど』みたいな感じで。言わないけど知ってる、みたいな感じで。永瀬さんより詳しい人は、私はあんまり見たことないですね」
序盤から繊細な駆け引きが続く中、藤井二冠が28手目、玉を2筋に移動させた局面で昼食休憩に入りました。手番の永瀬王座にとっては、手の広いところです。
竜王戦挑決の持ち時間は各5時間(チェスクロック方式)。昼食休憩、夕食休憩をはさんで、通例では夜に終局となります。