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トランプ氏の元顧問弁護士、プーチン氏に近いロシアの新興財閥系企業から50万ドル受取

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
トランプ氏とコーエン氏を追及するダニエルズ氏の弁護士マイケル・アベナッティ氏。(写真:ロイター/アフロ)

 トランプ氏と性的関係を持ったと主張し、訴訟を起こしているポルノ女優ストーミー・ダニエルズ氏の代理人を務めるマイケル・アベナッティ弁護士が、“爆弾ツィート”をして注目を集めている。

アベナッティ氏はコーエン氏の銀行口座に、ロシアの新興財閥系企業から50万ドルが送金されたことを暴露。
アベナッティ氏はコーエン氏の銀行口座に、ロシアの新興財閥系企業から50万ドルが送金されたことを暴露。

アベナッティ氏が調査したところ、トランプ氏の顧問弁護士を務めていたマイケル・コーエン氏が、プーチン大統領と結びつきが強いロシアの新興財閥レノバグループの支配下にある米国の投資運営会社コロンバス・ノバ社から、大統領選挙後、50万ドルを受け取っていたことがわかったというのだ。この50万ドルは、コーエン氏が、大統領選挙直前の2016年10月に設立したペーパー・カンパニー、エッセンシャル・コンサルタンツ社の銀行口座に振り込まれていたという。

ロシアのビリオネアが関与か?

 新興財閥レノバグループの会長ビクトル・ベクセリベルク氏は13ビリオンドル相当の純資産を有す、ロシアでも10本の指に入るビリオネアとして知られる。コロンバス・ノバ社のCEOを務めているのは、このベクセリベルク氏の従兄弟である。ベクセリベルク氏はトランプ氏の大統領就任式にも参列し、元大統領補佐官マイケル・フリン氏がプーチン氏の隣に座った、2015年12月にモスクワで行われたディナー会にも出席していた。コロンバス・ノバ社はトランプ氏の就任式に25万ドルの献金をしている。

 また、先月、米財務省は、プーチン大統領と繋がりがある新興財閥や企業に対する追加の経済制裁を発表したが、ベクセリベルク氏は制裁対象となった7人の新興財閥の一人だ。

 問題視されているのは、コロンバス・ノバ社から入金される3ヶ月ほど前の2016年10月に、同じコーエン氏のペーパー・カンパニーの銀行口座から、ダニエルズ氏に13万ドルの口止め料が支払われていることだ。そのため、アベナッティ氏は、コロンバス・ノバ社からの入金が支払った口止め料の穴埋めに使われたのではないかとみている。もっとも、13万ドルの出所については、コーエン氏は、自身の住宅担保ローンのお金をあてたと話していた。

 コロンバス・ノバ社側はこの50万ドルについて「同社はアメリカ人によって運営されている会社で、同社はコーエン氏をビジネス・コンサルタントとして雇っていた、ベクセリベルク氏はこの支払いには関与していない」と主張している。

 しかし、関与を疑われたからだろう、同社は、ウェブサイトに掲載していた、“コロンバス・ノバ社はレノバグループのアメリカでの投資ヴィークルだ。CEOはレノバグループの取締役だ”という説明を、9日朝までに削除していた。

ムラー特別検察官も捜査していた

 ベクセリベルク氏については、ロシア疑惑を捜査しているムラー特別検察官もすでに捜査の手を伸ばしていた。ムラー氏の捜査チームは、今年初め、ニューヨークにある空港でベクセリベルク氏に尋問したと言われている。

 また、コーエン氏のペーパーカンパニーの銀行口座には、大企業からの資金流入もあった。アベナッティ氏の調査では、2016年10月から2018年1月まで、総額440万ドル以上が振り込まれており、AT&Tから20万ドル、スイスの大手製薬企業ノバルティスから40万ドル、コリアエアロスペースインダストリーズ(国営)から15万ドルがそれぞれ入金されていたという。これらの企業はコンサルティング料や情報提供料をコーエン氏に支払ったとして、振込みを認めている。

 ムラー氏の捜査チームは、昨年、ノバルティス社にもコーエン氏への支払いについて尋問していた。ノバルティス社は2017年2月から1年間、コンサルティング料として毎月10万ドル、計120万ドルをコーエン氏に支払っていた。同社はコーエン氏に、トランプ政権がオバマケアなどの医療保険政策にどう対処するかアドバイスを仰いだというが、コーエン氏が同社が期待する情報を提供してくれなかったため、関わるのをやめたという。しかし、契約は終了できなかったため、2018年2月までコーエン氏に支払い続けたということだ。

 

 “賄賂”かと疑われる莫大な金の流入。アメリカでは、情報を得る目的でこういった金が弁護士に支払われることは違法ではないというが、問題は、これらの入金がその後どこに流れたかだ。アベナッティ氏はテレビ番組で声高に訴えている。

「現在、入金された金の全容はわからない。金はどこに行ったのか? すべてコーエン氏に流れたのか? いくらかはトランプ氏の会社に流れたのか? いくらかは最終的に大統領に流れたのか? 大統領とコーエン氏ははっきりさせるべきだ。銀行取引明細書をリリースすべきだ」

 ダニエルズ氏への口止め料の支払いとロシアの新興財閥系企業からの入金が行われたコーエン氏の“疑惑の銀行口座”はどんな役割を果たしていたのか? ロシア疑惑との関わりは? アベナッティ氏の追及の手はどんどん伸びていきそうだ。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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