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「メルカリ ハロ」全国展開へ スキマバイトは長期雇用の入り口になるか

山口健太ITジャーナリスト
メルカリ ハロが全国展開へ(メルカリ提供資料より)

4月16日、メルカリはスポットワーク事業の「メルカリ ハロ」を全国展開することを発表しました。

人手不足が深刻化している中で、ドミノ・ピザはメルカリ ハロを積極的に導入していくとのこと。狙いの1つには、長期雇用につながるとの期待があるようです。

希望者は長期雇用につながる可能性も

メルカリ ハロは、3月6日に一都三県で開始してから登録者が1か月で250万人を突破(利用規約に同意した人の累計)。先行するタイミーの700万人(2月時点)と比べても勢いが感じられます。

国内のスポットワーク市場は拡大を続けており、主要5社の登録者数の合計は2024年3月末時点で1500万人(スポットワーク協会調べ)に達し、1年で510万人増えたといいます。

単発の仕事の中には、ギグワークのような業務委託によるものもありますが、メルカリ ハロが扱うスポットワークは、雇用契約のもとで働く短期のアルバイトとなっています。

働き方の多様化に伴い、従事する人が増えているとはいえ、単発のバイトでは仕事を教えることが難しいのではないかという指摘があります。また一般の消費者からは、仕事に不慣れな人からサービスを受けることに不安を感じるという声もあるようです。

この点について期待されるのが、何度も同じ仕事に就くリピーターの存在や、希望者を長期雇用につなげる動きです。

メルカリ ハロを活用するドミノ・ピザでは、「スポットワークで勤務後、気に入ってリピートしていただく方も多い。オリエンテーションが不要で、出勤したらすぐ業務を始めてもらえるので助かっている」(ドミノ・ピザ ジャパン 事業推進部部長の大森力氏)としています。

メルカリ ハロ全国展開の発表会に登壇したドミノ・ピザ ジャパン 事業推進部部長の大森力氏(メルカリ提供資料より)
メルカリ ハロ全国展開の発表会に登壇したドミノ・ピザ ジャパン 事業推進部部長の大森力氏(メルカリ提供資料より)

雇用する側にとって良い人を採りたいのは当然といえますが、働く側にとっても実際に働いてみなければ分からない部分は多いものです。そこで、「一度メルカリ ハロを通して働くことで不安を解消できれば、双方にとってより良い形で長期雇用につなげることができる」(大森氏)というわけです。

タイミーが実施した調査では、7割以上の働き手が長期雇用を希望していたとのデータもあります。メルカリでも長期雇用への「引き抜き」を制限していないとのことから、今後はスポットワークから本格的な採用につながる動きが増えると期待できそうです。

あるコンビニでは、長期で働く前の「お試し勤務」を提案していた(メルカリ ハロのアプリより)
あるコンビニでは、長期で働く前の「お試し勤務」を提案していた(メルカリ ハロのアプリより)

一方、メルカリ ハロ登録者のうち34%は「会社員・団体職員」だったとのことから、本業を持っている人が副業として仕事を探すケースもそれなりにあることがうかがえます。

全国展開を開始、求人は増えるか

メルカリのアプリを確認してみたところ、「はたらく」タブには「北海道・東北」や「近畿」といったエリアごと、またメルカリ ハロの専用アプリでは都道府県ごとに求人を探せる機能が加わっていました。

メルカリのアプリ(左)ではエリアごと、メルカリ ハロの専用アプリ(右)では都道府県ごとに絞り込みが可能(各アプリ画面より、筆者作成)
メルカリのアプリ(左)ではエリアごと、メルカリ ハロの専用アプリ(右)では都道府県ごとに絞り込みが可能(各アプリ画面より、筆者作成)

実際に全国で働けるようになるのは4月22日以降とのことですが、現時点では求人が1件も見つからない県や、選択肢が非常に限られている県がまだまだあるようです。

この点についてメルカリに質問してみたところ、「たしかにまだ求人がない県もあるが、ほとんどのエリアに求人パートナーの申し込みがあり、順次掲載していく」(メルカリ 執行役員 CEO Workの太田麻未氏)との回答がありました。

メルカリ ハロ全国展開の発表会で質疑応答に応じるメルカリ 執行役員 CEO Workの太田麻未氏(メルカリ提供資料より)
メルカリ ハロ全国展開の発表会で質疑応答に応じるメルカリ 執行役員 CEO Workの太田麻未氏(メルカリ提供資料より)

また、自宅や学校の近くなど特定の場所で仕事を探している人にとって、「東京都」のような絞り込みでは範囲が広すぎるとの声があるようです。その点、タイミーは求人の数が多く、アプリの機能も充実しており、全国の主要都市でさまざまな仕事を見つけることができます。

タイミーと比べるとメルカリ ハロの全国展開はまだまだ始まったばかりという印象を受けるものの、月間2300万人というフリマアプリのユーザー基盤を活かしてどこまで追いつけるのか、注目といえます。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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