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人はなぜ人を助け、なぜ助けないのか:援助行動の社会心理学

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:海岸清掃ボランティア:人助けって、気持ちいい。(写真:アフロ)

<最近は、みんな冷たくなって、人助けをする人も減ってきた。そう語る人もいます。でも、心理学的には、そんなことはありません。では、なぜ私たちがそう感じるのか、どうすれば良いのか、お伝えします。>

■人はなぜ助けるのか

人はなぜ人を助けるのか。道徳や宗教教育のせいでしょか。世間体のせいでしょうか。けれども、仲間を助ける行動は、動物にも見られます。

たとえば、象はかなり遠くまで届くSOSの声があります。声を聞いた仲間が遠くから戻ってきて、溝にはまって動けなくなった仲間の象を助けることもあります。仲間を助ける行動は、鳥にも見られますし、時に魚類にも見られます。

スズメにエサをあげていたら、一羽の目の見えないスズメに、他のスズメがエサを運んでいたという話もあります。魚では、病気で横に倒れそうになったエンゼルフィッシュを、他の魚が縦に戻そうとしているのを、見たこともあります。

野生のサルでは、生まれつき重い障害を持っていてとても自分だけでは生きていけないサルが、数年間群れの中で生きていたケースもあります。

サルを使った実験では、鉄格子で区切られた二匹のサルの一匹だけにエサを与えます。もちろんサルは食べ始めますが、となりのサルは大騒ぎです。しかしとなりのサルは、エサを奪うことはできません。エサをもらったサルは自分だけで食べて良いのです。サルは、私たちが受けてきたような道徳教育も受けていません。

ところが、エサがもらえなかったサルが騒ぎ続けると、エサをもらったサルも、しだいに食べづらそうになり、ついにエサを分けてあげるのです。

人間の子供も、分けてあげることができます。赤ちゃんが持っているものに対して、お母さんが「ちょうーだい」と言うと、赤ちゃんは手渡してくれます。しかも、手渡したあとに、喜んで笑顔になったりします。

子供たちは、動物にエサをあげるのも好きですね。お母さんがうつむいていると、慰めに来る幼児もいます。私たちは、人助けの道徳教育を受けますが、教育以前から他者を助けることができるのです。

■なぜ助けないのか

しかし、いつも適切な人助け行動が行われるわけではありません。助けないこともあります。それは、なぜなのでしょうか。

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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