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このチームでプレーした6人が脳腫瘍で亡くなっているのはホームの人工芝が原因!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ベテランズ・スタジアム September 28, 2003(写真:ロイター/アフロ)

 フィラデルフィア・フィリーズは、2004年から、シチズンズ・バンク・パークを本拠地としている。その前は、1971年から2003年まで、ベテランズ・スタジアムが本拠地だった。シチズンズ・バンク・パークは天然芝だが、ベテランズ・スタジアムには人工芝が敷いてあった。

 それについて、フィラデルフィア・エンクワイアラーは、3月9日に「いかにして我々はベテランズ・スタジアムの人工芝を検査することができたのか、その検査はどんな結果を示したのか」と題した、バーバラ・レイカーとデビッド・ギャンバコータの記事を発表した。

 ベテランズ・スタジアムは、すでに存在しない。2004年に爆破された。そこで、彼らは、eBayに出品されていた人工芝の端切れをいくつか購入した。1982年にフィリーズが来場者にプレゼントしたもので、4インチ四方の人工芝がプラスティックに入れられ、「チャンピオンのオフィシャル・ターフ(公式な芝)」とラベルが貼ってあるという。おそらく、1981年のオフに人工芝を張り替えたのだろう。フィリーズは、1980年にワールドチャンピオンとなった。ちなみに、フィリーズのワールドシリーズ優勝は、1980年と2008年の2度だ。

 それらの人工芝を2つの研究所で調べてもらったところ、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)とPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)をはじめ、16種類のPFAS(有機フッ素化合物)が検出されたと報じている。

 1970年以降にフィリーズでプレーし、脳腫瘍で亡くなった選手は、6人を数える。ケン・ブレット(フィリーズ=1973年/死去=2003年)、タグ・マグロー(1975~84年/2004年)、ジョニー・オーツ(1975~76年/2004年)、ジョン・ブコビッチ(1970~71、76~77、79~81年/2007年)、ダレン・ダールトン(1983、85~97年/2017年)、デビッド・ウエスト(1993~96年/2022年)だ。いずれも、50代で亡くなっている。

 記事の最後には、こうある。「フィリーズが何人かの脳腫瘍の専門家に意見を訊いたところ、人工芝と脳腫瘍が関連しているという証拠はないと言われた。けれども、別の専門家は、さらに研究の必要があると発言している」

 今はないと信じたいが、PFASを含む人工芝を敷いていた球場は、ベテランズ・スタジアムだけではないかもしれない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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