赤ちゃんの牛乳アレルギー予防、生後3日と1〜2ヶ月の対応が鍵
生後の牛乳摂取と食物アレルギーの関係について、新たな知見が相次いで報告されています。これまでの研究から、生まれたばかりの新生児への牛乳摂取は食物アレルギーのリスクを高める可能性が指摘されていましたが、最新の研究では、生後1〜2ヶ月の牛乳成分摂取が牛乳アレルギー予防に重要な役割を果たすことが明らかになりました。
【生後3日間は粉ミルク(牛乳成分)を避けることが望ましい】
これまでの研究結果から、生後少なくとも3日間は牛乳成分を避け、母乳かアミノ酸ベースの特殊ミルクを与えることが、牛乳アレルギーだけでなく、卵や小麦などの食物アレルギーの発症リスクを下げることがわかりました。この時期の新生児の腸内環境は未発達で、免疫システムも未熟であるため、牛乳タンパク質の摂取がアレルギー反応を引き起こしやすい状態につながる可能性が考えられています。
【生後1〜2ヶ月の牛乳成分摂取が予防のカギ】
一方、日本で行われた最新の研究(J Allergy Clin Immunol. 2021; 147: 224-232.e8.)では、生後1〜2ヶ月の間、毎日10ml以上の牛乳成分を摂取した群で、生後6ヶ月時点の牛乳アレルギー発症が88%有意に抑制されていることが示されました。この結果から、生後1〜2ヶ月の牛乳摂取が、牛乳アレルギー予防に重要であることが示唆されています。
興味深いのは、生後1〜2ヶ月以前に牛乳成分を摂取していた赤ちゃんが、母乳が十分出るようになったからといって牛乳成分を完全に中止したり、豆乳に置き換えたりすることで、牛乳成分を全く摂取しない期間が2ヶ月続くと、牛乳アレルギーのリスクが上昇するという点です。アレルギー予防において、食物の種類だけでなく、摂取開始や中止のタイミングが複雑に影響している可能性が示唆されます。
【母乳育児と牛乳成分摂取の両立を】
これらの研究結果から導き出される結論は、以下の2点です。
1. 生後3日間は、母乳に追加するのであればアミノ酸ベースの特殊ミルクを使い、牛乳成分は避ける。
2. 生後早期に牛乳成分を開始した場合は、母乳が出るようになっても完全に中止せず、少量を継続する。
ただし、これらの知見は完全母乳育児を否定するものではありません。あくまで、母乳育児を基本としつつ、赤ちゃんの状況に合わせて適切に牛乳を補完することが、アレルギー予防の観点から望ましいということです。
【皮膚症状とアレルギーの関連に注意】
食物アレルギーでは、皮膚症状を呈することが少なくありません。湿疹やじんましんなどが代表的な症状ですが、特に乳児期の牛乳アレルギーでは、皮膚症状が初発症状として現れることが多いのです。赤ちゃんの皮膚に異常が見られた際は、食物アレルギーの可能性も視野に入れ、早めに専門医に相談することが大切です。
牛乳アレルギーの予防法については、まだ完全に解明されたわけではありません。しかし、生後早期の牛乳摂取のタイミングが重要な役割を果たすことが明らかになってきました。最新の知見を参考にしつつ、かかりつけ医と相談しながら授乳法を検討していくことが大切です。
参考文献:
1. Sakihara T et al. Randomized trial of early infant formula introduction to prevent cow's milk allergy. J Allergy Clin Immunol. 2021 Jan;147(1):224-232.e8. doi: 10.1016/j.jaci.2020.08.021. Epub 2020 Sep 2.
2. Urashima M et al. Primary prevention of cow's milk sensitization and food allergy by avoiding supplementation with cow's milk formula at birth: a randomized clinical trial. JAMA Pediatr. 2019; 173: 1137-1145.