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韓国は笹生優花と渋野日向子のワンツーフィニッシュに嘆き「トップ10“全滅”の全米女子オープン」

金明昱スポーツライター
全米女子オープンを単独2位でフィニッシュした渋野日向子(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 米女子ゴルフメジャーの「全米女子オープン」を制した笹生優花。2021年に同大会を制して以来、2度目の優勝となったわけだが、米ツアー2勝目をメジャー最高峰の大会で飾るところ、やはりただ者ではない。

 笹生は通算4アンダーで、2位に3打差をつけての圧勝劇。ただ、2位に入ったのが不調にあえいでいた渋野日向子だったことも日本では大きな話題となり、さらに6位タイに古江彩佳、9位タイに小祝さくらと竹田麗央が入った。日本勢の躍進が目立った大会でもあった。

 一方で“ゴルフ強国”と言われた韓国はどうだったのか?

 ちなみに日本は21人が出場。韓国は20人が出場したのだが、キム・ヒョージュとイム・ジンヒの12位タイが最高位。つまり、トップ10に韓国勢は1人も入れなかったというわけだ。

「常にうまくいくとは限らないが現実は寂しい」

 この事実を韓国メディアは重く受け止めていた。韓国ゴルフ誌「ゴルフダイジェスト」は「韓国、全米女子オープンでトップ10“全滅”…ゴルフ最強国のポストはどうなる」と見出しを打ち、こう嘆いている。

「常にうまくいくとは限らないが、現実は寂しいものだ。優勝はおろか、トップ10にも入れない韓国女子ゴルフの現在地だ。韓国は20人が出場したが、10位以内に入った選手が1人もいなかった。全米女子オープンは米女子ツアーのメジャー大会の中でも、選手たちがもっとも優勝したい大会。それなのに日本国籍を選び、3年ぶりに再び頂点に立った笹生優花と2位の渋野日向子がワンツーフィニッシュを飾った」

韓国勢では最高位の12位タイに入ったキム・ヒョージュ
韓国勢では最高位の12位タイに入ったキム・ヒョージュ写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

「韓国が女子ゴルフ最強国のポストを失う」

 今大会の日本勢の快進撃は決して運やマグレではなく、米ツアーを主戦場にする選手だけでなく、日本ツアーの全体的な底上げが証明されたと感じる。

 そのことを韓国側も認めざるを得ない結果が、今回の全米女子オープンだった、と韓国メディアは嘆いている。韓国「ゴルフダイジェスト」は「このままでは韓国が女子ゴルフ最強国のポストを失う可能性がある。米ツアーも若い選手たちが次々と登場し、ネリー・コルダはすでに今季6勝し米CNNにも登場。日本ツアーでもプロとしての経験を積んだ選手が米ツアーの門を叩き、より大きな舞台に出る準備をしている。タイも同様だ。韓国も常に米ツアーに進出する選手はいるが、他国の勢いに押されているのが現状だ。韓国は世代交代が遅いようにも思われる」と母国ゴルフが衰退の道をたどるのではないかと懸念している。

かつての韓国の勢いが今の日本にある

 ただ、こればかりはしょうがない。時代の流れと共に各国の選手層に変化が訪れるのは当然のことで、世界ランキング1位の選手といえども、ずっとそのポジションに居座ることはできないのだから。「かつて米ツアーを席巻していた韓国のような勢いが、いま日本に起きているのでは」と話す韓国のゴルフ関係者も多い。

 ちなみに韓国の選手が米女子ツアーで最後に優勝したのは、昨年11月のCMEグループ・ツアー選手権のエイミー・ヤンにまでさかのぼる。もしかするとこのまま、韓国勢から今季米ツアー優勝者が出ない可能性もあり得る。その時、韓国メディアは大きく騒いでるかもしれないが、数年後にはまた新たな才能がきっと現れる。今季、日本ツアーメジャーの「ワールドレディスサロンパスカップ」を制した15歳のリ・ヒョソンのように。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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