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起業するために「一度就職して経験を積む」のはアリかナシか?

酒井一樹就活SWOT代表

「起業するために、一度就職して修行するべきかどうか?」

就活中、もしくは内定した後にそう悩まれる方も多いでしょう。

優秀な学生さんの中には、

「将来的に起業をしたいからコンサルティング会社のxx社で働こうと思う」

「◎◎社で~の経験を積んでから起業をしようと思っています」

のようにおっしゃる方がいます。

また、その中にはすでに大学在学中に起業したり、

学生ベンチャーでの経営に参画している方もいらっしゃいます。

筆者自身は、学生時代に学生だけで経営するベンチャー企業で取締役に就任し、その後は一般社員として人材系の企業で2年間働いています。

その経験も踏まえ、将来企業を考える学生さん向けに記事を書きたいと思います。

「起業したいからコンサル会社」はアリかナシか

私自身、学生時代はコンサル業界や人材業界を中心に見て回っていましたが、これらの業界では「将来起業したい」という学生が多かったようです。

しかし、万人に共通する正解はありませんが就職してどれだけ頑張っても、起業しなければわからないことはたくさんあります。

例えば、企業経営の方法というのは、コンサルや投資銀行などで学べるわけではありません。

第三者の立場で経営者にアドバイスを行うことと、自ら経営を行うことでは、求められるものが全く違うものです。

(それでもコンサル出身の起業家が成功しているように見えるのは、

単純に彼らが地頭よく、優秀な人材だったからという部分も否定できません。)

学生起業はアリかナシか?

でも起業してうまくいく人の多くは、

いきなり起業しても(最初は失敗するけど最終的には)うまく行くと言われることがあります。

それはある意味では正しいのですが、

「自分で学び取る」ことができるかどうかが大きなポイントです。

ただ、若くして起業し、成功した方でも

「自分が会社のトップだから暗中模索でやってきて、実際なんとかなったが

効率よくスキルを身につけることが出来たかというと、そうとは言えない」

とおっしゃる方もいらっしゃいます。

「あった方がいいかも?」は大体の場合、必須ではないもの

期限を意識して具体的な行動を起こす場合はいいのですが、

そうではない場合はただの回り道になってしまうこともあります。

起業したいけど修行のために就職するという方は、

「これが無いと困る」という能力が何なのか考えてみると良いでしょう。

なんとなく「あったら良いかな?」と思う程度の知識は、

大体の場合無くても良い物だったりします。

例えばそれは会計の知識だったり、法律の知識だったり、ビジネスマナーだったりします。

もちろん知識はあった方が良いことに間違いはないのですが、

それらの知識があれば売上が上がるわけではありません。

また、必要に迫られても、勉強すればなんとかなるものです。

もちろん「あったら良いかな?」という程度の知識も、勉強しないよりは

勉強した方が良いに決まっています。

その勉強のために就職するというのは、1つの選択肢として考えられるでしょう。

しかし企業に就職するということは少なくとも最初の3年くらい、

自分のほとんど全てのリソースを傾ける事を意味します。

「そこまで自分の時間を投資して勉強するべき事かどうか?」

結論として「就職した方が良い」場合もあるでしょう。

実際、大半の人にとってはいきなり起業なんて現実的ではありません。

就職せずインターンという選択肢もある

確かに最初のうちは誰かに基礎を教えてもらう方が効率的ではあるのですが、それなら在学中からどこかの企業にインターンで入り込むという方法があります。

社員並に仕事を任せてくれるベンチャーで自分のプロジェクトを持ったりして1~2年程頑張ったら、そこらの社会人3~4年目の経験値はすぐに追い抜けるでしょう。

有給インターンでもバイトに比べれば稼げない事が多いけど、在学中からお金をもらいビジネスを経験できるという点では非常に有用。卒業前に起業できるレベルに達すればそのまま起業してもいいし、インターン先の会社が良ければ就職してもいいし、ダメでも普通に就活すれば良いでしょう。それにより選択肢が増えます。

就職するなら「事業領域とマッチするか」を考えよう

また、取り組む事業内容によって「業界未経験でもそこまでハンデにならない」のか「業界未経験であることが大きなハンデになる」のか、そのレベル感は大きく異なります。

例えば、今までに無い市場を開拓する場合は、業界経験者がそもそもいないため、業界未経験であることはハンデになりません。(どちらにしても大変なのですが)

一方で、古くから存在する市場においては業界経験者と未経験者の差は大きなものになってしまいます。

BtoCのビジネスではなく、BtoBのビジネスを展開するのであれば大きな問題となるでしょう。業界経験者はすでにターゲット企業とのネットワークも持っていることがあるため、未経験者は、そのネットワークをゼロから築いていかなければなりません。

だからこそ「自分はどのような形態で起業したいのか」も考えると良いでしょう。

ここまで書いてきたことに関連しますが、たとえ就職した経験があったとしても就職先での業種・職種と起業する際の事業領域が全く関係ないようであれば就職してから起業しても、あまり大きなアドバンテージにはなりません。

いきなり起業して、失敗したらどうなるのか?

結果として、身の程をわきまえていない経営者は借金を背負うリスクはあります。ただ、借金背負って会社つぶしたとしても、優秀な方であれば普通に再就職して再起できます。だから本当の意味での「勘違い君」でなければ、事業失敗しても人生詰むことはありません。

ただし、これに関しても「転職先の業種・職種」と「それまでの経験領域」のマッチ度合いが重要です。営業主体のビジネスをしていた起業家がウェブエンジニアとして転職をするのは難しいですし、その逆も然りです。もしリスクヘッジをしておきたいのであれば、再就職するとしてもニーズのありそうなスキルを身につけながら自分の事業を展開されると良いでしょう。

営業やシステム開発の経験があるのであればその経験は「ツブシ」が利きますが、交流会を主催していたとか、ニッチな領域で何かのブローカーをしていたというような内容ですとその経験を他の企業で活かすことは難しいケースが多いものです。

つまり、同じ起業家であっても、展開する事業内容によってピンからキリまでリスクに差があるのです。また、コンサルタントや研修講師に転向したり、受託開発業を始めたりと、再就職せずに再起を図っているパターンも多いようです。

つまり、「事業に失敗しても、ツブシの利くスキル・特技があれば食べていける」という事。それが良いかどうかは置いといて、そういう道もあるのです。だから独立しているか、雇われているかにあまりこだわらないという方もいらっしゃいます。

独立しても食べていけるし、就職する際にもツブシが利く、そんなスキルを身につけられる仕事を探してみるのも良いかもしれません。

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就活SWOT代表

慶應義塾大学在学中、世界初の就活SNSの代表に就任。国内最大の就活SNSへと成長させた後に大学を卒業し、エグゼクティブサーチを行う人材ベンチャーに入社。役員・事業責任者などの幹部人材の採用支援に携わる。2009年にエイリストを設立し「自分の頭で考え、行動する人材を増やす事」を命題として就職情報サイト「就活SWOT」を開設。

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