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尹大統領の「政敵」は最大野党の代表 「宿敵」は第2野党の代表! 韓国の政争が日韓関係に影響を及ぼす!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
「共に民主党」の3人の国会議員を含む京畿道議員らが竹島に上陸(JPニュース)

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は昨日(9日)、大統領府で開いた記者会見で日本の記者から対日関係を問われた際に「様々な懸案や過去の歴史が障害になるかもしれないが、確固たる目標と志向性を持ち、忍耐しながら進むべき方向に歩んでいく」と、日韓関係を遅滞なく進める決意を表明していた。日本にとっては実に頼もしい言葉だ。

 ところが、折しも同じ日に先の国会議員選挙(総選挙)で「政権審判」を正面から掲げ、躍進を遂げた第2野党の「祖国革新党」の曺国(チョ・グク)代表は「今月13日に独島(竹島)に行く」と、唐突に発表し、担当部署の韓国外務省を当惑させている。

 同党のスポークスマンによれば、韓国IT大手「NAVER(ネイバー)」がLINEヤフーに株式を売却するよう日本政府から圧力を掛けられている事態を尹政権が傍観していることへの抗議の意思表示として上陸を決行するとのことだ。

 株価が2日連続で下落している「NAVER」の問題では朴賛大(パク・チャンデ)院内代表が「尹政権は日本に屈従的な外交をしている」と政府の弱腰を批判するコメントを出した「共に民主党」(民主党)だけでなく、与党の一部にも「これ以上傍観するべきではない」(尹相炫=ユン・サンヒョン議員)と、尹政権に積極的な対応を迫る声が起きている。竹島の上陸については韓国国内で異論がある筈はない。それだけに曺代表が「NAVER」と「竹島」をセットにしたことにより尹大統領は足をすくわれてしまった。

 一般的には尹大統領のライバルは大統領選挙で戦った「民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表であるが、曺代表にとっては尹大統領は憎き「宿敵」である。

 二人は文在寅(ムン・ジェイン)政権下では法相と検察総長という関係にあった。検察総長だった尹大統領にとって曺法相は年下でもあり、ソウル大学の後輩でもある。それが検察監督機関の法相、即ち上司でいるのは「目の上のたんこぶ」だった。まして「怪物のように肥大化した検察を何が何でも改革する」と拳を振り上げ、検察に手を突っ込んでくれば、組織防御の先頭に立つ検察総長としては阻止しなければならない立場にあった。

 そうした矢先、実にタイミングよく、曺法相及び夫人が娘の不正入学に関与している疑いが浮上した。検察は曺家族だけでなく親族にまで捜査の手を伸ばし、徹底的に追及した。

 当然、曺法相は「捜査に露骨に介入している」と反発し、法務省の幹部らを通じて大検(最高検察)幹部らに家族の捜査については尹総長を排除した捜査チームを作るよう指示する一方で、「検察改革推進支援団」を創設し、逆に尹検察総長の追い落としを図った。

 この法相対検察総長の攻防は検察が夫人を起訴したことで「偽造事実が明らかになれば、法的責任を取らなければならない」と答弁していた曺国氏は法相辞任に追い込まれ、尹氏の完全勝利に終わった。

 それから3年後、尹検察総長は大統領に、そして曺法相は夫人が収監されただけでなく、本人も被告人の席に立たされ、すでに1審、2審判決でいずれも懲役2年の実刑を宣告されている。

 そして、今、「たまねぎ男」と世論から袋叩きにあっていた曺国氏は華々しく復活し、韓流ドラマよろしく、尹大統領に復讐の念を燃やしている。「竹島上陸」はまさに尹大統領に叩きつけた「挑戦状」でもある。

 尹大統領が「様々な懸案や過去の歴史が障害になるかもしれない」と言っているように日韓には依然として「竹島」「元徴用工」「元慰安婦」「佐渡島金山世界文化遺産登録」「韓国海産物輸入禁止問題」など問題が燻ぶったままだ。この他にも韓国がクレームを付けている日本海の国際表記問題や日本の閣僚らの靖国参拝問題、さらには日本の教科書検定問題などあちらこちらに火種がある。

 最もホットな「元徴用工」の問題では元徴用工ら訴訟した15人のうち10人が韓国の財団から賠償金を受け取っているが、韓国国民の6割近くが尹政権の韓国財団を通じた「代位弁済解決策」に反対している。尹政権は日本も企業や個人から寄付を募って、財団に寄付することになっていると国民に理解を求めていたが、今なお日本からの寄付の目途は立っていない。

 今後、韓国政府が代位弁済するにもすべての「元徴用工」被害者及びその家族に補償するには総額で約800億円の財源を確保する必要がある。そのためには国会で特別法を制定しなければならないが、野党が国会で圧倒的多数を握っている現状では容易ではない。

 「元慰安婦」問題も「2014年の日韓合意」に基づき、日本政府が支払った償い金を受け取らなかった一部の慰安婦らが被害者中心の解決策を求め、日本政府に謝罪と賠償を依然として求め、訴訟を起こし、勝訴もしている。

 尹大統領の発言には日本との関係を後戻りさせないとの決意が滲み出ていたが、尹大統領が「我が道」を行けるかどうかは偏に野党、とりわけ曺国代表の出方にかかっているようだ。

 尹大統領としては「たまねぎ男」から「暴れん坊」になった曺国代表が大法院(最高裁)で有罪が確定し、収監されるのをひたすら待ち続けるほか現状では選択肢がないようだ。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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