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なぜレアルは復調したのか?エムバペ、ベリンガム 、ヴィニシウス…必要だった適応期間と戴冠の可能性。

森田泰史スポーツライター
今季からマドリーに加入したエムバペ(写真:ロイター/アフロ)

完全復調まで、もう少しかも知れない。

今季、序盤戦で苦しんでいたレアル・マドリーだが、息を吹き返しつつある。リーガエスパニョーラで、首位に位置。チャンピオンズリーグでは、リーグフェーズにおいて20位につけており、1月にはスペイン・スーパー杯が控えている。

■エムバペの適応期間

マドリーは、今夏、パリ・サンジェルマンからフリートランスファーでキリアン・エムバペを獲得した。フランス代表のワールドクラスのストライカーが、移籍金ゼロで加入した。

だがエムバペはマドリーで適応に苦しんだ。バルセロナとのクラシコでは、8回、オフサイドに掛かり、ノーゴールに終わった。チャンピオンズリーグのリヴァプール戦、リーガのアトレティック戦では、2試合連続でPKを外した。

いずれも敗れた試合で、エムバペは「戦犯」扱いされた。

調子を取り戻してきたエムバペ
調子を取り戻してきたエムバペ写真:ムツ・カワモリ/アフロ

エムバペは、パリSGで公式戦308試合に出場して256得点108アシストをマークした。その決定力が期待され、マドリー加入が決定した経緯がある。

ただ、エムバペの決定力は、なかなか発揮されなかった。先述のアトレティック戦ではPKを失敗したが、その時点でリーグ戦14試合出場8ゴール。エムバペとしては、またレアル・マドリーの「9番」としては、物足りない数字だった。

■復調の兆しときっかけ

一方で、エムバペはきっかけを必要としていたのだろう。あのアトレティック戦が、それだったのかも知れない。

「ビルバオで行われた試合で、底を打った。あのゲームはプラスに働いた。あそこで、自分はこのユニフォームのために、全力を尽くして、強いパーソナリティを持ってプレーしないといけないと気付いた。この数試合、良いプレーができている。でも、僕はもっとやれる」とはエムバペのコメントだ。

「いま、僕たちはお互いをよりよく分かっている。僕が加入して、チームは多くを変えなければいけなかった。でも、今は快適にプレーできるようになってきている。ピッチ上で、チームメートとの理解が深まっている」

■BMVの攻撃陣

今季、エムバペの加入で、マドリディスタの期待値は高まった。彼らが希望を抱いたのは「BMV」の形成である。ジュード・ベリンガム 、エムバペ、ヴィニシウス・ジュニオール。この3選手(+ロドリゴ・ゴエス)が揃い踏みして、圧倒的な攻撃力で相手を凌駕するイメージを膨らませた。

ただ実際には、エムバペが適応に苦しみ、なおかつヴィニシウスとの関係構築に苦労した。やはり、マドリーのエースに君臨するのはヴィニシウス(今季シーズン前半戦公式戦21試合出場14得点10アシスト) だったのだ。

また、ベリンガムは、エムバペの加入後、明らかに苦戦していた。

昨季、『ベリンガム・システム』で、トップ下で躍動したベリンガム。移籍一年目で、公式戦23ゴール13アシストという素晴らしい数字を残した。ベリンガム 自身、得点数はキャリアハイのものだった。

しかし今季はリーガ第13節オサスナ戦までノーゴールが続き、マドリディスタをヤキモキさせた。エムバペが加入した分、彼とヴィニシウスの代わりに守備を負担せざるを得ず、ここ1年あまりで培ったスペースに飛び出していく力と得点力を発揮できずにいた。

だがオサスナ戦の得点を皮切りに、ベリンガムは公式戦7試合連続ゴールをマークした。その活躍は復調を予感させた。

写真:ムツ・カワモリ/アフロ

「エムバペの適応期間は終わった。彼は良い状態にあることを示している。まだ改善できるけれどね。この数試合、良いプレーをしている。負傷からも復帰できた。モチベーションに満ちていて、希望を抱いている。誰にとってもそうであるように、彼にも適応の時間が必要だった」

「8月の時点で、私は選手たちのコミットメント、姿勢、バランス、そういったものを見つけるのが難しいと思っていた。非常に心配していたが、我々は昨シーズンのような姿勢を取り戻せた。12月の時点で、こういうシチュエーションを迎えられるとは考えていなかった。間違えるかもしれないが、私は素晴らしい2025年が待っていると予想する」

これはカルロ・アンチェロッティ監督の言葉だ。

攻撃陣がフィットしてきたマドリー
攻撃陣がフィットしてきたマドリー写真:ロイター/アフロ

思えば、昨季、ドブレーテ(2冠)を達成したマドリーである。そのチームに、エムバペが加入して、戦力は純増強。他方でモチベーション維持を含めたマネジメントは、さぞかし難しかったはずだ。

それでも、アンチェロッティ・マドリーは、リーガ、コパ・デル・レイ、チャンピオンズリーグで今季主要タイトル3冠の可能性を残している。もっと言えば、すでにUEFAスーパーカップとインターコンチネンタルカップのタイトルを奪取している。強(したた)かに、着々と、タイトルホルダーのプロジェクトは進められている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『WSK』『サッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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