Yahoo!ニュース

なぜレアルはアーノルドの獲得に動いているのか?エムバペの適応…必要な守備陣の補強とペレスのプラン。

森田泰史スポーツライター
競り合うアーノルドとヴィニシウス(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

クオリティの高い選手を獲得するには、相応の労力が必要になる。

欧州で、冬の移籍市場が開幕した。この冬、注目されるクラブのひとつがレアル・マドリーだ。

■夏の補強

マドリーは、今夏、キリアン・エムバペとエンドリッキを獲得した。昨季、リーガエスパニョーラとチャンピオンズリーグでドブレーテ(2冠)を達成したチームに、ワールドクラスのストライカーが加わった。

マドリーはエムバペを適応させることに苦しんだ。3トップの中央での起用、ヴィニシウス・ジュニオールとの関係性、守備で求められるタスク…。新たなチームで、ビッグクラブで、エムバペへの負担は少なくなかった。

だがシーズン半ばに差し掛かり、エムバペの適応は「終わった」感がある。

得点を喜ぶマドリー の選手たち
得点を喜ぶマドリー の選手たち写真:ロイター/アフロ

一方で、今季のマドリーは守備陣に負傷者が続出している。ダニ・カルバハル、エデル・ミリトンが、シーズン序盤にひざを痛めて長期離脱を強いられた。ダビド・アラバに関しても、復帰に近づいていると言われているが、その「Xデー」は定かになっていない。

エムバペの適応が終わったとするならば、当然、必要なのはディフェンスラインの補強だ。ここにきて、周囲を騒がせているのが、トレント・アレクサンダー・アーノルドの補強の可能性である。

■アーノルドの契約状況

アーノルドは、2025年夏までリヴァプールと契約を結んでいる。つまり、今季終了時に契約が満了を迎え、フリーの選手になる。

マドリーにとって、また複数のビッグクラブにとって、これはマーケットの好機だ。

実際、マドリーは、近年、フリートランスファーで優秀な選手を獲得してきた。アラバ、アントニオ・リュディガー、エムバペ…。いずれも、移籍金ゼロで、マドリーの門戸を叩いている。契約ボーナスが発生したという事情はあるが、契約下にある彼らを移籍金を支払って獲得するコストに比べれば、安く済んだと見るべきだろう。

マドリーは、すでにアーノルド獲得に動いているようだ。スペイン『アス』によれば、マドリーは年俸1000万ユーロ(約16億円)を準備して、アーノルドを迎え入れる手筈を整えているという。

他方、リヴァプールとしては、アーノルドを簡単に放出するわけにはいかない。カンテラ(下部組織)出身であり、いまや世界有数のサイドバックにまで成長した選手だ。イギリス『ミラー』曰く、リヴァプールは年俸総額9300万ユーロ(約148億円)の5年契約を用意している模様。これは、アーノルドが1シーズンに1860万ユーロ(約29億円)を受け取る計算になる。

■賛否が分かれる移籍に

アーノルドを獲得するのは容易ではないだろう。アーノルドはリヴァプールというクラブの象徴的存在、あるいは今後、真の意味でそれになり得る選手なのだ。

「私が失望しているのは、アーノルドはこれから2年から3年のうちに、リヴァプールのキャプテンになれるかも知れないからだ。そうだね、失望以上だ…。私だったら、リヴァプールをリーグ戦のタイトル数において(マンチェスター・)ユナイテッドに優るクラブにしたいと考えると思う」とはリヴァプールで主将を務めた経験を持つジェイミー・キャラガー氏の言葉だ。

「アーノルドの代理人は状況を把握しているはずだ。レアル・マドリーが、次の夏にフリーで獲れる選手に対して、冬の時点でオファーをすると考えるほど、私はウブではないよ。代理人が『スカイ・スポーツ』の報道を見て、マドリーのオファーを知ると思うかい?」

リヴァプールで活躍するアーノルドとルイス・ディアス
リヴァプールで活躍するアーノルドとルイス・ディアス写真:ロイター/アフロ

水面下で駆け引きは行われている。

ただ、マドリーが狙っているのは、アーノルドだけではない。アルフォンソ・デイビース(バイエルン・ミュンヘン)、マルティン・スビメンディ(レアル・ソシエダ )、複数の名前がメディアで踊っている。

マドリーは歴史的に、冬の移籍市場で積極的に動くクラブではない。最後に”成功“したのは2019年冬のブラヒム・ディアスの獲得だが、彼とてミランでの2年間のレンタル移籍があった。

マドリーを率いるアンチェロッティ監督
マドリーを率いるアンチェロッティ監督写真:ロイター/アフロ

「我々は11月頃から厳しい日々を過ごしてきた。そこからリアクションを見せ、現在、チームの状態は良くなってきた。アラバがトレーニングに戻ってきたというのもあるし、負傷していた選手たちが復帰してきた。雰囲気は良い。それを維持するには、試合に勝ち続けなければいけない」

「いま、冬の補強について、話すのは難しい。これから、どうなるかを見てみよう。我々は1月に多くの試合でプレーしなければならない。そこに集中している」

これはカルロ・アンチェロッティ監督のコメントだ。

ギアを上げてきたマドリー
ギアを上げてきたマドリー写真:ロイター/アフロ

アーノルドに関しては、リヴァプール側には移籍金ゼロでは放出したくないという思惑がある。一方でマドリーとしては、余程の事態が発生しない限り、次の夏まで待ち、フリートランスファーで引き入れたいと考えているだろう。

冬のマーケットは難しい。一般的には、そう言われている。しかし、マドリーの場合、財政難というわけではない。むしろ経営は健全。ゆえに、可能性は、残されていると言えば残されている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『WSK』『サッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事