【茶の歴史】東洋から来た魔法の飲み物!西洋でお茶はどう飲まれていたの?
西洋での茶の物語は、まるで風変わりな旅路の記録です。
舞台は1550年代、ヴェネツィアのジョヴァンニ・ラムージオが茶の噂を「カタイのチャイ」として著書に記した頃に始まります。
それから数十年後、オランダが日本と中国から茶を運び、ヨーロッパに広まるのだが、これがただの飲み物ではなく、聖職者の眠気覚まし薬として登場したというのだから、いかにも不思議でしょう。
一方、イギリスでは茶に課税しようとしたオリバー・クロムウェルが登場します。
しかし、国民の密輸熱がこれを凌駕し、聖職者まで密輸に手を染めたというのだから笑い話のようです。
そして、いつの間にかアフタヌーンティーが定着し、硬水でもおいしく飲める紅茶が主役に躍り出ました。
1757年には、サミュエル・ジョンソンが茶を熱烈に愛するあまり「朝から晩まで茶ばかりだ」とまで豪語する始末。
イギリス人と茶の蜜月はこうして深まりました。
さらに、アメリカでも茶が人気を博したものの、1773年の茶法が火種となり、ボストン茶会事件へと発展します。
茶の代わりにコーヒー文化が芽生える一方、独立後は中国貿易に参入し、自前で茶を手に入れるルートを確立しました。
こうして茶は、ヨーロッパの航海と革命をくぐり抜け、紅茶の香りに包まれながら、歴史にその存在を刻んだのです。
参考文献
ビアトリス・ホーネガー著、平田紀之訳(2020)『茶の世界史』、白水社