【茶の歴史】紀元前の書物にも書かれていた!中国でいつからお茶は飲まれていたの?
四川・雲南に始まるか、はたまた中国東南部か──茶の起源は二説あり、どちらも「茶葉は遥かな古より我らを待ち続けていた」といわんばかりです。
その発祥の地である四川では早くから喫茶の風習が芽吹き、長江沿いを伝い江南地方にその香りを広げたといいます。
だが、茶の歴史を辿ると「茶」という字が普及したのは唐代からです。
それ以前は「荼」「茗」「荈」など、まるで別名の友人のように呼ばれていました。
紀元前2世紀の書物には既に「檟」や「荈詫」の名が登場するものの、これが茶であるかは議論の的です。
神農本草経には薬効が記され、陶弘景が「これは茶だ」と豪語したものの、唐代の批評家たちは「いやいや、苦菜だ」と反論しています。
茶と苦菜が同一視され、そして否定される、まさに歴史の迷路でしょう。
やがて茶が「荼」の名で登場するのは、前漢の王褒の記した「僮約」です。
そこには「武陽で荼を買う」との記述があります。
武陽までの道のりを思うと、苦菜であるはずがありません。
こうして紀元前1世紀には茶の文化が確かに芽吹いていたことが判明したのです。
南北朝時代には詩人張載が「芳荼」と称え、梁代には「茶」という文字が登場した可能性もあります。
しかし、それが広く使われるにはまだ時を要しました。茶の歴史は名を巡る物語でもあるのです。
参考文献
ビアトリス・ホーネガー著、平田紀之訳(2020)『茶の世界史』、白水社