台風23号発生 インド洋へ行けるだけの発達はしない見込み
台風23号の発生と発達
台風23号が12月20日15時に南シナ海南部で発生しました。
熱帯域には台風の卵になりそうな雲の塊もありませんので、令和2年(2020年)は、この台風23号が最後の台風になりそうです。
令和2年(2020年)の台風シーズン前半は、台風の統計を取り始めた昭和26年(1951年)以降ではじめて7月に台風発生数がゼロとなるなど、発生数が少なく経過しました。
その後、台風シーズン後半は、10月に過去最多タイの7個が発生するなど発生数が増えたのですが、平年並みにはなりそうもありません(表)。
ただ、令和2年(2020年)の少なくとも23個という発生数は、極端に少ないというわけでもありません。
平成22年(2010年)の14個、平成10年(1998年)の16個と、近年、台風発生数が少ない年が増えてはいますが、昭和の時代でも、21、22個という台風発生数の年は珍しくありません。
台風23号の発達は
台風の発生・発達する目安とされる海面水温は27度といわれています。
台風23号は海面水温28度以上の海域で発生し、西進していますが、進行方向の海の海面水温は27度以下です。
このため、インドシナ半島に接近する12月23日頃には、熱帯低気圧に衰える予報となっています(図1)。
気象衛星からみても、台風23号の西側には活発な積乱雲の塊があるのですが、東側にはほとんどありません(タイトル画像参照)。
発達する台風がそうであるように、活発な積乱雲が台風の中心をとりまいているわけでもありません。
台風とする海域
台風は、東経110度(ほぼマレー半島)から東経180度(ほぼ日付変更線)までの海域にある(広義の)熱帯低気圧のうち、最大風速が毎秒17.2メートル以上の強い風を吹かせるものをいいます。
このため、東経180度線を東から西へ越えたことにより台風になったり、逆に東から西へ越えたことにより台風でなくなったりすることは数年に1回はおきています。
なかには、昭和34年(1959年)の台風12号のように、勢力に関係なく、日付変更線を出たり入ったりしていて、このことにより台風であったり、なくなったりしているものもあります(図2)。
これに似たことは、東経110度線でもおきています。
ただ、東経180度線とは異なり、境界線がアジア大陸であるため、台風が勢力を保ったまま越えるためには、アジア大陸が非常に狭くなっているところ、つまりマレー半島北部を通過する場合だけに限られます。
ここは偏東風帯なので、台風は東から西へ、つまり、台風の勢力が衰えないのに台風でなくなる場合だけが可能性としてあります。
とはいっても、南シナ海を西へ進む台風は、ベトナムに上陸してしまうことが非常に多く、なかなかマレー半島北部には達しません。
ただ、発達した台風が、ベトナムをさけて西進すれば、マレー半島北部に上陸、そのまま勢力を保ってインド洋にゆくことが可能です。
事実、昭和47年(1972年)の台風29号など、非常に珍しいことではありますが、過去に例があります(図3)。
台風23号は、インド洋へ行けるだけの発達はしない見込みですし、それ以前に、ベトナムに上陸するかもしれません。
【12月21日15時追記】
台風23号は、12月21日9時に南シナ海で熱帯低気圧に変わりましたので、インド洋へ行くことはなくなりました。
タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。
図2、図3の出典:饒村曜(昭和61年(1986年))、台風物語、日本気象協会。
表の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。