メッシを中心とするバルサの「新たなトリデンテ」の機能性。
今季途中に監督交代を行ったバルセロナだが、まだ明確な解決策は見えていない。そんな中、リオネル・メッシ、アントワーヌ・グリーズマン、アンス・ファティの3選手が少しずつ噛み合ってきている。
エルネスト・バルベルデ前監督に代えて、キケ・セティエン新監督を迎えたバルセロナ。リーガエスパニョーラで首位に立ちながら、理事会は指揮官の交代に踏み切った。
苦しい状況で、追い打ちをかけるようにルイス・スアレスが負傷した。スペイン・スーパーカップ準決勝アトレティコ・マドリー戦後に足を痛みを感じていたスアレスは手術が必要になり、4カ月の離脱が見込まれている。
■前線の補強
2014年夏にスアレスが加入してから、2017年夏にネイマールがパリ・サンジェルマンに移籍するまで、「MSN」と称されたバルセロナの3トップは圧倒的な破壊力を見せ付けた。
その間、アルダ・トゥラン(2015年夏加入・移籍金固定額3400万ユーロ/約40億円)、パコ・アルカセル(2016年夏加入/移籍金固定額3000万ユーロ/約36億円)、ジェラール・デウロフェウ(2016年夏再獲得・移籍金1200万ユーロ/約14億円)とアタッカーが続々と加入している。だが、「MSN」に割って入る者はいなかった。
ネイマール移籍後には、ウスマン・デンベレ(2017年夏加入・移籍金固定額1億500万ユーロ/約126億円)、フィリップ・コウチーニョ(2018年1月加入・移籍金固定額1億2000万ユーロ/約144億円)、ケヴィン=プリンス・ボアテング(2018年1月加入・レンタル料100万ユーロ/約1億円)、マウコム(2018年夏加入・移籍金固定額4000万ユーロ/約48億円)がバルセロナに加入した。しかしながら、メッシとスアレスが全得点の70%前後を占めるという状況は変わらなかった。
グリーズマン(2019年夏/契約解除金1億2000万ユーロ)の獲得費を加えれば、近年バルセロナが前線補強に費やした資金は4億6200万ユーロ(約554億円)に上る。
■スアレス不在の期間
バルセロナは3トップの配役に腐心してきた。
だが、この冬、クラブはスアレスの代役を確保しなかった。バレンシアのロドリゴ・モレノ獲得に動いたが、移籍金6000万ユーロ(約72億円)を出すことはなく、移籍市場は閉鎖した。
セティエン監督は現有戦力でスアレス不在の期間を乗り越えるつもりだ。元来、彼は補強に頼るタイプの指揮官ではない。
リーガ21試合出場(出場時間1721分)で7得点4アシストのグリーズマンと、リーガ13試合出場(出場時間584分)で4得点1アシストのファティが、メッシの相棒に選ばれようとしている。
「配置」に関しては、左WGファティ、CFグリーズマン、右WGメッシが現時点でベストだろう。
グリーズマンは、レアル・ソシエダやアトレティコ・マドリーでプレーした経験から、ハードワークを厭わない泥臭さと周囲を生かす連携力を身に付けている。一方、新鋭のファティは左サイドに置かれて得意のカットインからのシュートをちらつかせながら、ワイドに張ることで強みを出せる。
■新たなトリデンテ
そして、新たなトリデンテ(三叉の矛)には異なる可能性がある。
メッシ(17試合出場/出場時間1440分/14得点8アシスト)とスアレス(17試合出場/出場時間1278分/11得点7アシスト)は、確かに類稀な決定力を備えている。一方、メッシ(ボール奪取数27回)、スアレス(ボール奪取数22回)と守備が得意ではない2選手を、「野放し」にしてしまったのはバルベルデ前監督の功罪だ。
グリーズマンのボール奪取数56回は、バルセロナのアタッカー陣でトップの数字である。また、ファティのボール奪取数は26回で、プレータイムに顧みれば及第点以上の数字を残している。
前線の選手に守備をさせながら、ポゼッションフットボールに傾倒していく。セティエン監督の初陣となったグラナダ戦では83%のポゼッション率を記録して、話題を呼んだ。
セティエン監督はクライフの信奉者だ。しかし、現代フットボールの傾向からして、アタッカーが守備をしないで勝利を収めるのは日を追うごとに難しくなっている。スアレスの不在を逆手に取り、新生バルサを創造できるかーー。指揮官の手腕が試されている。