「3回目接種」「旧姓併記」はどう? 接種証明書アプリの対応を確認する
デジタル庁が12月にリリースした「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」は、最近の「3回目接種」にも対応しています。1月にアップデートされた「旧姓等の併記」を含め、対応状況を確認してみました。
このアプリを使うと、マイナンバーカード(海外用はパスポートも)から読み取ったデータをもとにワクチン接種記録システム(VRS)に照会し、接種証明書をスマホにダウンロードできます。
証明書の発行件数は2月6日時点で約355万件となっており、マイナンバーカードが5200万枚発行されていることに比べると少ない印象ですが、発行件数は毎週伸び続けています。
一度発行した証明書は更新されず、アプリ内にはマイナンバーカードの情報も保持されないので、証明書を更新したいときには再びマイナンバーカードを読み取って再発行する手続きが必要です。
筆者の場合、地元の自治体で3回目のワクチン接種を受け、翌日に再発行してみるとすでに3回目の接種記録が反映されていました。Smart Health Cards規格のデータ(詳細は以前に解説した記事を参照)を見てみると、1回目・2回目と同様に3回目の記録が追加されていることが分かります。
これを見ると、接種回数を重ねるごとに冗長なデータが増えていくように感じますが、SHCにはデータ圧縮の仕組みがあります。QRコードで表現されたSHC本体は48バイトの増加にとどまっていることから、しっかり圧縮が効いているようです。
「旧姓併記」への対応は?
1月21日にリリースされた新バージョンでは、「旧姓等が併記されたマイナンバーカード」の読み取りに対応しています。実際の証明書はどうなっているのでしょうか。
デジタル庁によるサンプルデータによれば、国内用の証明書では姓の後ろに角括弧付きで旧姓等が書かれています。一方、海外用の証明書には反映されないようです。
まず国内用のSHC本体を見てみると、「family」の項目に旧姓等が含まれていることが分かります。データ構造として旧姓を表現できそうな仕様もありましたが、特に利用していないようです。
次に、なぜ国内用と海外用では旧姓等の扱いが異なるのでしょうか。デジタル庁のQ&Aでは、国内用の氏名は「マイナンバーカードのICチップ」から、海外用の氏名は「パスポートの機械読取領域」(MRZ)から、それぞれ機械的に取得しているためとしています。
MRZとは、パスポートの顔写真ページの最下部にある2行を指しています。アプリや端末などでパスポートを読み取る際に用いられる領域ですが、規格上、旧姓等には対応していないようです。
日本のパスポートは2021年4月発行分から旧姓併記の要件が緩和され、旧姓・別姓・別名を示す説明も追加されるようになっています。しかしこれらの旧姓等がICチップやMRZに含まれないという仕様は変わっていません。
もし海外用の証明書に旧姓等を含めてしまうと、パスポートや航空券などとの不一致によるさまざまなトラブルが予想されることから、こうした判断に至ったように思われます。
なお、市区町村が発行する「紙の接種証明書」では、旧姓・別姓・別名を記載できるとの説明があります。紙とアプリで差分があるのはたしかに気になるところですが、海外で旧姓等を記載した証明書が必要な場合は、紙の証明書を取得する必要がありそうです。