女子生徒いじめ、スクールカースト…テーマは切り込むが内容がずれている?『ビリオン×スクール』
フジテレビ金9ドラマ『ビリオン×スクール』が第3話まで放送された。オリジナル脚本の学園エンターテインメントとなる本作だが、第2話では「いじめ」、第3話では「スクールカースト」をテーマにし、大人の介入が難しい学校のシリアスな問題に切り込むかと期待したが、これまでのところは社会課題を掘り下げるまでの内容ではなかった。
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学校問題の表面をなぞるものの切り込まない
本作は、財閥系企業のトップであり“億万長者=ビリオネア”の主人公・加賀美零(山田涼介)が、超高精度の教育用AIプログラム開発のために身分を隠して高校教師となり、「やる気ゼロ、才能ゼロ、将来性ゼロ」の生徒が集められた3年0組の担任として、さまざまな問題に直面する姿を描く。
本作のアウトラインで興味深いのは、そもそも教育者ではない加賀美零が、生徒たちの甘えやおごりに対して、大人の辛辣な本音をぶつけること。教師に守られるのが当たり前だと思っている生徒たちにとっては、意表を突かれる教師の対応であり、反感も抱く。しかし、加賀美零の言葉は正論であり、反論できない。
また、学校で問題が起きたときに、加賀美零は生徒たちや学校への対応を、教育用AIプログラム・ティーチ(安達祐実)に相談する。実際の学校でも起きているであろうトラブルなどにおいて、AIならどう対応するかといったひとつの答えが示されるのもおもしろい。
そうしたドラマの枠組みがあったうえで、毎回のテーマは現実社会での学校問題を取り上げており、そこにどう切り込んでいくのか期待された。しかし、こういう問題が起きているという、それぞれの事象の表面はなぞるものの、内容には切り込んでいかなかった。
たとえば、第3話ではスクールカーストと称したクラス内の生徒のピラミッド型の順位が張り出された。その順位は、日々の行動によって加点減点があり、1〜3軍が入れ替わるというもの。点数を得て順位を上げるために、2〜3軍の生徒が映画部が制作する自主映画に参加するというリアルとはかけ離れたストーリーだった。
ラストでは加賀美零が生徒たちに向けてその回のメッセージを投げかけるが、第3話は「スクールカーストなんてくだらない。何を気にしているのかさっぱり理解できない。1軍だから、3軍だからどうなんだ。誰といるか、どこに属するのか、そんなことで人の価値は変わらない。誰の目も気にせず、居たいやつと一緒にいろ」。
正論だが、そこが社会のすべてである当事者たちにとってその言葉は何の解決にもつながらないし、彼らが求めている答えがあるとしたら、ずれている気がする。
丁々発止の会話劇を楽しむコメディドラマ
ただ、そもそも本作はコメディに振り切ったドラマだ。加賀美零と秘書であり副担任の芹沢一花(木南晴夏)との会話をはじめ、教師陣の食い気味のトークはコントそのもの。丁々発止の会話劇を楽しむコメディドラマが本作の本質であり、その部分では十分楽しめるドラマになっている。
とくにMEGUMI演じる養護教諭・堺宮子のキャラ立ちの激しさと、掛け合いのおもしろさが笑いの起点になり、ドラマのコメディパートを引き締めている。MEGUMIは、前期ドラマ『おいハンサム!!』の伊藤家の穏やかなお母さん役とは対極のキャラクターで、強烈なインパクトを残している。
コメディがしっかり作られているだけに、シリアスのパートで切り込んでいないのが惜しいところ。
第4話のテーマは「不登校」。取り上げる切り口は、学校における社会的問題のポイントをついている。そこのリアルに即した掘り下げと、真正面からのメッセージが期待されるところ。この先の展開に注目したい。
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