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プレーオフ準決勝見どころまとめ/リーグワンD1第16節ベスト15【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
人呼んで「サイクロン」。コロインベテは大一番でも爆発するか(写真提供JRLO)。

 ジャパンラグビーリーグワン1部の4傑によるプレーオフが間もなく始まる。

 5月18日にはレギュラーシーズン首位の埼玉パナソニックワイルドナイツが同4位の横浜キヤノンイーグルスと、19日には同2位の東芝ブレイブルーパス東京と同3位の東京サントリーサンゴリアスが、いずれも東京・秩父宮ラグビー場で準決勝をおこなう。見どころは。

ワイルドナイツ対イーグルス

 一昨季まで2連覇のワイルドナイツにあって、フッカーの坂手淳史主将はファイナルを落とした昨季も充実していたと強調する。

「去年、負けたことを(メディアに)よく聞かれますが、去年は去年でいいチーム。最後のゲームに限って自分たちのパフォーマンスを出せずに負けてしまっただけで、1年間のキャンペーンで考えると成長ができた」

 複数の選手の証言を総合すると、昨季のV逸のわけは「メンタル」。今季は、際立つ組織力を確実にフィールドへ反映させるよう気を引き締めてきた。坂手は続ける。

「今季もいい成長を遂げていまに至ります。フォーカスを自分たちに当てていいチームを作れている。去年を経験している分、自信を持っています。それをプレーに出したいところではあります」

 全チームにとってのターゲットであるワイルドナイツに対し、イーグルスでスタンドオフを張る田村優はこのように言う。

「自分たちのやってきたことのいいところだけが出れば、勝てる。どうやってもあと2試合、ぼろ負けするか、マジックを起こして勝つか…。自信を、自分たちのなかだけでもいいから持つ、ってことです。周りはパナ(ソニック)が勝つと思う。もちろん、その通りで。けど、自分たちのなかで自信を持っていた時に、アップセットが起きる。それは僕自身(日本代表で活動していた時などに)何回も経験している。その、雰囲気に、チームを持って行けさえすれば。1パーセントでも勝利する確率があれば、必ずチャンスが来る」

 ワイルドナイツは堅守速攻で鳴らす。タックラーがすぐに起立し、横幅の広い壁を敷き続ける。イーグルスが何かを起こすためのポイントは、「どう守りを崩す」か「どう守らせないか」だろう。

 前者に関する準備のひとつは、用兵に見られる。イーグルスの沢木敬介監督は、フォワード第3列にハラシリ・シオネ、アマナキ・レレイ・マフィを同時に先発させる。

 突進力が魅力の2人を並べることで、ひとつの局面に複数のディフェンダーを引き寄せる機会を創出。ワイルドナイツが好守を披露する前提を崩す流れで、自然とできる穴場を攻め落とすイメージか。

 後者は、敵陣の深い位置でボールを持たせることとほぼ同義。今季の同カード2敗目を喫した最終節では、そのエリア合戦で後手を踏んでいる。改善なるか。フルバックの小倉順平はこう展望する。

「(相手に)キックの処理がうまい選手がいる。逆に、穴の選手がいる。そこをちゃんと見極めて、どの選手に(リターンキックを)蹴って欲しいかを考えながらやっていきます」

ブレイブルーパス対サンゴリアス

 今季レギュラーシーズンの通称「府中ダービー」はブレイブルーパスが連勝。ニュージーランドを代表するスタンドオフのリッチー・モウンガが加わったことで、生来のデザインされた攻めが高質化。前に出る防御システムの採用によって、相手ボールの接点に圧をかけやすくなったことも効いている。

 今度の再戦へ、フランカーの伊藤鐘平は「ペナルティから崩されるパターンが一番、怖い。まずは、僕らがクリーンなプレーをしてレフリーに(前向きに)印象付ける」。例えば、防御時の接点で走者を羽交い絞めにするなか、レフリーに撤退するよう声をかけられた時に落ち着いてその場を離れられるか。激しさと冷静さを兼ね備えることが是だ。

「(反則を最少化すれば)シーズンのようにやっていれば、フィールドでのプレーは必ず通用する。テンポよくアタックして、ディフェンスではフィジカリティーを活かして相手をスローダウンさせたら、自分たちに有利な展開になってくる」

 かたやサンゴリアスでは、フッカーの堀越康介主将が接点への対処が肝だと話す。

「相手はチョークタックルだとかで、高い(位置での)レスリングがしたい。そこに付き合わないように、低く、速く…と意識します」

 接点で首尾よく球を出すには、走者がタックラーに正面から捕まらないのが是。攻める布陣に工夫を凝らしたり、エリア合戦で優位に立った流れからスペースへ球を回したりできれば勝機を手繰り寄せられるか。ウイングの尾崎晟也は言う。

「自分たちからトランジション(攻守の切り替わり)を起こすことを意識します。その点で言えばウイングが重要。ハイボールキャッチ、バックスペースへのキックといった自分の役割がキーになる」

 喫緊の課題である、蹴り合う延長で生じる防御については「(選手間の)幅、スペーシングを修正しました。ウイングの(外側からの)コミュニケーションも意識します」と尾崎晟。堀越は笑う。

「もう、ワクワクしかないですね。(ブレイブルーパスには)2回、負けていますし。多分、大方の予想では東芝が有利なんじゃないかと思っている人も多いでしょうけど、全部、ひっくり返す…ではないですが、そのようにやっていきたいと思います」

リーグワン ディビジョン1 第16節 結果

三重ホンダヒート 31—33  コベルコ神戸スティーラーズ

横浜キヤノンイーグルス 14―43 埼玉パナソニックワイルドナイツ

東京サントリーサンゴリアス 26—45 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

花園近鉄ライナーズ 36―46 三菱重工相模原ダイナボアーズ

静岡ブルーレヴズ 20―59 東芝ブレイブルーパス東京

リコーブラックラムズ東京 18―45 トヨタヴェルブリッツ

リーグワン ディビジョン1 第16節 私的ベストフィフティーン

1,田中健太(花園近鉄ライナーズ)…スクラム。

2,中村駿太(横浜キヤノンイーグルス)…スクラム、キャリー。

3,オペティ・ヘル(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…好突進。

4,ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)…9シェイプでの突進、チョークタックル、空中戦。

5,ルアン・ボタ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…好キャリー連発。

6,パブロ・マテーラ(三重ホンダヒート)…ターンオーバー、ロングキック。

7,姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)…突進、ジャッカル。

8,マリノ・ミカエリトゥウ(三菱重工相模原ダイナボアーズ)…ラン。

9,藤原忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…緩急、ランとパスの組み合わせ。防御。

10,リッチー・モウンガ(東芝ブレイブルーパス東京)…防御を引き寄せながらの好パス、バッキングアップ。

11,マリカ・コロインベテ(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…キックチェイス、ビッグゲイン。

12,チャーリー・ローレンス(トヨタヴェルブリッツ)…空洞を切り裂くパスとラン。

13,ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…ランニングスピード。カットイン。

14,竹山晃暉(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…好フィールディング。

15,ニコラス・サンチェス(東京サントリーサンゴリアス)…自陣ゴール前でのターンオーバー、ロングキック。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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