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偽ニュース誤解回避のためノルウェーのメディアがエイプリルフールを自粛

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
「あれ、今年のエイプリルフール記事はどこ?」ノルウェーの報道陣は自粛を選んだ(写真:アフロ)

今年のエイプリルフールを報道陣は笑って迎えることができなかった。4月1日といえば、ノルウェーのメディアがふざけて冗談のニュースを流すことが伝統となっていた。

しかし、トランプ大統領の登場をきっかけにノルウェーでもフェイクニュース拡散の勢いは増している。年内には国政選挙も控えるが、フェイクニュースがさらに暴走するとの懸念から、大手メディアが協力してフェイクニュースを暴く機関を設立(詳細はこちら)。

今年はノルウェーのメディアはエイプリルフールに冗談のニュースを掲載することを断念した。国営放送局NRK、Dagbladet紙、Aftenpsten紙、VG紙、Bergens Tidende紙と最大手メディアは揃って自粛。他にも地元紙がその流れに続いた。

「信頼性で成り立っているはずの我々が、カレンダーが4月1日だからといってフェイクニュースを流すことは、今の空気の中では間違いだ」とベルゲンの地元紙Bergens Tidendeの責任者イェルテネス氏はNRKに語る。

一方、右翼ポピュリスト政党で与党・進歩党Frpの支持者の読者が多いことで知られる電子版Nettavisenは冗談ニュースを続行。「エイプリルフールがメディアの信頼性を低くすることはない」と電子版ジャーナリステンに答えた。

エイプリルフールの直前、国内ではすでにフェイクニュースが出回っていた。「緑の環境党MDGが漁船を禁止する」と一般市民がFacebookに書き込んだところ、4000回以上シェアされる。同党は偽情報だとSNSで伝えたが、フォローしていない支持者以外の層にリーチすることは難しく、誤解は広まった。結果、国営放送局などが偽情報だと報道するまでに。問題の投稿のコメント欄には「面白ければいい」、「この党ならあり得る」と情報の正確性を気にしない人々の意見が目立った。

メディアの電子化が進んでいるノルウェーでは、大手伝統メディアでも速報やスクープを優先するあまりに誤報を流すことが多い。また、緑の環境党や自由党など、「まるで冗談かのような」斬新な環境政策を提案する政党は国民からの反発も強く、フェイクニュースの対象となりやすい。

Nettavisenの今年のエイプリルフールも環境政策関連。「環境に優しい車をさらに優遇するため、電気自動車の運転手はスピード違反した際の罰金が半額に」というものだった。他にも一部の地元紙は「ナショナルデーに子どもたちが大好きなアイスクリームを禁止」など冗談記事を掲載。しかし目立つことはなく、全国規模の報道機関は自粛したため、今年は例年よりも静かなエイプリルフールとなった。

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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