選挙に向けてノルウェー3大メディアが「偽情報」を暴く計画を始動
ノルウェーでは9月に国政選挙を控える。ネット上でのフェイクニュースの拡散が、選挙結果や報道の質に大きな影響を与えそうなことは、各政党やメディア関係者の間でも懸念が広がっていた。
ノルウェー国営放送局NRK、ダーグブラーデ(Dagbladet)紙、VG紙の3大メディアは、電子版やSNSでも連日多くのニュースを配信している。3社は21日に記者会見を開き、合同で偽情報対策に乗り出すと発表した。
3社はサイト「ファクティスク」(Faktisk)をオープンし、夏より本格的な始動を開始予定。故意に、もしくは無意識に発信されたその情報は正しいか、フェイクニュースかを暴き、情報の信用性がどれたけ高いかを人々に伝える役割を果たす。
変化する政治の言論、SNSでの投稿、報道機関の記事、最も読まれているトレンドニュース、注目を浴びている議論やコメントをチェックする。
原因は、トランプ大統領によって始まった「フェイクニュース」と「もうひとつの事実」が、ノルウェーでも日常化しはじめたこと。欧州での一連の騒動の影響を受けて、ノルウェーでも「真実が何か」を気にしなくなってきた人が増えてきたことに、ファクティスク編集者のエーゲベルグ氏は警報を鳴らす。
特に、与党で右翼ポピュリスト政党である進歩党の一部の政治家たちは、報道陣が自分たちが気に入らないニュースを流すと、「フェイクニュース」だと発言するようにもなった。フェイクニュースの広がりは、何が事実か判断しにくくさせ、情報を批判的にみる能力が低い若者への影響も懸念される。
「同意できない」=「偽情報」ではない
9日、リンダ・カトリーネ・ホフスタ・ヘッレラン文化大臣は、政治家たちにも警報を鳴らした。「“自分が気に入らない伝え方だからフェイクニュースだ”と定義することには慎重になるべき」と、批判的な報道に政治家は耐えるべきだとジャーナリステン紙に語る。
各政党や団体などからは、3社による「ファクティスク」プロジェクトを歓迎する声が目立つ。このような試みはノルウェーでも初となるため、実際どのように国民に偽情報かを知らせ、どのような効果を発揮するかは夏以降に効果がわかることになる。
Text: Asaki Abumi