スペースワールドのロケット、本当にICBM? 機体番号「SA-212」は『サターンIB』と指摘相次ぐ
西日本新聞が福岡県北九州市の遊園地『スペースワールド』に残されていたロケットが大陸間弾道ミサイル(ICBM)ではないかと2019年12月30日に報道。これに対し、ネット上で「『サターンIB』では?」と指摘する声が挙がっています。
ICBM判断は専門家によるもの
報道によると、最初に『宇宙航空研究開発機構(JAXA)』の名誉教授にロケットの写真を確認してもらったものの「わからない」との回答だったため、詳しい人を紹介してもらうことに。
紹介先の宇宙科学博物館『コスモアイル羽咋(はくい)』(石川県)の顧問が、ロケットをICBM『タイタン2』だと判断したとのことです。
西日本新聞の報道では、この判断をもとに「平和な遊園地にミサイルの残骸があった」と伝えています。
機体番号「SA-212」は『サターンIB』のもの
ただ、これに対してネット上では機体番号やロケットのかたちから、「アポロ計画で使用されたロケット『サターンIB(いち・びー)』のものではないか?」との指摘が相次ぎました。
写真に写っている機体番号(シリアルナンバー)「SA-212」は、たしかに『サターンIB』で使用されているものです(日本のWikipediaだと「AS-212」と書かれていますが、誤りです。米Wikipediaは「SA-212」。おそらくアポロ計画の最初のミッション名が「AS-201」であることから、表を作った人が機体番号も「AS」から始まると思い込んだものだと思われます)。
NASA資料にも「SA-212」と書かれており、この機体の飛行制御機器は廃棄されたとのことです。
2017年時点でネット上では『サターンIB』と推定
スペースワールドのロケットが『サターンIB』のものではないかという話は、2017年3月に同遊園地に集まった宇宙好きのユーザーさんたちがしており、その話のなかで『サターンIB』のロケットで間違いないだろうと推定されています。
理由としては機体番号にくわえ、(『サターンIB』で使用された)J-2ロケットエンジンがあること、胴体部分の円形の構造体のかたちがそっくりなこと、そのほか『サターンIB』と同じ部分が多い(ように見える)ことが挙げられています。
Twitterユーザーが撮影・投稿したJ-2ロケットエンジン
『サターンIB』の組立工場の写真と構造体(3枚目)がそっくり
※リンク先のNASAのページに「Saturn IB S-IB Stage Thrust Structure Assembly at Michoud Assembly Facility (MAF) - NASA Marshall Space Flight Center Collection」に、写真に写っているものとそっくりな物体が写っています。
「ロケット残骸はICBM」は不正確
というわけで機体番号の一致だけでおわっているような話ですが、『サターンIB』に使用されていたJ-2ロケットエンジンがあること、胴体やそのほかの構造体が似ていることなどから、ロケット残骸は『ICBM』ではなく『サターンIB』ではないでしょうか?
少なくとも1名の専門家の証言だけで『ICBM』だと判断するのは、不正確だと考えられます。