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多部位でまだ半数に届かず…がん検診の動向をさぐる(2023年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
年一の健康診断でがん検診を受ける機会はあるのだが(写真:イメージマート)

多種類の傷病の治癒方法の発見や治療法の改善が進むに連れ、相対的に研究進捗の歩みが遅い「がん」の発症率、そしてそれを起因とする死亡率は増加の一途をたどっている。厚生労働省の人口動態統計の最新版によれば、確定数では悪性新生物(がん)を死因とする人が最上位の比率にある。

↑ 人口動態統計(確定数)における死因(上位5位、死亡率・人口10万人対)(2021年)
↑ 人口動態統計(確定数)における死因(上位5位、死亡率・人口10万人対)(2021年)

「がん」に対する最良の手立ては、健康的な身体作りと定期的な検診による早期発見・早期対応にある。がん検診に関しては、早期発見によるリスク軽減効果に関する啓蒙が進んでいることもあり、検診率(受診率)は少しずつではあるが上昇傾向にあった。だが直近の2022年では多くの部位で頭打ちの動きが生じている。

まずは2022年における受診率。なお検診の指針において胃がん検診は過去2年間の受診率も勘案することとなったため(ただし対象年齢は50~69歳)、2019年調査分以降はその値も示している。また女性特有の2検診が「過去2年間の回答」なのは、両検診が2年おきに行うことを基本としているから。

↑ がん検診を受診した人の割合(過去1年間・子宮がんと乳がんは過去2年間、男女別)(2022年)
↑ がん検診を受診した人の割合(過去1年間・子宮がんと乳がんは過去2年間、男女別)(2022年)

男性は肺がん検診がもっとも受診率が高く5割超え、女性は乳がん検診がもっとも高く47.4%。女性は子宮がん検診も4割超え。

各部位別の検診率の違いを見ると、男性は肺がん・胃がん(過去2年間)が高めで大腸がんは低め、女性は肺がん・乳がんが高めで胃がん(過去2年間)・大腸がん・子宮がんは低めと出ている。一方、直近2022年分の人口動態統計月報年計(概数)から「部位別にみた悪性新生物」で死亡率を確認すると、悪性新生物(がん)の場合男性は「肺」「大腸」「胃」、女性は「大腸」「肺」「膵臓(すいぞう)」の順に死因部位率が高い(2022年時点)。男女とも高めの死因率の肺がんには強い関心を抱いて検診を行い、また女性は女性特有の乳がんが気になり検診率が高くなっているのが確認できる。もっとも男女とも死因部位率の高い大腸がんに関して受診率が低めなのが気になるところ(逆に受診率が低いからこそ、発見が遅れて死因率が高いのかもしれない)。

最後に、直近6回分の「国民生活基礎調査」大調査における各部位のがん検診受診率の推移が次のグラフ。1997年の女性特有のがん検診は「過去1年間」でのみ問い合わせているので、値が少々低いものとなってしまっている。また「胃がん(過去2年間)」は「50~69歳」に対象年齢を限定している。

↑ がん検診を受診した人の割合(過去1年間・子宮がんと乳がんは過去2年間、男性)
↑ がん検診を受診した人の割合(過去1年間・子宮がんと乳がんは過去2年間、男性)

↑ がん検診を受診した人の割合(過去1年間・子宮がんと乳がんは過去2年間、女性)
↑ がん検診を受診した人の割合(過去1年間・子宮がんと乳がんは過去2年間、女性)

2010年から2013年にかけて大きく検診率の向上が見られるが、これは各自治体における受診勧奨事業などの効果が表れていると思われる。他方、2022年では一部の部位で前回調査比で減少してしまっているが、これは新型コロナウイルス流行による病院などへの来院の忌避傾向が影響している可能性がある。

現状では多部位で検診率は5割、つまり半数に届かず、半分以上ががん検診を直近で受けていない状態にある。

「がん検診」は確実にがんを見つけられるものではない。とはいえ、がんによるリスクを減らせるもっとも賢明な手立てであることにも違いない。がんは目に見えるものではなく、特定の病状を持つものでもない。仮にがんによる病状を覚えても、他の病気と思い違いしてしまうことも多い。是非とも積極的に、がん検診を受診することをお勧めしたい。

勘違いをしている人もいるが、「がん検診を受けるとがんが発症する」わけではない。あくまでも「がん検診を受けると発症しているがんを確認することができるかもしれない」に過ぎないのだから。

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※国民生活基礎調査

今調査は全国の世帯および世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2022年6月2日に世帯票・健康票・介護票、同年7月14日に所得票・貯蓄票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収され、集計されている(一部は密封回収)。回収の上集計が可能なデータは世帯票・健康票が20万3819世帯分、所得票・貯蓄票が1万9140世帯分、介護票が5499世帯分。今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2022年分)は大規模調査に該当する年であり、世帯票・健康票・介護票・所得票・貯蓄票すべての調査が実施されている。

また1995年分は阪神・淡路大震災の影響で兵庫県の分、2011年分は東日本大地震・震災の影響で岩手県・宮城県・福島県(被災三県)の分、2012年は福島県の分、2016年は熊本地震の影響で熊本県の分、2020年は新型コロナウイルス流行の影響で全体のデータが取得されておらず、当然各種結果にも反映されていない。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。され、集計されている(一部は密封回収)。回収の上集計が可能なデータは世帯票・健康票が21万7179世帯分、所得票・貯蓄票が2万2288世帯分、介護票が6295人分。今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2019年分)は大規模調査に該当する年であり、世帯票・所得票以外に健康票・介護票・貯蓄票の調査も実施されている。

また1995年分は阪神・淡路大震災の影響で兵庫県の分、2011年分は東日本大震災の影響で岩手県・宮城県・福島県(被災三県)の分、2012年は福島県の分、2016年は熊本地震の影響で熊本県の分はデータが取得されておらず、当然各種結果にも反映されていない。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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