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美しすぎる玉城ティナが鉄道オタクを演じると…。「尖ってない役で等身大を見せるのが私には挑戦です」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/S.K.

圧倒的な美貌とクールな佇まいで、他の誰にもできない役をものにしてきた玉城ティナが、ドラマ『鉄オタ道子、2万キロ』に主演している。演じるのは家具メーカーに勤めつつ、10年来の鉄道オタクという役。全国のローカル駅へ旅する物語の中で、誇張のない等身大の女性を演じるのは、彼女には大きな挑戦だという。

沖縄生まれには北海道の雪は凍えました

都会から離れた日本全国のローカル駅が毎回の舞台となる『鉄オタ道子、2万キロ』(テレビ東京ほか)。有名家具メーカーの企画営業として働く大兼久道子(玉城)は、歴10年の鉄道オタク。時間ができると1人で列車に乗り込み、旅に出る。

――玉城さんは元から旅好きなんですよね?

玉城 好きです。でも、コロナ前は海外のほうがリフレッシュできたので、道子のように日本全国を列車で旅することはなかったです。無人駅、秘境駅というものがこんなに各地にあって、楽しまれている方がたくさんいるのは今回初めて知りました。

――ドラマ撮影の中でも、旅気分を味わえていますか?

玉城 そうですね。1日1話ペースで大変なスケジュールですけど、景色はきれいですし、街の雰囲気も楽しめて、初めて乗る列車内での撮影もあって面白いです。

――沖縄生まれとしては、北海道の寒さは身に染みたりも?

玉城 1話の比羅夫駅では、沖縄出身の私が見たことない豪雪でしたけど、北海道の方は「まだ冬の雪じゃないよ」とおっしゃってました(笑)。凍えながらダウンを着つつカイロを張って、見えないところで防寒してました。

――プライベートではノープランの1人旅が多いんですか?

玉城 はい。1人のときは分刻みのスケジュールを組みたくなくて、気が向いたときに遊びに行く感じでした。

(C)「鉄オタ道子、2万キロ」製作委員会
(C)「鉄オタ道子、2万キロ」製作委員会

旅先でハプニングを楽しむ自分がいました

――海外旅行ではどんな思い出がありますか?

玉城 鉄道のことだと、ロシアに行ったとき、モスクワからサンクトペテルブルクまで寝台列車に乗ったんですけど、赤いベロアの質感の座席とか車内がレトロな感じで。景色も日本とは全然違って、本当にワクワクしました。

――ロシアはそれこそ寒さが厳しかったりは?

玉城 だいぶ寒かったです。そのときは雪は降ってなかったんですけど、ナメたらいけないと思う寒さでした(笑)。旅行に行って自分で体験すると記憶に残りやすいので、他の国でも思い出はたくさんあります。

――道子に「どんな旅でも思いがけない自分に出会える」という台詞があります。それは玉城さんも実感したことですか?

玉城 あると思います。旅先ではプランを立てても、その通りに進まなかったり、天候が悪かったり、予想外なことが起きますけど、それも楽しんでいました。「どうしよう?」と落ち込むのでなく、「じゃあ、こうしてみようか」とスケジュールを組み立て直すのも面白いですし、1人で現地の駅や空港の方に話も聞きながら、「私って、こういう一面があったんだ」と思いましたね。

――現地の人とコミュニケーションを取るほうなんですか?

玉城 英語はネイティブレベルではなくて、積極的に自分から話し掛けたりはしませんけど、声を掛けられたら答えますし、自分で必要があるときは話すようにしています。いろいろなことを教わりました。

撮影/S.K.
撮影/S.K.

ロケ地でのリアクションを素直に出してます

――道子はキャラクター的には、肩の力を抜いて演じられる役ですか?

玉城 監督と最初に話したのが、誇張のない等身大なキャラクターでいてほしいと。そして、コロナ禍で旅行に頻繁に行けない今だからこそ、リラックスして観られて、旅先の風景と合わせて楽しんでもらえるドラマにしたい、ということでした。道子は旅行も気合いを入れて「行くぞ!」というより、週末やお休みを趣味に当てている感じの女性ですね。

――撮影前にあれこれ考えたりもせず?

玉城 駅の資料を見たり、自分なりにどういう列車か調べたりはしますけど、ロケ地に行ったときの道子としてのリアクションを素直に出しています。鉄道オタクとはいっても、「こういうのが好きなんです」とポジティブに言えるキャラクターにしていきたくて。

――『惡の華』や『地獄少女』などとは取り組み方から違うと。

玉城 原作ものだとキャラクターに寄せないといけないので、アプローチの仕方がだいぶ変わります。道子は28歳の女性で平日は普通に働いて、仕事のキャリアもわりとある中で、人生を楽しんでいるイメージ。尖らせて演じようということはないです。

――玉城さん的には、そういう等身大の役とアクの強いキャラクターと、どっちが演じやすいとかありますか?

玉城 原作ものにプレッシャーがとてもあるタイプではなくて、役について学べる材料がたくさんあるのは、演じやすいというより味方が多い感覚です。原作がなくて1から演じるほうが、どういうことを柱にして演じたらいいのか、ちょっと不安があります。

高校を卒業して苦手だった演技に向き合おうと

――そもそもですが、中学生の頃からモデルとして活躍していた玉城さんが、女優活動も始めたのは高校生の頃からでしたっけ?

玉城 モデル以外のお仕事も本格的にやっていきたいと思うようになったのは、高校の卒業間際くらいです。それまでは女優のお仕事をやらせていただいても、自分がどう動いていいのかわからなくて、しっくり来てない感じがありました。

――初期の『ダークシステム』も『天の茶助』もインパクトがありましたが、自分の中で早くから演技の面白みを感じていたわけではなくて?

玉城 最初の頃は面白いまでは正直行けなくて、「女優のお仕事は何て大変なんだ」と思って、苦手意識もありました。

――では、いつ頃から面白みややり甲斐を感じたのですか?

玉城 高校を卒業して、私は大学に進まなかったので、お仕事1本で20代の自分が行く道を考えたとき、好きとか苦手とか言っていたらいけないなと。もっと自分のできることがあるはずだと、演技にも背を向けないで向き合おうと思ったのは大きかったです。

――演技が好きになったというより、まずはやらなければいけないと。

玉城 自分が子どもの状態で女優に挑戦して、ちゃんとできなかったけど、時間を置いたら、また違う感覚になるかと思って、やってみようとした感じですね。

――その後、いろいろな作品で評価されて、今はその違う感覚になったんですか?

玉城 はい。でも、いまだに「面白い。やり甲斐がある」というより、「難しい。これでいいのか?」というほうが大きいです。自分を女優だと名乗るのが、まだちょっと恥ずかしいというか。もちろん自分なりのプロ意識はちゃんと持っているつもりですけど、どんどん次に進んでいくしかないお仕事で、なかなか追い付けません。

撮影/S.K.
撮影/S.K.

普通の役になりにくいのは自覚してます

――何かの作品で開眼した、ということはないですか?

玉城 開眼というレベルまでは、自分の中で行ってません。ひとつひとつ作品を積み重ねて、少しずつ自信の元にはなりました。やってきた経験でしか女優の自分を作り上げられなくて、ずっと続けていくのかと言われたら、どうなんだろうと思ったりもして、不思議なお仕事という感じです。でも、撮影で現場にいることは好きですし、自分ではないキャラクターとして言葉を発するのは面白くて。向いてないとは思っていません。

――監督か誰かに言われて、演技の軸になったことがあったりは?

玉城 演技をガッツリ勉強したことはあまりなくて、作品ごとに監督さんや共演者の方と作っている感覚で、私の中ではそのときの監督が正解なんです。私が「こんな演技ができます」と言っても、監督がNOならNO。作品ごとに正解を見つけていくので、柔軟性を大事にしています。

――ご自身の美しさは自覚的に武器にしているところはありますか?

玉城 たとえば原作ものだと、自分のヴィジュアル込みでキャスティングしていただいているのはわかりやすくて。単純に見た目がキャラクターっぽいんでしょうけど、そこは強みだと思います。

――4月に公開される『ホリックxxxHOLiC』のひまわりも、ハマってますよね。

玉城 逆に、私は普通の役にはなりにくいタイプということも自覚しています。自分の容姿や内面と合うほうが私自身もフィットしやすくて、求められているものと重なりますけど、難しいところですね。容姿に関して自覚しないといけないところは自覚して、利用できるなら利用したいです。

――そういう意味では、今回の道子役はむしろチャレンジ感がありますか?

玉城 私はやっぱりアクの強いキャラクターを演じるイメージが強いと思いますけど、今回は本当に等身大。仕事を持っていて趣味を楽しんでいる女性像は、挑戦したことがないので、皆さんにどう受け取ってもらえるか楽しみです。

撮影/S.K.
撮影/S.K.

折れないようにしなやかなにいきたくて

――道子にとっての鉄道のような趣味は、玉城さんは持っていますか?

玉城 私が続けられていることは、仕事くらいしかないんですよね(笑)。でも、このお仕事って、普段の自分の生活や考えていることが、合間に出ると思うんです。日常で身に付けるお洋服ひとつで、変わるところもあったり。

――感性は常に高めてないといけないと?

玉城 だからこそ、私は仕事でストイックなことをしている分、オフでは甘やかしてあげたいと思っています(笑)。ゆったりする時間はすごく必要です。

――そういう時間に何をしているんですか?

玉城 何もしたくない(笑)。ひとつ作品が終わったら、自分を一度リセットする。その方法が2年前までは旅行で、自分を別の場所に置いて東京に帰ってくるのを決まりにしていましたけど、今はそれができなくなって。のんびり息抜きすることを大切にしています。

――玉城さんは去年デビュー10周年で発売した写真集のタイトルが『世界』だったり、5年前から続くラジオが『玉城ティナとある世界』だったりで、自分の世界というものにこだわりがあるんですか? 譲れないものがあるとか……。

玉城 譲れないものは私の中にありますけど、お仕事でご一緒した方に「私はここが譲れません」と言葉にすることはあまりありません。やってみて、自分も「私の譲れないところはここだったんだ」と気づく感じです。折れないように、しなやかにいきたくて、意外と周りに合わせます。でも、性格はハッキリしているほうなので、自分が良いと思ったことは監督さんにも言います。

――『鉄オタ道子、2万キロ』でも、そういうことはありました?

玉城 台詞の言い回しをちょっと変えたりはしてます。道子ははしゃいでワーッと言うキャラクターではなくて、大人の1人旅を噛みしめているほうが合うと思って、提案をさせていただくことはあります。

撮影/S.K.
撮影/S.K.

列車での寝泊まりを経験したい

――今回の撮影で、鉄道旅の醍醐味も実感していますか?

玉城 実感している最中です。駅ごとにノートがあって、「○○から来ました。雨でした」とか「ここに来るために○○をして」とか、皆さんが率直に書かれているんですね。読むと、その駅が愛されているのがわかりますし、鉄道が好きな人はこういうことに惹かれるんだと、勉強になります。

――特に印象に残った書き込みはありますか?

玉城 駅で1泊して「ここで朝日を見ました」と書かれていたり、目的地が駅という方がたくさんいるんですよね。あまり詳しくない私からすると、駅は目的地に行くための交通手段と捉えていましたけど、鉄道好きの方はそうではなくて。駅を訪れて、周辺を散歩したりして満たされるのが、面白いなと思いました。撮り鉄とか音鉄とかいろいろあって、そういう方たちがドラマに出てきたりもします。鉄道好きな方も楽しんでもらえると思いますし、詳しくない方にも「こんな楽しみ方があるんだ」とぜひ知ってほしいです。

――またあちこち行ける状況になったら、玉城さんは次にどんな旅をしたいですか?

玉城 列車旅に触れる機会をドラマでいただいて、鉄道に興味が出てきました。私も全国をいろいろ回ってみたいと思います。日本には観光用の鉄道もたくさんあって、移動しながら車内で寝泊まりもできる。そういう経験をしてみたいです。

(C)「鉄オタ道子、2万キロ」製作委員会
(C)「鉄オタ道子、2万キロ」製作委員会

Profile

玉城ティナ(たましろ・てぃな)

1997年10月8日生まれ、沖縄県出身。

2012年に『ミス iD』で初代グランプリ。同年に14 歳で『ViVi』の最年少専属モデルに。2014 年にドラマ『ダークシステム 恋の王座決定戦』で女優デビュー。主な出演作は、映画『わたしに××しなさい!』、『Diner ダイナー』、『惡の華』、『地獄少女』、ドラマ『ドルメンX』、『そして、ユリコは一人になった』、『荒ぶる季節の乙女どもよ。』、『極主夫道』など。放送中のドラマ『鉄オタ道子、2万キロ』(テレビ東京ほか)に主演。4月29日公開の映画『ホリック xxxHOLiC』に出演。『玉城ティナとある世界』(ニッポン放送)でパーソナリティ。写真集『世界』が発売中。

ドラマ25『鉄オタ道子、2万キロ』

テレビ東京ほか/金曜24:52~

公式HP

(C)「鉄オタ道子、2万キロ」製作委員会
(C)「鉄オタ道子、2万キロ」製作委員会

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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