昨年に続いてファームも開催した『ウル虎の夏』。1軍より先に勝っちゃいました!《阪神ファーム》
ことしも『ウル虎の夏2018』を開催中の阪神タイガース。前半は7月16日からの巨人3連戦、後半は24日からの広島3連戦ですが、その間の20日から22日まではファームが中日との3連戦で、甲子園を黄色く染めています。昨年同様、これがファームにとって甲子園で今季最後のカードで、3試合ともナイター。そして1軍と同じ“ウル虎ユニホーム”を着用してのゲームです。1軍は前半に3タテを食らってしまったけれど、ファームはまず初戦を取りました!
きのう20日は予定通り糸井嘉男選手が、1軍復帰の“仕上げ”としてウエスタン・中日戦に3番ライトで先発出場。3打席に立ち、二塁打、左飛、2ランの結果と「行くぞ!横浜」の言葉を残して引き揚げています。6月30日に死球で骨折した右足はまだ完治していないはずで全力の走塁ではなかったものの、ファウルの打球を追った際はかなりスピードも出していました。流れた登場曲ではもちろん「糸井ならやれるーや♪」の大合唱。さすがの盛り上がりですね。
なお阪神ファームは16日からソフトバンクとの“首位攻防”4連戦(タマスタ筑後)を3勝1敗で終え、首位をキープ。きのう20日も勝って、試合のなかった2位・ソフトバンクに3ゲームの差をつけています。今週のソフトバンク戦も中日戦も全部ナイターとはいえ、雨が降りそうにない猛暑での7連戦はかなりきついでしょう。そのせいかどうかはわかりませんが、昨夜の試合はエラー続出!合わせて7失策(阪神4、中日3)もありました。ただしヒットでいいのでは?という打球やプレーもいくつか…。
では試合結果からご覧ください。
《ウエスタン公式戦》7月20日
阪神- 中日19回戦 (甲子園)
中日 101 110 000 = 4
阪神 100 600 00X = 7
◆バッテリー
【阪神】○青柳(4勝2敗)‐守屋-山本-岡本-S伊藤和(1勝2敗10S) / 坂本
【中日】●清水(1勝2敗)(3回2/3)-浜田智(1回1/3)-大蔵(1回)-木下雄(2回) / 杉山
◆本塁打 神:糸井1号2ラン(清水)
◆三塁打 神:森越
◆二塁打 神:糸井
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]左:江越 (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .219
2]遊:森越 (4-2-2 / 0-0 / 0 / 0) .263
3]右:糸井 (3-2-2 / 0-0 / 0 / 0) .667
〃右:島田 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .213
4]中:高山 (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .308
5]二:板山 (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .289
6]指:緒方 (1-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .271
〃打指:小豆 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .158
〃打指:西田 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .196
7]一:荒木 (2-1-0 / 0-0 / 0 / 1) .191
〃打:今成 (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .222
8]三一:山崎 (3-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .400
9]捕:坂本 (3-1-2 / 1-0 / 0 / 0) .315
※小豆=小豆畑
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
青柳 5回 88球 (5-3-5 / 4-1 / 3.38) 145
守屋 1回 12球 (0-1-0 / 0-0 / 2.16) 150
山本 1回 6球 (0-0-0 / 0-0 / 3.31) 135
岡本 1回 13球 (0-0-0 / 0-0 / 3.24) 142
伊藤和 1回 22球 (1-0-0 / 0-0 / 1.78) 143
《試合経過》※敬称略
青柳は1回、先頭の溝脇に中前打を許し、続く友永の一ゴロでベースカバーに入るも、荒木の送球を捕れず(記録は内野安打と青柳のエラー)、その間に溝脇が生還。開始3分で1点を失います。しかし打線はその裏、2死から糸井が右中間フェンスを直撃する二塁打を放ち、高山が左越えタイムリー!と思ったらレフトの松井佑がグラブに当てて落としたらしくエラーのランプ…。互いのエラーで1対1の同点となりました。
3回の青柳は友永に一塁線を破られて(記録は荒木のエラー)二塁へ進め、遠藤の二ゴロで1死三塁。4番の松井佑は三ゴロで、山崎が捕ってすぐサードベースを踏み一塁へナイススロー!友永の帰塁が早く併殺にはならなかったものの、これで2死。ところが5番・野本の右中間タイムリーで勝ち越され、4回にも三ツ俣への四球などで2死二塁とし、溝脇の右前タイムリーで3点目を奪われます。
続いて4回の攻撃。板山と緒方が連続四球、荒木の右前打で無死満塁とします。山崎はいい当たりながら遊直に倒れたあと、まず坂本が左中間への2点タイムリーで同点!2死後に暴投で二、三塁となり、森越が右中間へ大きな当たり!2人を還して自身も三塁へ。続く糸井が右中間のフェンス最上部を直撃する2ラン!この回6点を取って逆転成功。
7対3で迎えた5回、青柳は死球と四球を与えて無死一、二塁としますが、6番の阿部は投ゴロで併殺。でも2死三塁となって、石岡の投ゴロを捕れず(前進して出したグラブの下を通過)…これでもう1点失いました。リリーフ陣はいい仕事ぶりです。6回の守屋は12球で、7回の山本は6球で、8回の岡本も13球でビシッと三者凡退!なお打線は後半、6回に山崎が右前打を放っただけで、他はすべて打ち取られています。
3点リードのまま9回を迎え、伊藤和が登板。まず5回からファーストに回った山崎がファウルを好捕して1死。代打・渡辺にはサードへ内野安打を許し、溝脇は投ゴロで伊藤和が二塁へ送球するもエラー。1死一、二塁となりましたが、友永は中飛、伊藤康は投ゴロで試合終了。伊藤和はこれで10セーブ(リーグ1位)です。
矢野監督が青柳投手に提案したのは…
試合後、矢野燿大監督は糸井選手について「打つ方は問題ないから。守備がどうかなと思ったけど、まあ(4回の)ファウルフライも走れていたし。二塁打のところでは一塁ベースを回る時に、ちょっとやっぱり気にしているかなというのはあったけど、それ以外は守備で真っすぐ(打球を)追っているのとか、いけるんかなという感じだったから、そのように報告するつもり」と話しました。糸井選手が「行くぞ!横浜」と言って去ったことを聞いた矢野監督。「もう走って行ってるんちゃう?誰にも止められへん(笑)」
次に青柳晃洋投手の話です。「本人にも言ったんだけど、速いボールと遅いボールの間のボールが欲しいね。いい時はツーシームが真っすぐに見えて、沈んでゴロになったんだけど。今はツーシームでゴロにならないから130キロぐらいのものを練習しようかと。これまでも何度かトライはしているんだけどね。ツーシームの速いのを、スピード的なイメージとしては130キロくらいで投げるようなつもりで。若干、腕が緩んでもバッターがどういう対応をするかというのを試しながらやっていこうという話はした。まだちょっとね、これじゃあ1軍っていうのは見えないよね…」
4回に打線が一挙6点。「まあエラーもついていたけどね、しっかり捉えた打球もあったし。坂本が、森越があの状況で打ったのも大きい。そういう集中力っていうのかな。一気に畳み掛けることができている。森越もずっと調子いいので。もともと守備もうまいし、ムードメーカーやし。こういうことを続けていたら、誰か推薦となった時に“森越”って名前が出てくるようなレベルに来ていると思う」
中堅どころの頑張りもお手本
いい仕事ぶりを披露した山崎憲晴選手には「ファウルフライも三塁線の打球もよく捕ったし、(打つ方では)ライト前ヒットもショートライナーも、味があるというかアイツらしい。1軍でも2軍でも、どこへ行ってもアイツのやることは変わらないから。俺も2軍の選手に言っているけど、そういうのはプロとしてすごく大事なことやと思う」と矢野監督。
そして「ゴマをするわけじゃないけど、中堅やベテランの選手が本当によくやってくれている。森越も山崎も今成も、今ちょっとゲームから離れているけど西岡も。若手の見本になる部分だし、チームとしてすごくいい形だと思うので、あとはまだ上がっていないヤツも何とか1軍へね。アイツら自身が上がっていかないとダメなんだけど、俺らも後押しできるようにしたい」と続けました。
また侍ジャパンの稲葉篤紀監督がこの試合を視察した件で、矢野監督は「俺も侍のコーチをさせてもらったことがあるけど、日の丸を背負うっていうのは気持ちの上ですごく違うし、いい意味での自覚が現れたりするので、選ばれた方が選手のためになると俺は思う。ああいう経験はすごく大きいから。行けるチャンスがあるヤツはどんどん行けばいいし、稲葉監督が“誰にしよう”と悩むくらいのレベルにしていきたい。そういう選手が結構いると俺は思っている」と話しています。
左打者に対する課題が浮き彫りに
選手のコメントをご紹介しましょう。先発の青柳投手は5回を投げ、5安打3三振5四死球で4失点。自身の2失策などもあり自責は1点でした。振り返って「よくなかったですね。(4回、5回は)フォアボールから失点したり。(3回は)エラーで出たランナーをファインプレーで2死と、いい流れを作ってもらったのに失点してしまったので。そういうところはしっかり粘らないといけないなと思います」と反省。
矢野監督がいう“速いボールと遅いボールの間”については「僕自身も左バッターに苦しんでいて、きょうも打たれたのが全部左だった。矢野さんに、前に登板した時はインコースの使い方を教わったんですけど、きょうもインコースをついたり、外のスライダーを使ったりしても、詰まりながらも引っ張ったりってのが多かったので」と言います。
そこで「矢野さんに聞いたら、チェンジアップが120キロから遅いボールで110キロ台、真っすぐが140キロ台、その間のボールがないと言う話です。130キロ台の何かを身につけると、また違った投球ができるんじゃないかと。そのへんのボールの習得を考えた方がいいんじゃないかと矢野さんに言われました」とのこと。
あえて“腕を振らない”勇気
空振りをさせた120キロ半ばの、いいスライダーもありましたね。「スライダーはスライダーでいいんですけど、スライダーか真っすぐかに張られてしまう。左バッターの場合、みんな“真っすぐタイミング”で対応している感じだったので。真っすぐを打ちにいった中で、ちょっと崩れるくらいのボールがあったら」
130キロ台で左バッターに投げるボール、青柳投手自身としては何を?「球種で言うとシンカーとか、そういう名前になるんですけど。矢野さんも新しい球種を覚えるとかでなく、ツーシームをちょっと抜いてみたりとか、今コントロールできているボールに緩急を、と。これまでは“腕を振れ、腕を振れ”だったんですけど、腕を振らない勇気というか、勘単にポンとカウントを取れるようなボールを投げた方がいいのでは?と言われました」
2月のキャンプでも取り組んでいたツーシームがありますよね?と尋ねたら「きょうは投げていないですけど、練習しています。でもあまり精度がよくないので、やっぱりコントロールできるボールを、腕を振らない感じで投げてみたらどうかという話でした」と青柳投手。試行錯誤する中で、必ず道は開けるはずです。
思惑通りに転がり込んだヒーロー
試合後のヒーロースピーチで、今回もまたしっかり笑いと拍手をもらった森越祐人選手。監督が調子はいいと話していましたよ。「はい、いいと思います。ヒーロースピーチを、もう3回か4回やっているので」。確かに!ここってとこで打っているわけですね。この日は4回の攻撃を振り返り、四球を選んで糸井選手が満塁ホームランを打ったら持っていかれるから、自分で打とうと思ったそうです。そうしたら本当にホームランだった、打っておいてよかった、というような内容でした。
それについて「きょうはまあ、うしろが糸井さんだったので絶対に(自分と)勝負してくるなと。1アウト二、三塁だったから僕で勝負して、糸井さんを歩かせてもいいくらいの状況だったから、ゾーンで勝負してくるなと思いました。外野フライでもいいやくらいのコンパクトなスイングを心がけて」とのこと。いい感じで?「いい感じで」。抜けていって?「はい(笑)。今、ボールが見えているので」。止まっている?「そこまでは(笑)。もちろん、アウトになっているのが多いですよ」
そのあと「1打席、1打席ムダにしないよう心掛けています。よくなるのは時間がかかるけど、ダメになるのは一瞬だと思うので。それと最近は2番を打たせてもらっている状況もあるから、どんなサインが出ても対応できるように準備をして、サインが出たら思いきり打っていく」と続けた森越選手。
ちなみにスピーチは用意していた?「8回くらいから考えていました。このままいったら多分、俺やなと」。その読みもさすがです。そのスピーチの最後は「あす(21日)、森越家が見に来る」と締めていたんですよね。お父さん、お母さん、おばあちゃん、そして親戚の方々だとか。愛知県から出たことがなかった森越選手が阪神に入って、お父さんも鳴尾浜へ来られたことがありました。きょうも活躍してマイクを持ってください!
帰りかけた森越選手が、マイクという言葉で思い出したのか「そうそう、マイクも“ウル虎”仕様だった!三角形の、こういうの(上の写真参照)がついて。それもスピーチで触れようかと思ったんですけど、やめました」と。球団の皆さんも嬉しいでしょうね、気づいてもらって。このムードメーカーさんを、ここに置いておくのはもったいないと思いませんか?
<掲載写真は筆者撮影>