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シャビとイニエスタ。スペイン史上最高の選手はどちらなのか。

森田泰史スポーツライター
シャビとイニエスタ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

アンドレス・イニエスタが、Jリーグで輝きを放っている。

イニエスタは昨季限りでのバルセロナ退団を決断。ヴィッセル神戸を新天地に選び、世界を驚かせた。日本で期待と興奮が高まる中、彼はジュビロ磐田戦、サンフレッチェ広島戦と2試合連続で得点をマークして、すでに違いを見せつけている。

一方、スペインではロシア・ワールドカップを前にして、ある議論が勃発していた。イニエスタとシャビ・エルナンデス、どちらがスペイン史上最高の選手か、というテーマだ。

■黄金時代

イニエスタがヴィッセル加入を決めたのに対して、シャビは2015年夏にバルセロナを離れてアル・サッドでのプレーを選択した。タイトル獲得数で比較すると、イニエスタが35個(バルセロナ32個/スペイン代表3個)で、シャビが28個(バルセロナ25個/スペイン代表3個)である。

彼らはいずれもバルセロナのカンテラーノだ。バルセロナの育成寮ラ・マシアで育ち、トップチームに定着してからは、ジョゼップ・グアルディオラ監督の薫陶を受けている。2008年から2012年まで欧州を席巻したペップ・チームで中枢を担った。

イニエスタは歴史を変える瞬間に現れる選手だった。2008-09シーズンのチャンピオンズリーグ準決勝第2戦チェルシー戦、2010年の南アフリカ・ワールドカップ決勝オランダ戦で貴重なゴールを決めている。「イニエスタッソ」と呼ばれるゴールはスペインでベイビーブームを引き起こし、翌年の出生率が上昇したとさえ言われている。W杯優勝でスペイン中をひとつにする立役者となった。

その一方で、ピッチ外では“シャビ節”を全開にして宿敵レアル・マドリーを何度となくこき下ろしてきたシャビだが、ピッチ内では黒子役の印象が強かった。このあたりが、彼が個人タイトルに恵まれなかった所以だろう。無知なジャーナリストや評論家では、彼を正当に評価することはできない。淡々とパスを繰り出して、チームの攻撃に方向性を与える。バルセロナとスペイン代表の中心には常にシャビがいたのだ。

■相違性

シャビは以前、スペイン紙『アス』に宛てたコラムで「僕とイニエスタは異なるプレーヤーだ。僕はポジショナルな選手だった。4番の位置だ。ペップやブスケッツのポジションだよ。イニエスタは4番、6番、8番だけではなく、ウィングでもプレーできる」と違いを説明していた。

キャリアの序盤においてシャビは文字通り、4番としてプレーした。セルヒオ・ブスケッツの出現で、彼はほどなく右インサイドハーフへと移った。そして、推進力を備えるイニエスタが左のインサイドハーフに陣取り、中盤でトライアングルを形成。加えて、前線にリオネル・メッシという類稀な決定力を備える選手がいることで、幸福な補完関係が生まれた。

シャビは「羅針盤」の役割を果たす。プレービジョン、インテリジェント、パスの正確性、スクリーンとターンの技術。どの監督にとっても、彼は頭脳だった。ポゼッションを主体とするチームで、そのオーケストラを指揮するのはシャビ以外に考えられない。

イニエスタは非物質的な、実体のない選手だ。ボールを奪いに行った相手にとっては、まるで鏡を見ているようにイニエスタの残像だけが残る感覚だろう。畏怖すべき、神聖不可侵の選手。それがイニエスタだ。

シャビの言葉を借りれば、彼は静的な選手で、イニエスタは動的な選手だと言えるかもしれない。

継続性という意味では、シャビが上。決定的な瞬間に立ち会うという意味では、イニエスタが優る。意見は尽きない。不毛な議論だとは、分かっている。それでも語らせてしまう何かが、彼らにあるのは確かだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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