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2019年ドラフトの注目株【4】――今後のトレンドに!? 高卒3年目の内野手・糸野雄星(JR東日本)

横尾弘一野球ジャーナリスト
都市対抗でスタメン出場した糸野雄星。体力と伸びしろがある高卒3年目が注目される。

 ズバ抜けたストレートを投げ込む佐々木朗希(大船渡高)、全国レベルで完成度の高さを見せつけた奥川恭伸(星稜高)という高校生投手の目玉を中心に、今年のドラフト戦線も仕上げの時期に入っている。社会人では宮川 哲(東芝)、河野竜生(JFE西日本)、太田 龍(JR東日本)と先発型の投手が高い評価を受けているようだが、例年に比べて盛り上がりに欠けると感じられるのはなぜだろう。

 あるベテランのスカウトは、ドラフトのトレンドに変化が出てきていると分析する。

「かつて高校生は育成、社会人は即戦力、大学生はその中間くらいに考えられていました。けれど、最近は年齢やキャリアに関わらず、プロ野球という世界に順応するまでに時間を必要とする選手が増えた。高校生でも3年もすれば一軍でプレーできるようになった一方で、社会人だからと言って即戦力、レギュラーになるとは限らない。その傾向が少しずつドラフト指名にも反映されてきたと感じています。

 昨年、社会人投手では岡野祐一郎(東芝)、野手なら笹川晃平(東京ガス)の指名がなかった。彼らの実力や将来性がどうかということではなく、いよいよドラフトの考え方が変わるんだな、と感じたスカウトは多かったと思います」

社会人では高卒3年目の指名が増えていく!?

 ドラフトの歴史におけるプロと社会人の関係には、いくつかの不文律がある。社会人は基本的に現役引退後の仕事も担保されているから、プロ入りすることにはリスクが伴うと考える。そこで、プロ側はそれなりの条件を整えなければならない。ある会社(チーム)は「うちの主力に見合った順位」を求め、別の会社は「彼の将来を考慮した契約金額」を望む。現在の1位を除けばウエーバー式のドラフトでは、「あの選手は必ず何位で、契約金は幾らで」と縛られた選手を指名しようとすると、どうしても全体のバランスが崩れてしまうケースが増えているようで、「本人が納得すれば何位でも幾らでも」と歩み寄る会社(チーム)の選手を指名することになるという。

 また、社会人の企業チームに所属する選手を、育成ドラフトで指名することはできない。以前、こんなケースがあった。高校から入社した選手がなかなか出場機会を得られず、その社会人チームでは戦力外になった。それは勿体ないとプロ球団が獲得しようとしたが、育成ドラフトで指名できないゆえに断念したのだ。

 社会人野球という文化は、基本的に選手を社員として雇用している分、転職扱いとなるプロ入りにも制約が生まれるのは仕方がない。ならば、無理して社会人を獲得するよりも、高校生や大学生をじっくり育てよう。70人枠にゆとりを持たせたいから育成で獲得できる選手高校生か大学生、あるいは独立リーグの選手に――プロ側がその方向にシフトしていくのも必然か。

 そうしたプロ側の考え方もあって、今年はドラフト候補に次々と景気よく社会人選手の名前が出てこないのかもしれない。そして、この傾向を踏まえ、どんな選手に注目すればいいか前出のスカウトに尋ねた。即答で挙がったのは、JR東日本の糸野雄星だ。

 明秀学園日立高では、右方向にも強い打球を放つバッティング、内野ならどこでもこなせる守備力で注目され、細川成也(現・横浜DeNA)とともにプロ志望届を提出したものの、指名されずにJR東日本へ入社した逸材である。

「まだレギュラーにはなっていませんが、今年の都市対抗ではセカンドでスタメン出場するなど、体力も含めて順調に成長している。それでも、まだ伸びしろがあるのも魅力。社会人出身ならプロの練習にもついていけるし、22歳のシーズンから鍛えれば期待できますよね。これからの社会人では、特に野手は高卒3年目が狙い目になるんじゃないでしょうか」

 なるほど。外野手では、同じ高卒3年目の佐藤直樹(JR西日本)を推す声が多い。糸野もプロの扉を開けるか注目してみよう。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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