データが示すメジャーで最も無双な球は大谷のフォークボール
5月20日(日本時間21日)のタンパベイ・レイズ戦で今季4勝目を上げたエンゼルスの大谷翔平。
メジャー移籍後、最長となる7回2/3を投げ、今季自己最多の110球を投げて勝ち取った白星だった。
スタットキャストの専門家でもあるMLB公式サイトのデビッド・アドラー記者は、大谷が7回に許した1本のヒットに注目した。
ウィルソン・ラモスはライナー性の打球を三塁方向に飛ばし、ザック・コザート三塁手がジャンプしながら伸ばしたグローブの少し上を超えたレフト前ヒットになった。これはこの試合で大谷が許した6本の安打の中の1つだが、なぜアドラー記者は3回に打たれたソロ本塁打でも、途中降板した8回に許した2本の安打でもなく、試合の勝敗にはあまり関係のない7回の安打に注目したのだろうか?
実はラモスが打ったのは大谷のスプリッター(フォークボール)であり、メジャーの打者として初めて大谷のスプリッターを攻略したからだ。
ラモスが大谷のスプリッターをヒットにすると、アドラー記者は「大谷翔平のスプリッターの被打率が上がった……0割2分3厘にね」とツイート。
この試合が始まる前までは36打数連続で凡退(24奪三振)に抑えていたが、この試合後には44打数1安打、30奪三振となった。
「まるでテーブルから落ちるような感じ」と形容される大谷のスプリッターは、メジャーの打者を完全に手玉に取ってきた『大リーグボール』だったが、その魔球が打たれた瞬間だった。
とは言え、ラモスは大谷のスプリッターをバットの芯で捉えた訳ではなく、大谷のスプリッターが依然として無双な魔球であることには変わりない。
13日の試合で大谷と対戦したツインズのブライアン・ドージャーは、「大谷のスプリットフィンガーの何がすごいかと言うと、2球として同じ変化がないことだ。左方向へ落ちたり、右へ急降下したりするけど、いつもストライクゾーンを通り過ぎるんだ」と説明する。
アドラー記者は試合後に大谷のスプリッターに関してもう1つツイートしているが、それは大谷のスプリッターの空振り率は驚異の60.3%(78スイング中47度の空振り)だと指摘したもの。
投球軌道測定器の『PITCHF/X』がメジャーの全本拠地球場に設置された2007年以降、大谷のスプリッターは過去最高の空振り率を誇っている。
大谷のスプリッターはメジャーの打者でも捉えることのできない魔球だが、大谷はスプリッター以外にも100マイル超えの直球や鋭く変化するスライダーなどの武器も持っており、全投球の空振り率35.03%は今季の先発投手の中で5位にランクインしている。
2018年メジャー先発投手の空振り率(5月20日時点)
1位:マックス・シャーザー(ナショナルズ)36.73%
2位:ロビー・レイ(ダイヤモンドバックス)35.58%
3位:ゲリット・コール(アストロズ)35.21%
4位:パトリック・コービン(ダイヤモンドバックス)35.08%
5位:大谷翔平(エンゼルス)35.03%
1位のシャーザー、2位のレイ、4位のコービンは指名打者制のないナショナル・リーグでプレーしているので、投手が打席に立ったときに空振りを奪いやすい。空振り率が35%を超えているのはメジャー全体でもこの5投手だけ、指名打者制を敷いているアメリカン・リーグではコールと大谷だけと言う事実からも、大谷の凄さが伝わってくる。