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イスラエルとヒズボラ、そしてイラン

高橋和夫国際政治学者/先端技術安全保障研究所会長

レバノン南部を拠点とするシーア派組織ヒズボラとイスラエル軍の戦闘が激化している。本格的な軍事衝突への拡大が懸念される。このヒズボラとは何か。ヒズボラとはアラビア語で「神の党」を意味している。1980年代にイランの革命防衛隊の支援を受けて結成された組織である。ヒズボラは、レバノン南部から中部の主都ベイルート南部に広がる地域に生活するシーア派住民を支持基盤としている。

レバノンの住民は民族的にはアラブ人だが、この国には、多数の宗教と宗派が存在している。イスラム教のスンニー派とシーア派は、もちろんのことキリスト教の各派など10を超える宗派がある。「生きた宗教の博物館」と呼ばれるほどだ。これは山岳地形ゆえに、迫害されたマイノリティーが避難場所にしてきた歴史の遺産でもある。イスラム教のシーア派は、その中で最大のグループである。レバノンの人口の3分の1程度がシーア派だと推測されている。

そのシーア派の組織ヒズボラの軍事力は、レバノン国軍を上回っている。ヒズボラは、同時に政治部門を持っており、議会に代表を送る政治組織でもある。またシーア派住民に医療や教育などを提供する福祉・慈善団体でもある。

その軍事力はシーア派の地域大国イランの支援を受けて育ってきた。現在は精強な陸上部隊と強力なミサイル部隊で恐れられている。陸上部隊の規模は公表されていない。しかし、専門家たちは7万人程度と推測している。そして、その保有するミサイルの総数は15万発にも達すると推定されている。しかも、その多くは長距離ミサイルであり隣国イスラエル全土を射程に収めている。その上、そのミサイルの多くには精密誘導装置が装備されており正確に目標に到達する。

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国際政治学者/先端技術安全保障研究所会長

国際情勢をわかる言葉で、まず自分自身に語りたいと思っています。北九州で生まれ育ち、大阪とニューヨークで勉強し、クウェートでの滞在経験もあります。アメリカで中東を研究した日本人という三つの視点を大切にしています。映像メディアに深い不信感を抱きながらも、放送大学ではテレビで講義をするという矛盾した存在です。及ばないながらも努力を続け、その過程を読者の皆様と共有できればと希求しています。

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