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イランのライシ大統領の死

高橋和夫国際政治学者/先端技術安全保障研究所会長

イラン大統領の死は、大きな事件である。しかし、その影響は限定的である。というのは3つの理由からだ。第一にイランの権力構造の中では、大きな政策の最終的な決定権は最高指導者のアリ・ハメネイ師に属しているからだ。第二に特に外交や安全保障の分野では、最高指導者が大きな影響力を行使するからだ。軍、革命防衛隊、治安機関なでは、最高指導者に直属している。第三に、しかもライシ大統領は、1979年のイラン革命政権の成立後、もっとも低い支持率で当選した大統領だからだ。それでなくとも制度的に弱い立場にいるのに、民意の支持という正統性が欠如していれば、その発言力はさらに弱まる。

と見てくると、この大統領が舞台を去ったからといって新しいドラマが始まるとは、とても推測できない。短期的にはイランの内政と外交に大きな変化は予想しずらい。もちろんイランの大統領の死は、それなりの大事件ではあるが、それほどの影響はないだろう。

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イラン革命、イラン・イラク戦争、湾岸危機・戦争、アメリカ同時多発テロ、アフガン戦争、パレスチナ問題、イラク戦争、アラブの春と続発する事件に関して30年以上にわたり発言を続けてきました。またオフレコでメディア、官庁、政党、企業などに対し、そして名前を公表できない人々を含め日本の指導層のために助言とブリーフィングを行ってきました。高橋和夫の情報への感性に共鳴する方々のために分析を提供します。

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国際政治学者/先端技術安全保障研究所会長

国際情勢をわかる言葉で、まず自分自身に語りたいと思っています。北九州で生まれ育ち、大阪とニューヨークで勉強し、クウェートでの滞在経験もあります。アメリカで中東を研究した日本人という三つの視点を大切にしています。映像メディアに深い不信感を抱きながらも、放送大学ではテレビで講義をするという矛盾した存在です。及ばないながらも努力を続け、その過程を読者の皆様と共有できればと希求しています。

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